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更新日:2018年06月25日

【国際学部】リレー・エッセイ2018(9) 河内優子「韓国と私、そして『ドラマで韓国現代史を学ぶ:感動の韓国ドラマおすすめ10作品』」


韓国と私、そして「ドラマで韓国現代史を学ぶ:感動の韓国ドラマおすすめ10作品」

  河内 優子

 

 私は小学校から高校までの約10年間、山口県下関市で育ちました。高校の卒業アルバムの写真は、関釜フェリー関係者が同級生にいたことから、特別にフェリー船内で撮影した思い出があります。朝鮮戦争休戦後の冷戦時代、朴正熙政権下の韓国と日本を結ぶこの船には、「有事の際に戦車が運ばれる!」との噂話を、当時はよく耳にしたものです。また名優松田優作を輩出した町ならではの特殊地域的問題の残像も、薄れゆく生活シーンの記憶の中に、おぼろげながら残っています。


 1960年代後半以降、韓国は「漢江の奇跡」とも称される驚異的な経済成長を遂げました。しかしそれを推進した強権政治により、韓国国内には過酷な抑圧的社会状況が広がりました。1980年の光州事件は、その時代の状況を象徴する、現代韓国史上、朝鮮戦争以後最大の悲劇とされています。軍隊が民主化を求める学生や市民に発砲したのです。死者、行方不明者合わせて犠牲者は600人以上に達したともいわれています。


 下関からわずか400キロメートル(神戸までとほぼ同じ距離)の地で起きた惨劇でした。私が23歳、大学院に入りたての頃のことです。私は世界経済論ゼミで世界各国の開発独裁について議論しながら、一方では10代で歌っていた反戦フォークの世界から大きくシフトし、中島みゆき、ユーミン、オフコースなど、J-POPに興じる日々を過ごしていました。また当時、大学院で韓国出身の裕福な私費留学生がゼミに同席し、「次はアメリカ留学」と言っていたのも記憶しています。そうした彼の口から、この事件について語られることはありませんでした。


 私がこの事実を知ったのは随分と年月が経ってからでした。韓国政府により強力な報道統制が敷かれていたのです。光州事件は、私にとって「近くて遠い国」韓国を最も強く実感した出来事となりました。以来、私は韓国に対し、言いようのないわだかまりを感じるようになりました。無関心ゆえの「知らない」、「知らない」ための無理解・誤解と摩擦。「隣人」を「知らない」ということ自体、看過しがたい問題と思うようになったからです。


 とはいえ韓国は、1988年にソウルオリンピック開催、1996年には「先進国クラブ」OECD加盟を実現し、名実ともに先進国の仲間入りを果たしました。そして1997年のIMF(国際通貨基金)危機を乗り越え、抜本的構造改革を果たした2000年代、いわゆる「選択と集中」による財閥系企業の特化が、サムスン電子、ヒュンダイ自動車といった世界トップクラスのグローバル企業を生み出しました。それらは課題山積ではありますが、今も韓国経済を良くも悪くも牽引しています。


 この2000年代、日本に突然、韓国との国際文化交流の風が吹き始め始めます。2003年、NHK・BSで韓国ドラマ「冬のソナタ」、その後「チャングムの誓い」が放送され、美しい映像・音楽と、知らず知らずのうちに引きこまれるストーリー展開が中高年女性を中心に魅了していきました。第1次韓流ブームです。続く2010年代にはK-POPブームが加わり、若年層と中高年層の両極でドラマ・音楽が相乗効果を放つ新たなブームとして、今や韓国エンターテイメントは全面開花の時代を迎えています。第2次韓流ブームです。さらに近年では、コスメ、ファッション、グルメブームも加わり、第3次韓流ブームの時代とまで称されるようになっています。


 韓国では、早くは1990年代中頃から今日に至るまで、少なくとも10数話、大抵は20話以上続くハイクオリティの中・長編ドラマがかなりの頻度で制作・放送されており、2、3時間完結の映画では到底なしえない視聴者の強い感情移入(いわゆる「ハマり」現象)を可能にしています。そうした数多くの韓国ドラマが、韓流ブームにのり、日本でも次々と放送・配信され、あるいはレンタル等で気軽に視聴できるようになりました。かく言う私も、ドラマを入口として、現在、第3次の手前、第2次韓流ブーム真っただ中に「ハマり」込んでいる一人です。


 それらドラマの中でも、私が最も「ハマる」ドラマには共通した特徴があります。いずれも、それぞれの時代背景、社会的背景がクリアに描かれ、なおかつそこでの人間模様に必然性を感じつつ感動に浸れる作品です。ドラマの世界に自己投影し、情感を共有する・・・その時空を超えた共感は、強い感動とともに他の国を、他者を「知り」、理解する道に通じるのではないでしょうか。見終えた時の充実感を重ねていくうちに、なぜか「隣人」を少しずつ「知る」ことができたような気分になっているのです。


