

Faculty of International Studies
更新日:2026年06月30日
学生の活動
【国際学部】学生広報委員による新任教員(坂本薫先生)へのインタビュー
2026年度春、国際学部に新任教員として着任した日本語学、方言学が専門の坂本薫先生に、学生広報委員のビシャーラ アルアトキヤーさん(国際学部2年)がインタビューを行いましたので、その模様をお届けします。
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Q.先生が専門とされている研究内容について教えてください。
私が専門としているのは日本語学で、特に日本語方言に強い関心を持っています。もう少し細かく言うと、主に方言のアクセントについてです。現地に直接行って、そのアクセントを使っている方のお話を聞いてきて、それについて記述するスタイルの研究を行っています。
Q.実際に現地に行かれているとおっしゃっていましたが、研究を進める中で大変だったことやうまくいかなかったことなどはありましたか?また、どのようにして乗り越えられましたか?
大変なことは、協力者を募ることです。私は基本的にある地域の方言を聴取したいと考えた時には、まずはその自治体の教育委員会に交渉というか、お願いに行きます。「地元で生まれ育った方を紹介してください」という形で依頼に行くんですね。適任の方のお名前がすぐに出てこない場合、「では、こういう方はいらっしゃいませんか?」とか「こういうサークルとか、こういう団体はありませんか?」ということを、粘り強く、しかし相手が嫌な気持ちにはならないように交渉を進めていきます。
同時に、地域の産業に合わせた色々な団体、例えば農協(農業協同組合)や漁協(漁業協同組合)、商工会議所などを回って、地元の方を紹介してもらえないかを聞いて回ります。また、お寺や神社、教会といった所には地元の方が多く集まっていることが多いので、そういうところにアクセスをして、話をしてくださる方を紹介していただきます。
チャンネルは他にもたくさんありますので、諦めずに粘り強く進めていく、でも焦らずにやっていくというのが、大変なことでもあり、一方ではすごくやりがいがある部分でもあると思っています。
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Q.先生がこの分野に興味を持たれたきっかけや、本格的に目指そうと思われた理由はなんですか?
私は神奈川県の小田原市出身で、神奈川県って東京の隣に位置していることもあって、非常に言葉が東京と似ている部分が多いんですね。ですから、若い時の私は、自分は標準語を話しているという意識を持っていたんです。
ですが、大学生になって横浜にある大学に通っていた時、友人に「アクセントが違うよ」と指摘されたんですね。それがなんだか、とても衝撃だったんです。自分は標準的なアクセント、標準的な発音で話していると思い込んでいたのに、神奈川県の中心部である横浜、東京に近い出身の同級生から「訛ってるよ」みたいな言い方をされて。まあ、悔しいみたいな気持ちもありますし、「そうなんだ」という気づきもありました。そこからことばの世界というものに興味を持ち始めました。
あとは、もともと社会学専攻だったんですけれども、ちょっとテーマの設定とか、勉強が上手くいっていなかった部分がありまして、専攻を変えようと考えていたんです。その時、教わっていた国語学(日本語学)の先生から「あなた社会学出身なんだったら、社会と関係のある方言を勉強してみたらどうですか?」というアドバイスを受けたのも非常に大きいです。
Q.社会学と言語学というと、一見関係のある分野ではないように思うのですが共通点があるのですか?
言語一般に言えることなのかもしれませんが、私の分野は特に「地域のことば」を観察し解釈するものです。そういった意味で、言語の規則や法則だけを切り取って研究を仕上げることは難しいんです。その地域に住まう人々の生活ですとか、コミュニティ、アイデンティティといったところと非常に密接にかかわってくる分野なんですね。そうなると社会学と隣接するとまではいかないかもしれませんが、かなり接近する部分はあると思います。

Q.研究をしていて面白いと感じる瞬間ややりがいがあると思うのはどんな時ですか?
