国際学部

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更新日:2025年10月24日

学生の活動

【国際学部】手仕事をめぐる旅~エストニア旅行記~⑩

学生広報委員2年生の西田倫子さんがエストニアに関する記事を執筆しました。

前の記事はこちらからご覧ください。

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 ⑩Kihnu (キヒヌ)島


【キヒヌ島とは?】

 エストニア西部に浮かぶ小さな島。昔ながらの伝統的な生活や文化が強く残っており、2003年にUNESCOの世界文化遺産に登録された。4つの村があり、現在でも主に女性は民族衣装を日常的に着て生活している。(しかし、近年では民族衣装のスカートにTシャツと合わせたりと、だんだん現代的な要素も強くなっているという)前回の記事で取り上げたムフ島と同じように、男性がニシン、イワシ、ヒラメ等の魚やアザラシ漁をしに遠洋に出ている間、島内の仕事は女性が行っており、また彼女らは幼い頃から手芸や編み物を学び、その技量が重要視されていたそうだ。キヒヌ島の民族衣装のスカート(クルト)について日本で出版されたバルト三国の手仕事を、実際に現地を旅した筆者によって紹介されている本によると、クルトは、若い女性は楽しさや幸せを表す赤をベースにしたストライプ、歳を重ねるごとに、青のラインをプラスしたより淡いトーンのクルトが好まれるそう。(赤木真弓(2014)『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事』, 誠文堂新光社, P81L6-8)とある。このことより、赤色はキヒヌ島の人々にとって、喜びを表す重要な色であることが分かる。


 2日間滞在したパルヌに別れを告げ、Munalaid(ムナライド)港からKIHNU VIRVE (キヒヌ・ヴィルヴェ)号という船に乗ってキヒヌ島に到着した。


【KIHNU VIRVE 号とは?】

 キヒヌ島出身のガイドのリーナさんによると、2022年に逝去された、キフヌ島で最も有名だといわれている女性の名前である。彼女の魅力的な歌でキフヌ島の知名度が上がったことが、島の人々の彼女の良い評価に繋がり、エストニアの大統領も彼女を訪問し、船の名前にも採用されたという。彼女には誰も逆らえない程の強い意志があり、80歳でパラシュートに乗ったこともあるそうだ。


・Kihnu Muuseum(キヒヌ博物館)

【キヒヌ博物館とは?】

 18世紀後半に子どもたちが通っていた教会学校を、2009年に改修して作られた博物館で、教会学校や男性の遠洋道具や、この島出身の作家、民族衣装や、この島で過去に行われた伝統的な結婚式の様子などが展示されている。


 展示品を回りながら、リーナさんから様々な説明していただいた。一部を紹介すると、結婚式の時は女性は過去から目を背け、これから新しい生活を始める為顔を布で隠すこと、男性がニシンやイワシ漁に使っていた網は「Kakuami」(カクアミ)と言い、これは日本で彼らと同じくニシンやサケ漁に使われていた「角網(かくあみ)」から来ているそうだ。



4おわりに

 13歳の頃から、日本で本や画面でしか見られなかったエストニアの民俗文化や手仕事を実際に現地で見て体験もできたことで、たくさんの発見や感動を得ることが出来た。また、エストニアに民族衣装の種類が豊富に存在する謎について、博物館や現地の方の説明により理解を深めることが出来たのは、自分にとって極めて大きく影響を与えたように感じられる出来事であった。現地に実際に足を運んだことで、民族衣装を初めとする、近代以前のエストニアの農民の生活や文化についての興味が更に深まったので、これからも探求し続けていきたい。


参考文献

・渋谷智子(2018)『おとぎの国をめぐる旅 バルト三国へ』,イカロス出版

・赤木真弓(2014)『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事, 誠文堂新光社

・アンドレス・カセカンプ(小森宏美、重松尚 訳)(2014)『世界歴史叢書 

・バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』,明石書店

・小泉保(1991)『ウラル語のはなし』, 大学書林

・小森宏美(編著)(2012)『エストニアを知るための59章』, 明石書店

・荒田起久子(2023)『エストニアのかわいい刺しゅうと民族衣装のはなし』, 産業編集センター

・志摩園子(2004)『物語 バルト三国の歴史 エストニア・ラトヴィア・リトアニア』, 中公新書

・地球の歩き方編集室(著作編集)(2025)『地球の歩き方 バルトの国々 エストニア ラトヴィア リトアニア 2025〜2026年版』, 株式会社地球の歩き方

・Sanna(2019)『バルト三国 愛しきエストニア、ラトビア、リトアニアへ』,書肆侃侃房

・雑誌 『TRANSIT 発第47号 特集:永久保存版 バルトの光を探して エストニア/ラトビア/リトアニア』,euporia FACTORY,2020年

・DVD 国立民族学博物館、庄司博史(2015)『みんぱく 映像民族誌 第16集 エストニアの伝統文化』国立民族学博物館

・Reet Piiri(Karin Kestehein,ed.)RAHVARÕIVAS ON NORM,Tartu,Estonia,2022.

・パンフレット『SETOMAA』,Setomaa Turism MTÜ (Transition:Justin Petrone)

上記パンフレットが掲載されている、セト地方の観光者向け公式サイト(https://visitsetomaa.ee/en/setomaa-imago-brochure)2025年8月28日閲覧

・Visi estonia, Ruint of  the Vilijandi Order Castle (https://visitestonia.com/en/ruins-of-the-viljandi-order-castle

(2025年9月2日 閲覧)

・Visit Vilijamdi ,Vilijamdi Castel Park(https://visitviljandi.ee/en/places/viljandi-castle-park/ 2025年9月2日閲覧 )

・EESTI RAHVA MUUSEUM history( https://www.erm.ee/en/content/history 2025年9月2日閲覧)

・Visit Pärnu( https://visitparnu.com/kas-teadsid-parnu-on-eesti-vabariigi-sunnilinn/  )2025年8月31日閲覧)

・外務省公式ホームページ 「エストニア」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/estonia/index.html )  2025年9月4日閲覧