共立女子大学・共立女子短期大学

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文芸学部

Faculty of Arts & Letters

学部長より

 以前、興味深い出来事がありました。多くの人々の感動を誘い、メディアでも大きく取り上げられていたある作曲家の音楽が、他の作曲家による代作であったという出来事です。これについては非難や弁護、メディアの責任追及など、さまざまな声が聞かれます。「裏切られた」という声も多いようです。そうした反応は十分に理解できますが、しかし私は少し違う見方をしています。
 問題の作曲家の作品がどのようなものであれ、それに感動した人々がいたという事実は疑いえません。そこにメディアが作り上げた物語が含まれているとしても、です。つまり、作品の良し悪しや作者が誰であるかにかかわらず、音楽はすべて、人を感動させる力を秘めているのです。芸術の他のジャンルや文学についても同様です。ここに文学や芸術の不思議があります。そしてそこに危うさがあることも明らかです。今回に関しては、メディアの果たした役割に注目すべきでしょう。
 このような文学や芸術の力とその源の解明、メディアを含むその受容や伝播の有様の解明、その危うさの認識、そしてこれらを通じて客観的、批判的に物事をとらえる力を養うこと。これらは文芸学部の教育が目指すものにほかなりません。この出来事はまさに、文芸学部が取り組む教育において、まことに有益な数々の教訓を含むものと言わねばなりません。

文芸学部 学部長
池上 公平