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環境学習への取り組み

環境学習への取り組み

環境学習を主なテーマとする授業

“環境”問題が注目されています。共立女子大学・共立女子短期大学では、市民・生活者の視点に立ち、環境問題や持続可能な社会づくりと関連した多彩な授業が開講されています。環境政策、環境学習、持続可能な社会づくりなどを主なテーマとした科目・授業は次のとおりです。

上記以外にも、授業の一部に環境問題や持続可能な社会づくりを盛り込んだ、自然科学系、人文社会、実学・スキル系の科目が多数開講されています。

取り組みトピックス―環境学習に力を入れる教員の紹介―

Vol.1:国際学部 教授
細野豊樹

細野先生の経歴を教えてください。

 30歳台前半まで環境庁(現在の環境省)に在籍し、大気汚染、国際協力などを担当しました。その後研究者に転身し、東京大学の助手を経て、本学に採用され今日に至っています。

 親の仕事の関係で幼稚園はブラジル、中学・高校の大部分はボリヴィアのインターナショナル・スクールでした。同じ海外勤務でも先進国で暮らせた人を羨ましく思ったこともありましたが、環境国際協力の実務や環境研究においては、南米での生活体験が役に立ちました。私の世代で1960年代、70年代の開発途上国に住んだことのある研究者は極めて少ないと思います。

環境学習について、どのようにお考えですか。

 環境保護はG20サミットでも議題となる地球的な課題の一つです。世界の国々の市民、企業・団体、政府などが協力して取り組む必要があります。大学も研究や教育を通じてその一翼を担います。

 本学においては、概ね環境問題に特化した科目だけで10前後あり、多くの学生が受講しています。また、これに加えて1学期15回の授業の一部を、環境問題や持続可能な社会づくりに充てている科目が数多く開講されています。国際協力、建築、児童教育、消費経済、ファッション、英語教育など多岐にわたります。環境問題の解決に向けた取り組みにおいては、一握りの専門家が頑張るだけでは限界があります。多様な科目が様々な視点で環境問題や持続可能な社会づくりを取り上げるすそ野の広さが、環境学習では重要です。

 民主主義の政治においては、世論が政策を左右します。環境保護においては、こうした傾向が特に強くみられます。このため市民一人ひとりが、賢明な判断を下すために必要な幅広い教養を身に付けることが求められます。SNSなどを通じて様々な情報が飛び交う現代社会においては、思い込みや中途半端な理解に基づいた行動に走らないための環境リテラシーの重要性が増しています。また、環境問題についての正しい理解を、具体的な取り組みに結び付ける行動力と主体性も不可欠です。

 一昔前と比べて、環境保護や持続可能な社会づくりをめぐる認識は大きく変わりました。経済成長と環境保護は、相互に補強し合うものであり両立するのだということは、30年以上前から言われてきました。しかし、それが開発途上国や企業の行動倫理に広く浸透するまで時間がかかりました。今日においては、国際連合のSDGs(持続可能な開発目標)にみられるように、環境問題は貧困対策、ジェンダー、まちづくり、平和構築などを含む、持続可能な開発に向けた包括的な取り組みの中に位置付けられ、広く支持されるようになりました。企業においてもCSR(企業の社会的責任)といった形で、今や一流企業の条件として定着しつつあります。大学においても、こうした流れを踏まえたESD(持続可能な開発のための教育)を一層進めていく必要があります。

担当されている環境関連科目には、どのような特色がありますか。

 私が現在担当している環境関連の講義科目は、「地球環境論」「国際環境協力論」「アメリカの政治経済」および「環境・科学の諸課題」です。また、私が指導する卒業研究において、多数の学生が環境保護や持続可能な社会づくりに関係するテーマを選んでいます。

 「地球環境論」および「国際環境協力論」は、主に地球的な環境問題、特に地球温暖化に焦点を当てています。世界的に異常気象が頻発するなか、地球温暖化は身近に感じられる脅威です。こうしたなか、「地球環境論」は近年、国際学部において最も受講者数が多い科目の一つになっています。この科目では、まず地球温暖化の科学について、国際連合の下に参集した「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の科学者たちの報告などを引きながら学びます。次いでこうした科学者たちの見解を踏まえた国際的な対策の推進と抵抗をめぐる政治を取り上げるとともに、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー、省エネルギーについて考察します。「国際環境協力論」では「地球環境論」において学んだことを踏まえて、資源・エネルギー問題の諸相、経済と環境などについて、社会科学の理論と関連付けて学びを深めます。「アメリカの政治経済」においては、主にアメリカの自然保護をめぐる市民運動の歴史について、政治過程、社会的背景、地域の経済的利害などと絡めて考察します。「環境・科学の諸課題」では、日本の環境政策の枠組み、公害問題の現状と対策および国際比較、住んでいる地域のまちづくりと環境などを扱っています。

最近はどのような研究活動を行っていますか。

 最近の論文や論考は、アメリカの政治関連が多いです。最近のトランプ政権の例からも分かるように、アメリカ国内の政治の動向が日本を含めた世界の国々に波及します。気候の安定化に向けた国際協力も同じです。2020年のアメリカ大統領選においてトランプ大統領が再選されるか否かが、世界の政治経済を左右するので、トランプ大統領をめぐる世論や投票傾向の研究を進めています。

環境保護を扱った切手を多数集めているそうですね。

 切手の意匠には、発行国の政府の方針や政治文化が凝縮されています。環境保護との関連では、環境をめぐる開発途上国の意識の変化が、記念切手によく表れています。1972年の国連人間環境会議に前後して、開催国のスウェーデンを含めて環境関連の記念切手を発行していますが、その多くが先進国でした。この会議において中国やブラジルは、環境保護は経済成長の足かせになるという認識でした。その後、両国で公害が深刻になり、また国際連合において持続可能な開発への理解が広まるなか政策を転換し、環境保護をモチーフにした記念切手を発行するに至りました。最近では、大小さまざまな開発途上国による環境関連の切手が、いろいろみられるようになりました。

図1 環境保護をモチーフにした中国(左)およびブラジル(右)の記念切手

図2 様々な開発途上国の環境関連記念切手

最後に環境学習に関心を持つ若い人たちへのメッセージをお願いします。

 一人ひとりの取り組みの積み重ねが、社会を良い方向に変革する力となります。省エネルギーやリサイクルへの協力といった地道な努力が、チリも積もれば山となるだけではありません。個人の取り組みが世界的な運動につながっていくこともあるのです。スウェーデンの16歳の少女が、SNSを通じて気候変動対策を政府に求める学校での抗議運動を広めて、2018年5月に米『タイム』誌のカバー・ストーリーになりました。私の担当する授業でも、これまで4人の学生が新聞に投書して採用されています。あなたも身近な取り組みを通じて、世界を少しずつ良い方向に変えていくことができるはずです。

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