文芸学部学生の卒業論文・卒業制作(学長賞)
優秀な論文と作品を表彰する「学長賞」。文芸学部 文芸学科からは冨澤 二葉さんが選出されました。
2025年度受賞論文
中学国語教科書の万葉歌に関する研究
文芸学部 文芸学科 日本語・日本文学専修
冨澤 二葉さん
冨澤 二葉さんのコメント
この度は学長賞をいただき、誠にありがとうございます。入学当初は「上代文学」という言葉すら知らなかった私ですが、先生方のご指導でその魅力に惹かれ、研究に没頭することができました。
卒業論文では、塾講師のアルバイト経験を通して「なぜ中学生は万葉集に興味を持てないのか」という疑問を抱き、明治から令和に至る中学教科書を網羅的に調査しました。各地の図書館を巡り、膨大な情報を表にまとめる作業は苦労の連続でしたが、その過程で定説を覆す新事実を発見できたことは大きな喜びです。
論文要旨
明治23年(1890)以降の中学校教科書に掲載される万葉歌を、採択される歌の変遷、解釈の変遷として捉え、その理由を明治期の国民国家思想、これと強く結びついたアララギ派の歌論、また戦後の「社会生活における道具としてのことばを身につけさせる」という実践的教育へと方針転換した昭和24年(1950)の指導要領改訂に見出した論考。
指導教員
遠藤 耕太郎 教授
推薦理由
国家が意図的に作歌したと考えられる万葉集の歌が、近代の国語教科書に収録される際にどのような意図があったかを、膨大な資料を周到に援用しながら論じた浩瀚な論文。「なぜこの歌が教科書に載ったのか」と問いかけ、万葉集の成立、それぞれの歌の解釈という古典的な論文のテーマに留まらず、近代国家による国民の創生から、戦前戦後の学習指導要領の内容、近代の万葉歌観や解説文の解釈との関わりから、それぞれの歌を論じるという発想に独創性が感じられる。
また、膨大な時間を要する綿密な作業によって作成した「国語教科書に採択された万葉歌リスト」は、資料としての価値が非常に高い。明治期からの教科書調査をするにあたって、国立国会図書館、教科書図書館(公益財団法人教科書研究センター)教育図書館(国立教育政策研究所)、東書文庫(東京書籍株式会社付設教科書図書館)をめぐって人一倍の労力を費やしている。
本論は分野では日本上代文学研究に分類されるが、むしろ現代に繋がる社会構造を照らし出し、教育制度を本質的に問い直す可能性を持つところも評価される点である。
(2026年3月掲載)