 今回は以下、韓国の現代史が背景としてクリアに描かれた、私のおすすめドラマ10作品をご紹介します。現代史に焦点を当てたのは、私たちの「隣人」の、まずは少なくとも人間一世代分の歴史を少しでも「知り」、感じ取っていただきたいからです。感動のストーリー展開と美しい映像・メロディー。すべて完成度の高い秀作ぞろいです。そのバックグラウンドに、「隣人」の国、韓国現代史の厳しい現実を学んでください。


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「ドラマで韓国現代史を学ぶ:感動の韓国ドラマおすすめ10作品」

                     ( 主要な年代 )  

                     ■キーワード   

                     *主題歌、もしくは主要な挿入歌


1.悲しき恋歌(MBC:2005年)全20話

監督・演出:ユ・チョリョン、脚本:イ・ソンウン

主演:クォン・サンウ(少年期:ユン・スンホ)、キム・ヒソン

(1970~90年代) 

■富裕層のアメリカ留学、米軍基地ナイトクラブ、戦争花嫁、貧困と裏社会、音楽産業

*ユン・ゴン「恋をするなら」

*キム・ヒソン「L-O-V-E」


2.ごめん、愛してる(KBS:2004年)全16話

演出:イ・ヒョンミン、脚本:イ・ギョンヒ

主演:ソ・ジソブ、イム・スジョン

(1990年代)

■韓国からの海外(豪州)養子縁組、肉親捜し(テレビ「尋ね人」コーナー)、母と子、臓器移植

*パク・ヒョシン「雪の華」


3.砂時計(SBS:1995年)全24話

演出:キム・ジョンハク、脚本:ソン・ジナ

主演:チェ・ミンス、コ・ヒョンジョン、パク・サンウォン

(1970~90年代)

■光州事件、民主化運動、政財界と裏組織との癒着、カジノ、(光州事件実映像韓国初公開)

*Losif Kobzon「Zhuravli(白鶴)」


4.ファッション70’S(SBS:2005年)全28話

監督:イ・ジェギュ、演出:イ・ジョンヒョ、脚本:チョン・ソンヒ

主演:イ・ヨウォン、チュ・ジンモ、キム・ミンジョン

(1950~70年代)

■朝鮮戦争、戦地慰問団、米韓軍事体制、韓国繊維産業の成長、オートクチュールから大衆既製服の時代へ

*Fly to the Sky「胸が痛くても」


5.神話(SBS:2001年)全16話

監督:チェ・ユンソク、演出:チェ・ユンソク、キム・ジョンハク

脚本:キム・ヨンヒョン

主演:キム・ジス、キム・テウ、パク・ジョンチョル

(1970~80年代)

■軍事独裁政権、大統領暗殺事件、民主化運動、電子産業ベンチャー第1世代、女性ロビイスト

*Nana Mouskouri「Over and Over」


6.ジャイアント(SBS:2010年)全60話

演出:ユ・インシク、イ・チャンミン、脚本:チャン・ヨンチョル

主演:イ・ボムス、パク・ジニ

(1970~80年代)

■軍・政・財・裏社会の癒着と権力構造、漢南開発、不動産・建設業界と政界、(イ・ミョンバク元大統領モデル説?)

*キム・ボムス「Loving You」


7.エデンの東(MBC、 2008~2009年)全56話

演出:キム・ジンマン、脚本:ナ・ヨンシク

主演:ソン・スンホン、ヨン・ジョンフン、イ・ダヘ

(1960~90年代)

■炭鉱労働運動、カジノ、韓国資本とマカオ・ベトナム・日本裏組織の国際化

*SG Wannabe+「運命に逆らって」


8.ロードナンバーワン(MBC、2010年)全20話

監督:イ・ジャンス、キム・ジンミン、脚本:ファン・ジフン

主演:ソ・ジソブ、キム・ハヌル

(1940年代~近年)

■朝鮮戦争と人間(家族、恋人、友人)の運命、戦争孤児、少年兵、(朝鮮戦争開戦60周年特別番組)

*ファニ「風になっても」


9.グッキ(MBC、1999年)全20話

演出:イ・スンリョル、イ・ジュファン、脚本:チョン・ソンヒ

主演:キム・ヘス

(1930~60年代)

■対日独立運動、敗戦後の日本軍と韓国資本家との取引、三白景気と菓子製造業、女性企業家のサクセスストーリー

*ペ・ジュウン「美しき時代」


10.オールイン (SBS、2003年)全24話

演出:ユ・チョリョン、脚本:チュ・ワンギュ

主演:イ・ビョンホン、ソン・ヘギョン、チソン

(1970~90年代)

■ギャンブラー、ホテル経営とカジノビジネス、ラスベガス、済州島リゾート開発、修道院

*パク・ヨンハ「初めて出逢った日のように」


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