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学長メッセージ

学位記授与式式辞(平成27年度)

学位記授与式式辞(平成27年度)

 平成27年度学位記授与式にあたり、お祝いの言葉を申し述べます。卒業生・修了生の皆さん、おめでとうございます。皆さんの多くは、長かった学校生活にひとまず終止符を打って、これから社会に出て行かれようとしています。学校生活にもそれなりに辛いことや苦しいことがあったに違いありませんが、社会に出られれば、学校生活がいかに自由で楽しかったかを痛感なさることでしょう。

 皆さんもよくご存じの高村光太郎の詩に「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」とあるように、皆さんの後ろに道はあるものの、皆さんの前に道はありません。後ろの道と言っても、それは多分にすでに用意されていたものであって、皆さんが切り拓いてきたという要素は比較的薄いかもしれません。しかし、もうこれからは、皆さんの前に道はないのです。かつては卒業後の道もある程度社会が用意してくれていたという気配がなくもありませんでした。男性も女性も、どうやって生きてゆくべきかはすでに決まっていて、その道を進んでゆくしかない、という感じがなくもなかったのです。しかし今は違います。誰かがそれを用意してくれるということはありません。ない道をどうやって切り拓いてゆくか、その発端の位置に皆さんは立っています。その自覚をいま新たにしていただきたいと思います。

 ところで、今年の冬はときどき急に冷え込んだりしたものの、全体的には暖冬といえるものでした。暖かい方が寒いよりいいわけですが、それでも、特にウィンタースポーツの愛好者やその関係者でなくても、そしてそうとう寒がりの人であっても、冬はやっぱり寒い方がいい、というのが一般的な受け止め方のようです。
 宮澤賢治は「雨にも負けず」という詩のなかで、「なりたい自分」について、「雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫なからだをもち」としながら「寒さの夏はおろおろ歩き」とうたっています。冬の寒さ、夏の暑さには耐えられるが、それが逆転することには耐えられないということでしょう。宮澤賢治は農民への愛をうたったのであって、その範囲内で解釈すべきですが、これは一般論としても通用しそうです。

 地球温暖化のせいか、世界中で異常気象が伝えられています。雨季に降雨量が少なく、雨季でもないときに大雨が降り続く、ということはもはや日常化しているようです。南極の氷が溶け始めている、とも聞きます。日本人は特に四季の移り変わりに敏感で、それぞれの季節の特徴を愛してきましたから、よけいに不安にかられるのでしょう。季節の移り変わりに、人々は自然界のあるべき姿、つまりは秩序とか摂理とかの象徴を見ているのであって、前述の高村光太郎の詩も「ああ、自然よ、父よ、僕を一人立ちにさせた広大な父よ」と続くことからも分かるとおり、自然は人間にとって厳格な父のような存在であって、それが崩れてしまうことに一種の恐怖感を持っていると言っても過言ではないでしょう。なぜ夏が寒ければいけないか、なぜ南極の氷が溶けてはいけないか、と問われてうまく説明できない人であっても、夏は暑い方がいいに決まっているじゃないか、南極には氷がある方がいいに決まっているじゃないか、と憤然として答えることになります。

 それは天候の話にとどまりません、つまり、ものごとにはすべて、それらしさ、つまり、あるべき姿、というものがあり、それを外れると不安だということであって、この感覚はとても大切なことのように思います。
例えば、人間らしくとは、あるいは自分らしくとはどういうことか、という話になります。それを厳密に考えて、それを守るということがなければ、すべてが崩れていってしまいます。ここだけは譲れない、という意識がなければ、人間として、また自分として生きている意味も薄れてしまいます。
 但し、自分らしく、ということは、とりあえず自分の現在のあり方を肯定してそこに安住する、ということではありません。自分はどうありたいのか、どのようになることが自分らしいのか、という厳しい追求がそこにはなくてはなりません。宮澤賢治は「そういう者に私はなりたい」と言っているのであって、これが現在の自分だと言っているわけではありません。自己満足からはなにも生まれないことを彼はよく知っていたのです。

 自己を確立する、ということが、大学の、とりわけ本学の使命であることは言うまでもありません。皆さんは、在学中に、授業や各種の課題をこなしてゆく過程で、そしてサークル活動などの課外活動を通じて、さらには友人たちとの触れ合いを通じて、意識しないまでも、自分とはなにか、自分とはどうあるべきかを自らに問い、あるべき自分の確立のために努力してきたのです。しかし、僅か数年でそれが達成されるはずはありません。それを問い続け、その実現のために努力し続けることが、これから皆さんに課された課題であり、また、それこそが人生を生きるということなのだと考えてください。その出発点にある皆さんに、心からお祝いを申し上げる次第です。

 終りに、ご列席のご家族の方々にお祝いと御礼を申し上げて、式辞といたします。

平成28年3月15日

共立女子大学・共立女子短期大学
学長 入江和生

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