Faculty of International Studies
更新日:2025年07月02日
学生の活動
【国際学部】学生広報委員による新任教員(アンドリュー・バーンズ先生)へのインタビュー(日本語ver.)
学生広報委員の4年生、工藤茉莉さんによる「学生広報委員による新任教員(アンドリュー・バーンズ先生)へのインタビュー(English ver.)」の日本語ver.です。
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学生広報委員4年の工藤茉莉です。今年度から国際学部に着任された私のゼミの先生、バーンズ先生へインタビューを行いました。英語と日本語バージョンでお届けします。
Q.1 最初に、先生の研究テーマについて教えてください。
私の研究分野は「第二言語習得論(second language acquisition)」です。特に英語を母語としない人に英語のライティングをどのように教えるかという点にあります。中でも、「文法のフィードバック(written corrective feedback)」、つまり教師が生徒の英文に対して文法的な訂正を行う指導に注目しています。そのフィードバックがどれだけ効果的か、生徒がどの程度それに向き合っているかを研究しています。
また、教師にとってそのような添削がどれほどの負担になっているかにも関心があります。将来的には、文法の訂正はAIなどの技術に任せ、人間の教師は内容に対する個別のアドバイスに専念できるようになると考えています。今後は、AIが出すフィードバックに対して生徒がどう反応するかについても研究を進めていく予定です。
Q.2 この分野に興味を持ったきっかけは何ですか?また、なぜこの研究テーマを選んだのですか?
私のバックグラウンドはコンピュータ・サイエンスで、イギリスのマンチェスター大学で学士号を取得し、その後IT分野で働いていました。英語教育に興味を持つようになったとき、自分の過去の経験と結びつけたいと考え、「CALL(コンピュータ支援語学学習)」という分野に出会いました。大学院では、この分野の専門家である指導教員のもとで学び、研究を深めました。研究の一環として英文の文法訂正を行う中で、教師にとってどれほど多くの時間と労力が必要かに気づき、その負担の大きさに関心を持ちました。また、生徒がそのフィードバックをどの程度しっかり読んで活用しているのかにも疑問を持つようになりました。現在は、より生徒が読みたくなるような「個別のフィードバック」をどうすれば効果的に提供できるかを追求しています。
Q.3 大学生活はどのように過ごしていたのですか?
マンチェスター大学では、優れた講師陣のもとで多くのことを学びました。授業は基本的に講義形式で、学生同士のディスカッションはあまりありませんでしたが、電気工学のプロジェクトなど実践的な課題にも取り組み、充実していました。
大学生活を通して特に力を入れていたのがスポーツです。私はテコンドーでスポーツ奨学金を受けており、学業と並行して真剣に競技にも取り組んでいました。最終学年ではスポーツにより重点を置くようになり、イギリスの全国大会で優勝することができました。こうした経験から、学生が勉強以外にも多くの関心や活動を抱えていることを理解し、共感できるようになったと思います。
Q.4 日本に来られる前は、どのようなことをされていましたか?
私はイギリス北東部にあるミドルズブラという町の出身です。スチールや化学産業で知られる労働者の多い町です。天気はあまり良くなくて、雨が多いのが特徴で、個人的には日本の気候のほうが好みです。天候は厳しいですが、北東部の人々はあたたかく親しみやすく、ユーモアもあって、そしてとても勤勉だと言われています。これは、地域の産業背景と関係があるかもしれません。自然も豊かで、ノースヨーク・ムーアズのようなハイキングに適した場所もあります。ただ、産業の影響で大気汚染があったため、地元の人々は「スモッギーズ(Smoggies)」というニックネームで呼ばれることもありました。
私の地元にはエンジニアリングの強い伝統もあります。たとえば、オーストラリアのシドニー・ハーバーブリッジに使われた鋼鉄はミドルズブラ製で、設計を担当したのも地元のドーマン・ロング社です。
日本に来る前は、オーストラリアのサンシャイン・コーストで2年間暮らしていました。テコンドーを教えたり、農場でパイナップルやいちごの収穫をするなど、さまざまなアルバイトを経験しました。体力的には大変でしたが、とても楽しく貴重な経験でした。
Q.5 では、なぜ日本で大学の教員になろうと思ったのですか?
私は日本に15年以上住んでおり、ここでアカデミックなキャリアを続けることは自然な選択でした。イギリスではIT業界で働いており、その中で研修担当として教育に携わる機会がありました。その経験から「教えること」に魅力を感じるようになりました。来日当初はコンピュータ関連の仕事を続けるつもりでしたが、英会話スクールや東京でのビジネス英語の指導を通じて、語学教育に強く魅力を感じるようになりました。そこで日本語を2年間学び、早稲田大学の修士課程、さらに博士課程に進学しました。
英語教育の研究では、アメリカやイギリスの大学の優秀な学生を対象にしたものが多いですが、日本では、さまざまなレベルの学習者と関わることができ、語学習得の難しさや現実に即した課題に迫る貴重な機会があると感じています。
Q.6 日本のどんなところが好きですか?
