国際学部

Faculty of International Studies

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更新日:2022年12月13日

授業紹介

【国際学部】岡部正義准教授担当「開発経済学Ⅱ/経済学特論」にてJICA水野敬子国際協力専門員による特別講義を行いました。

 2022年11月29日(火)、国際学部・岡部正義准教授担当「開発経済学Ⅱ/経済学特論」の一環で、独立行政法人国際協力機構(JICA)より水野敬子国際協力専門員をお迎えし、「JICAの教育協力:人的資本の向上に向けて」と題した特別講義を行いました。

 

 本科目「開発経済学Ⅱ」は、前期の「開発経済学Ⅰ」の総論的な開発経済論を受けて、アジアにおける経済発展・開発について各論的に学んでいます。水野氏は、UNIDOやJICAの専門家を長らく務められ、東京工業大学博士(学術)の学位もお持ちの専門家です。フィールドもラオス、カンボジア、ミャンマー、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ルワンダ、グアテマラ、とアジア・アフリカ・ラテンアメリカの各国で実務のご経験をお持ちでの教育開発支援のエキスパートです。授業では、このようなご自身の経歴を簡単に紹介されたうえで、世界の教育の現状―学びの危機、なぜ教育支援が必要なのか?、Human Capital Project、世界の共通課題:学習の質向上に関して理論的・国際動向的に解説いただき、その後、ご自身がJICAの援助案件で関わられてきた協力事例として、(1)ラオス初等算数学習改善プロジェクトと(2)パキスタンノンフォーマル教育支援について講じていただきました。

 

講義に臨む講師の水野敬子・JICA国際協力専門員

 

 ラオスの協力事例では、ラオスで実施されている学習到達度テストの結果(2009)を例に挙げ、小学生が最終学年時に「前期中等教育の学習の準備が出来ている」という段階に到達していた割合が国語(ラオ語)で2割弱、理科や社会科に相当する「身の回りの世界」という科目で43%ほどであったのに対し、算数が0.16%しか到達していなかったというたいへんショッキングな実情を紹介いただき、受講学生も驚きを隠せませんでした。また、現在、小学校教員は高校卒業後最低2年の教員養成課程を修了していることが求められるが、以前は小学校で教えるためには小学校以上の学歴があれば教壇にたてた時代もあり、年配の教師のなかには最低限の資格を満たしていない教員も存在するという実情も衝撃が重なりました。教員の専門性やカリキュラム、教材の内容に関する改善の余地は多くあることから、ラオス教育スポーツ省から要請を受けて2016年からJICAが支援している技術協力プロジェクトでは、初等算数学習改善に向けて、カリキュラムや教科書改訂、教師教育の強化に取り組んでいることを紹介いただきました。

 パキスタンの協力事例では、他の開発途上国の例に漏れず、貧困ゆえに学校に通うことを断念し、児童労働に従事する男児の動画を鑑賞することから導入いただき、ノンフォーマル教育が担う役割について紹介いただきました。ここでは、日中に児童生徒が集うフォーマル教育を補完する早朝学校の取り組みが紹介され、日中家族のために仕事をしなければならない児童・生徒も、この早朝学校によって学びの機会を得られていること、そこに通う児童自身が感じ取る学びの喜びについて、感銘を受ける内容を講じていただきました。

 受講生からは、「お話が非常に面白く、写真やデータを多く見せてくださりわかりやすかった」、「日本に居て当たり前のように学校に通い、大学生となっている自分は改めて幸せなことだと痛感させられた」「これらの教育支援の先にある経済発展との関係性に関心が湧いた」、等おおくの感想が寄せられました。また、JICAなどの公的な国際社会に貢献する組織・機関の仕事に関心を抱いた学生も多くいました。

 授業担当者としても、国際開発や社会経済問題は、現場・現地の実情を踏まえた学習が最も動機付けになると思っております。今回の特別講義の機会を活かして、受講学生ひとりとひとりが国際学部で国際問題についてさらに考えを深める好機となることを期待しています。

 また、水野氏がJICAで受けられたインタビュー記事をシェアくださいました。国際協力や教育支援などの社会経済開発に関心のある学生はぜひ見てみてください。

(JICAウェブのリンクに飛びます)専門家から国際協力での仕事を目指す方へのメッセージ(水野専門員) | 事業・プロジェクト - JICA