看護学部

Faculty of Nursing

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更新日:2020年11月19日

研究紹介

【看護学部】研究への扉(第1回) ~チームの力を結集して医療の安全性を高める研究~

 看護学部教員の研究紹介「研究への扉」第1回です。

今回は、基礎看護学領域の中原るり子先生からご自身の研究についてご紹介いただきます。

 

 

Q1:研究のテーマを教えて下さい。

 医療の安全に関する研究をしています。医療事故の原因の一つと言われているチームの連携の問題に焦点を当てて、チームワークを最大限に引き出すための訓練の効果を検証しています。また、巨大災害が起きた時の病院内の危機管理についても研究しています。今回は医療安全に関する研究についてお話します。 

 

 Q2:この研究に取り組もうと思ったきっかけは何ですか?

 1999年母校の附属病院で「患者取り違え」というあってはならないミスが起きました。私はいてもたってもいられない気持ちになり、医療安全の研究を始めました。優秀なスタッフがなぜ初歩的なミスをしてしまうのか、チーム内の鎖はなぜ弱いのか、この疑問を解決するために、最初は心理学的側面から研究を始めました。ミスを起こすメカニズムがわかってきてから私の関心は、チーム内のコミュニケーションを改善する方法に次第に変わっていきました。2008年当時、アメリカで開発実践されていた「TeamSTEPPS®」という医療安全の教育プログラムに参加し、教育学的側面から実証研究を始めるようになりました(図)。

 

Q3:どんな人を対象にした研究ですか?

 私の研究対象は医師・看護師・薬剤師など医療従事者です。医学生や看護学生も対象にすることがあります。

 

Q4:どんな方法で研究を行っているのですか?

 医療事故やヒヤリハット事例(事故には至らなくても一つ間違えば事故になり得た事例)の原因を分析し、現場の医療従事者とともに対応策を講じることもあります。また、全国の病院や研修センターに出向き、多職種連携の研修や危険予知訓練を実施してその効果を検証してきました。

 

Q5:研究を通してどのようなことが分かったのでしょうか?

 どんなに優秀なスタッフであろうとヒューマンエラー(人為的なミス、意図しなかった結果にいたった行為)を避けることはできないこと、起こりやすい状況が重なるといとも簡単にヒューマンエラーは誘発されてしまうことがわかりました。

 研修後の質問紙調査を通して、医療事故や予防策に対する考え方も職種間で異なることがわかりました。医師や医学生は研修参加に消極的ですが、エビデンスを示したり、海外の医師が医療安全に取り組む様子を紹介したりすると動機づけが高まるということがわかりました。看護師は医師に対してコミュニケーションのとりづらさを感じているということがわかりました。しかし、研修を通してどの医療従事者もコミュニケーションの不備が医療事故の原因であり、それを回避するスキルを学び、医療安全への動機づけが高まることもわかりました。

 

Q6:今後はどのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか?

 これまで医療者を対象に研修を行うことが多かったのですが、今後は看護学生だけでなく医学生や薬学生に対して多職種連携の講義や演習を行い、その効果を検証していきたいと考えています。

 人は誰でもミスを犯します。弱点を多く持つ人間ですが、学習を積んだり、システムを改善したりしていくことでその弱点をカバーすることも可能です。これからもチームの力を結集して医療の安全を高めるための研究を続けていきたいと思います。

 

 Q7:最後にホームページをご覧のみなさんへメッセージをお願いします

 ミスをしない人などいません。完璧でないところに人間らしさというかその人の魅力が隠れていたりします。ご家族や自分を観察して「思い込み」「うっかりミス」「物忘れ」「ルール違反」がいつどのような状況で起きやすいのか観察してみてください。そこに法則性が隠れているかもしれません。いつの日かみなさんと一緒に安全に関わる研究の扉を開いてみたいと思います。