日本には好きなところがたくさんあります。礼儀や他人への配慮を大切にする点など、イギリスと似ているところも多く、とても居心地よく感じています。中でも特にありがたいと感じているのは、日本がとても安全な社会であることです。今は娘がいるので、子育てをするうえで安心して暮らせる環境は本当に大切だと実感しています。
また、電車が時間通りに来ることも日常生活を快適にしてくれているポイントです。以前はイギリスで美術館や博物館によく行っていたのですが、日本でもそういった文化施設を楽しむことができるのが嬉しいです。日本とイギリスはどちらも長い歴史を持つ国であり、異なる文化を深く知ることができるのはとても興味深いです。
Q.7 休日はどんなことをして過ごしていますか?
最近は、妻と娘と一緒に過ごす時間が自由時間のほとんどを占めています。また、最近はビデオゲームもよくプレイするようになりました。ゲームを通じて、東京の友人だけでなく、イギリスの家族や友人ともつながることができるのが魅力です。もしもっと時間があれば、以前やっていた室内ロッククライミングやキックボクシングをまた始めたいと思っています。忙しくなる前はよく通っていましたが、ここ2年ほどはなかなか時間が取れていません。
また、友人や同僚と交流する時間も大切にしています。仕事だけでなく、外に出て人と会う時間も必要だと思います。正直なところ、博士課程の修了と小さな娘の育児で最近はほとんど自由時間がなくなっていますが、今後はワークライフバランスを見直して、自分の趣味にもまた時間を割けるようにしたいです。
Q.8 研究や普段の生活で、座右の銘や信念にしている言葉はありますか?
私が大切にしているモットーは、「毎日何か新しいことを学ぶ」ということです。もともと学ぶことが好きで、今でもYouTubeなどで科学系の動画や教育的なコンテンツを見るのが日課になっています。ただ、現代は情報があふれていて、何が正しい情報で何が誤情報なのかを見極める力も求められています。そのため、SNSや動画を見る際も、できるだけ信頼できるものを選ぶように気をつけています。特に日本に来て感銘を受けたのは、高齢の方でも積極的に語学を学んだり、市民講座に通ったりして、新しいことを学び続けている姿です。その「生涯学習」の姿勢は素晴らしく、自分自身も見習いたいと思っています。
Q.9 大学生が在学中に身につけるべき重要な資質とは、どのようなものだと考えますか?
大学生にとって大切な力のひとつは、「探究心」だと思います。目の前の情報をそのまま受け取るのではなく、「なぜだろう?」「他の視点はどうだろう?」と疑問を持ち、より深く調べようとする姿勢が大切です。現代は情報が簡単に手に入りますが、その分、一方的な見方に偏りやすくなっています。たとえば、イギリスの政治では、多くの人が一つの新聞だけを読んで、自分と反対の意見に触れることがありません。そうした「エコーチェンバー」と呼ばれる現象が、社会の分断を生むこともあります。
だからこそ、学生の皆さんには、異なる意見にも耳を傾け、自分で考える力を養ってほしいです。見出しだけでなく、元の情報源にあたる習慣を持つことで、より深い理解が得られるようになると思います。
Q.10 この大学の学びの環境や学生同士の雰囲気について、どのように感じていらっしゃいますか?
この大学の学生たちはとても意欲的で、特にキャリアに対する意識の高さに感心しています。多くの学生が在学中から積極的に就職活動をしていて、自分が学生だった頃よりもずっと前向きだと感じます。授業中もお互いに協力的で、意見を出し合いながら活発にコミュニケーションをとっていて、とても良い雰囲気だと思います。大学生活では、さまざまな考えに触れ、自分の視野を広げることが大切だと思いますが、まさにそれが実践されていると感じます。
個人的にも、このキャンパスに来るのは好きです。京王線沿線に住んでいるので通いやすいですし、以前は神保町で働いていたこともあって、このエリアには親しみがあります。特に私の年代にとっては魅力的なエリアで、美味しいレストランも多く、最近は「ボンディカレー」というお店に行きましたが、とても美味しかったです。ただ、神保町はどちらかというとビジネス街なので、学生たちがこの街をどのように使っているのか、少し気になっています。授業が終わるとすぐ電車で帰ってしまうのか、それとも街を散策したりしているのか、もっと知りたいですね。早稲田大学で大学院に通っていたときは、学生向けのお店がたくさんありましたが、神保町は少し雰囲気が違っていて、それもまた面白いと感じています。
Q.11 最後にこの大学の学生にメッセージやアドバイスをお願いします。
授業では、ぜひ自分の意見を伝えることを恐れないでください。たとえ他の人と考えが違っていても、それはとても大切なことです。意見の違いこそが、学びを深めるきっかけになります。「間違っているかも」と不安に思う必要はありません。まずは自分の考えを言葉にする練習をしてみてください。先生たちは、皆さんの学びを導くためにここにいます。
特にGSEでは、自由に意見を出し合える雰囲気が大切にされています。その環境を存分に活かして、自信を持って発言していってほしいです。
インタビュー:工藤茉莉
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