これには、二つ回答があります。一つ目は、現在起きることばの変化を捕まえることができることです。街を歩いていたり電車に乗っていたり、カフェでお茶を飲んでいる時に、色々な声が聞こえてきます。都心で働いていると、首都圏や東京23区でどのようなことばの変化が起きているのかがよく見えるんですね。気になったことはすぐにスマホでメモを取るようにしていますし、若者ことばでわからないことがあれば、学生さんに意味や使い方を教えてもらいます。
もう一つは人間関係の話です。大学院の時に指導を受けた先生から「調査に行く時、方言話者は先生で、調査者は生徒の関係から始めなさい」と教わりました。その地域にお邪魔して教えていただくわけですから、最大限のリスペクトを持って、方言話者に教えていただくという姿勢でコミュニケーションを始めるわけです。
そうしてゆくゆくは、調査者と方言話者が「共同研究者」になることが理想であることも教わりました。長い時間、何回もお邪魔をして、その間何時間もお話を聞いて、時々一緒にお昼を食べたりお酒を飲んだりすることもあります。そこでだんだん人間関係が形成されていき、調査が進んでいくと、方言話者もご自身の話されていることばに対して関心が向いていき、分析的な視点を持つことがあるんですね。
そうすると、私がうまく整理できない、解釈ができないことに関して、「こうじゃないか?」というふうに示唆を与えてくれる場合があり、「あっ!そうか。そういうことなんですね」というふうに一緒に喜び合えれば最高です。論文にはタイトルの下に自分の名前を書きますけれども、気持ちとしては共同研究者として、話者のお名前を一緒に書きたいくらいです。
Q.先ほど「今起きている言葉」について言及されていましたが、最近はSNSなどの普及で若者言葉や新しい表現が次々と出てきています。先生から見てこれからの日本語や、地域の方言はどのように変化していくと思われますか?
まず、SNS等を介した日本語のコミュニケーションについて考えていきたいと思います。つい最近までは「話し言葉」と「書き言葉」だけできていればよかったんですね。しかし、LINEのようなアプリが発展して、Eメールの時代よりもはるかに文字とデジタルデバイスを使ってコミュニケーションをするようになりました。そうすると、書き言葉と話し言葉の中間に「打ち言葉」というものが出現します。つまり、第三のコミュニケーションスタイルができてくるわけで、これは観察する側としてはとても興味深いことです。
例えば、スタンプや絵文字があります。関東出身の人間なのに、あえて関西弁を交える現象もありますし、「ミリしら」のような言葉の省略や「つらみ」「バブみ」といった辞書に載っていない表現もたくさん出てきます。そういうものって、まさにその媒体があるからこそ生まれるものだと思いますので、つねに観察して捕まえていきたいと思っています。SNSに限らず若者のことばは絶えず変化しています。アクセントについても、そろそろちょっと規模の大きい調査をしてまとめたいなと頑張っているところです。
ただ、SNSのことばの研究は今非常に難しいところもあります。LINEなどは個人間のクローズドなコミュニケーションですから、研究のデータベースとして使わせてもらうにはプライバシーの問題が大きく関わってきます。個人情報やそれに準ずる情報を消去した上で情報の使用に関してきちんと許可をもらうといった研究倫理上の問題をクリアしなければいけないというところが、大きな壁になっています。今あるメディアをどういうふうに研究に活用していくかについても、よく考えていきたいですね。
次に、方言についてです。昭和初期までは各地域で、特にカジュアルな場面において地域方言が日常的に使われていたと考えられます。しかし、関東なら震災(関東大震災)や戦災、高度経済成長期による人口の大移動など、様々な要因で人が動きました。またメディアの面ではラジオやテレビの放送が始まり、スタンダードな言葉(共通語や標準語)が一気に全国へ広がっていきました。今ではさらにYouTubeのような動画SNSが普及して状況は複雑化しています。
現在は、地域方言が当たり前に使われていたフェーズから共通語化が進行し、伝統方言が衰退するフェーズへと完全に進んでいます。もう十年、二十年もすると、伝統的ないわゆる地域方言を自由に使える人がいなくなってしまうんじゃないでしょうか。
それに対して私たち方言研究者が何をしなければならないかというと、一つは「記述と記録」です。伝統方言がわかる方にご協力をいただいて、録音でも録画でも、談話を撮れるうちに撮らせていただいて文法書や教科書を作る。あらゆる手を使って記録を残していくことが急務ですし、今ならそれをデジタル化して公開することも、地域の文化財としてことばを残すために不可欠だと思っています。
一方、私は研究の上では「方言はなくならない」というスタンスでいます。ある程度、日本のことばが均質化したとしても、このままずっと東京を中心とした言葉がなんのバリエーションなく日本全国に広まって定着する、ということは考えられないと思うんです。どうやっても所属する集団による変化や地域差、年代差というものは新しく出てきますので、そこを丁寧に観察・記述し、日本の方言について再定義、新しく解釈をするフェーズの始まりでもあると考えています。

Q.ところで、先生は大学生の頃、どのように過ごされていたか教えてください。
最初の頃は、学業はあんまり真面目な学生ではなかったと思います。大学生活の前半で一番力を入れていたのはサークル活動でした。ジャズのビッグバンドのサークルに入ってトロンボーンを吹いていたんですけれども、とにかくそれに時間と力を使っていました。両親に「あなた、音楽大学に行ってるの?」と言われるくらい音楽にのめり込んでいました。
音楽的なことも勉強になりましたが、20人くらいで活動する集団ですので、集団で何かをするだとか、役割を持って組織に貢献するだとか、そういうことについても学びました。あと、「20人も人がいると意見はまとまらないものだ」ということもすごく勉強になりました。みんなで音楽をやる以上、気持ちがまとまらないとうまく演奏ができないので、どうやって同じ方向を向くかというところについてはよく考え、学びました。
そして、だいぶ遅いんですけど、21歳の時に「国語、日本語をやろう」と決心しました。
もともと社会学専攻だったんですけれども、ちょっとどうすれば良いかわからなくなってしまいまして。今振り返ると、当時の社会学のゼミの先生は非常に授業やゼミの運営の仕方が巧みで、研究テーマの探し方や調査の方法など、今考えると色々なことを教えていただいていたなと思うんです。ただ、当時は私の力が足りていなくて、あまりピンときていなかったんですね。何にこだわりがあるか、自分で自分のことがわかっていなかったからだと思います。
ですが、途中で専攻というか、卒論のテーマを国語(日本語学)に変えたところで、急にエンジンがかかりました。ことばが好きだということにようやく気づいたんですね。
それから、ちょうど学生時代にリーマンショックがあって、就職活動が非常に大変だったんです。その時に考えたのが、「待遇よりも手に職(当時は登録日本語教師制度もなく、
Q.普段、大学での講義や研究生活で非常にお忙しい毎日を送られていると思いますが、仕事の合間や休日はどのように過ごされていますか?
趣味がやっぱり音楽なので、地域の音楽団体に所属をしています。元々は小中学生のための吹奏楽のバンドだったんですけれども、今は少子化で子供が少ないので、全年齢の人が関われる音楽団体になりました。そこで、今はちょっと他にやる人がいないので、私が指揮者をしたりしています。練習は基本的には毎週開催されているんですけれども、仕事の関係で行ったり行けなかったり、という感じです。
Q.今の学生へのアドバイスとして、大学生活の中で今のうちに身につけておいてほしいことや、経験しておくべきことがあれば教えてください。
今の学生さんは非常によく勉強するので、「勉強してください」というアドバイスは不要かなというふうに思います。私が大学生だった頃よりもずっとよく勉強していると思います。
私にアドバイスできることがあるとすれば、「順調な道ばかりが正解ではない」ということです。私は、大学入学までは割と順調に進んでいきましたけれども、そこで専攻を変えてみたり、卒業後の日本語学校も非常勤講師だったので正社員ではなかったんですね。そこから2年間働いてお金を貯めて大学院に入って修士課程を修了し、その後は高校の先生をしながら、博士課程を6年間かけて修了したという経緯があります。とてもまっすぐな道ではないんです。
もちろん、挫折なく進んでいくというのは理想ではあるかもしれないんですけれども、「あれおかしいぞ」とか「ちょっとうまくいかないな」と思って立ち止まって考えたり、周りの人に助けてもらったことが結局今の私を形成していると思うんです。ですから学生さんには、順調でストレートな道ばかりが正解ではない場合もあるよということを伝えたいかなと思います。良いお手本かはわかりませんが。
あとは、人を相手にする研究をしているということもありますし、今も授業で学生さんとたくさんコミュニケーションを取りながら授業をやっていることもありますので、「人との関係を大切にしていく」ということは伝えたいと思います。

Q.最後になりますが、共立女子大学の学生に向けて一言メッセージやアドバイスがあればお願いします。
私はまだ共立一年生なので、リーダーシップのあり方や大学の理念について、学生のみなさんと一緒に勉強している状態です。今は基礎ゼミナールを中心に「リーダーシップのあり方」について学んでいますが、非常に素晴らしい考え方だなというふうに考えています。
先ほどのサークル活動の話もそうですし、社会学のゼミでも、私はゼミ長でもなんでもない、ただのちょっと変わった学生で、当時はもちろん意識していませんでしたが、大所帯の組織の中で「どういう貢献をしていくか」を考えた経験が、実は今の共立が掲げるリーダーシップにつながっていると思います。
例えば、議論の中で発言をして意見を言ったり、グループになった時に「じゃあ私が、辞書引いてくるね」というふうにリサーチをしてきたり。ジャズのサークルの時も、演奏面だけでなく、意見の対立が起きた時に調整役をよくやっていました。あとは、こういうふうに喋るのが好きなので、みんなが思いつかないようなアイデアを出すことを好んでやっていたな、とも思います。
このように、組織への貢献には色々な形があり、「共立のリーダーシップ」にも色々な形があるということを、今まさに学生さんと一緒に勉強しています。こうした私の経験も含めて、「色々なやり方で、みんなで組織や集団を良くしていこう」ということを、これからも一緒に考えていきたいなと思っています。