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更新日:2024年06月12日

小児看護学

【領域紹介】小児看護学

小児看護学

1.子どものもつ「ちから」を見極める小児看護学教育

子どもは、健康状態や置かれた状況にかかわらず、その子なりの「ちから」を持って生きています。この「ちから」には、生きるための生理的能力や発育する力をはじめ、成長発達や活動する力、生活する力があります。小児看護学では、子どもを「健康」「発達」「生活」の枠組みで理解していきます。そして、子ども自身がもっている「ちから」を状況にあわせて最大限に発揮するために必要なことを考えます。子どもが育つための環境(人やもの、制度など)を理解し、援助を構築できる看護師になれるように学んでいきます。

2.学生がより主体的に学ぶ活動を取り入れた講義と演習

小児看護学の学びは、右図に示す順番に科目が進行していきます。小児看護学概論では健康な子どもと家族を中心に学びます。教科書だけでなく、母子健康手帳や、子どもの権利条約カードブックなど、一般資材も活用し、子どもと家族の特徴を理解します。さらに、ニュースや新聞記事などから、学生自身が気になる事象を取り上げ、子どもの「今」を知り看護の視点からとらえる、といった活動を通した学習も行っています。

概論の学びを基盤として、小児看護学援助論では健康障がいのある子どもと家族の理解に広げていきます。事例を活用した学習内容の理解を深めていますが、2020年度より教育用電子カルテを導入し、これまで以上にリアルな環境での学習が、学生の対象を把握し、課題を見出す力を助けています。

小児看護学の科目構成
グラフィックシラバス
グラフィックシラバス
  • 電子カルテで学習中
    電子カルテで学習中
  • 患者情報を抽出するワーク
    患者情報を抽出するワーク

小児看護学援助演習では、子どもの生活支援技術、対象把握技術、症状安定化支援技術といった、小児看護に必要な基本的な技術を学びます。これらはスキルだけでなく、教育用電子カルテの事例と連動したアセスメント技術の学習も含みます。学生は事前にテキストなどで知識を確認した上で授業に臨み、学習をまとめた資料を参考に、設定された課題に対する最適解は何かを考えます。内容はグループワークで共有し、話し合いの中で新たな疑問や応用的課題を学生自ら見いだしていくアクティブラーニングを行います。

2023年度から新設されたシミュレーションルームの機能を活かして、より効果的な学習が行えるようになりました。技術実践をタブレットで撮影し、動画を見ながらデブリーフィングをすることで、より良い技術を見出していきます。

小児看護技術は身体測定一つ取っても、特徴的な手法や、特異的な状況が多いです。定型の理解は当然のことながら、それをもとに様々な状況に合わせて援助の方法を創出する力が求められます。それゆえにアクティブラーニングによる学習が有効といえるのです。

看護学部のディプロマ・ポリシーには「看護専門職としての役割を果たし、社会に貢献していくために、将来にわたり自己研鑽を継続し、看護実践のための専門性を発展させる意欲を有している」ことが掲げられています。自分たちで考え、状況に見合った援助を導きだす学習は、学生にとって決して容易ではなく、課題が多いと感じる学生もいると思います。しかしながら、この学習で培った力が、将来に渡って学び続ける力の源になると考えています。

グラフィックシラバス
グラフィックシラバス
技術実践中
技術実践中
実践した動画を観ながらデブリーフィング中
実践した動画を観ながらデブリーフィング中

3.実習施設の看護師と上級生の参画により、技術演習をさらに活性化

小児看護学援助演習では、実習施設の指導者である小児救急看護認定看護師を招き、特に難易度が高い技術について臨床での知見も学習ができるようにしています(参照)。加えて、小児看護学領域ゼミ生の4年生学生がピアサポーターとして参画し、技術演習でのアドバイスやグループワークのファシリテーションを担当しています。

先輩からのアドバイスは、学習者としての経験がもとになっており、学生にとっては大変身近に感じられます。教員とは異なる視点でのサポートは、学習を促進させ、知識に広がり、学生にとっては貴重な時間となっています。
一方、参加する4年生にとっても、事前の復習と技術練習を行った上で臨み、知識と技術の定着を図ることができています。加えて、学生からの質問を想定して回答を準備してアドバイスに備え、自身の動きをイメージしてかかわることで、サポート能力を養う機会にもなっています。そしてなにより、小児看護への関心をさらに強めることができています。

上級生のファシリテーション
上級生のファシリテーション

 

4.臨地実習での気づきを小児看護学の知として理解する小児看護学実習

小児看護学実習では、小児病棟、小児科外来、保育園の3か所での実習を通して、さまざまな健康レベルにある子どもへの看護を学習します。それぞれの施設での学びを小児看護学実習の学びとして統合するのは学習者にとって容易ではありません。

実習の最終日には、ディスカッションを複数重ねながら、臨地実習での体験を既習の概念や理論に照らしながら、その意味を考えます。学生にとっては、非常に頭を使う一日ですが、もやもやしたままだった考えが、腑に落ちる瞬間があるようです。

同じ実習施設で学んだ学生とディスカッション
同じ実習施設で学んだ学生とディスカッション
同じ実習施設で学んだ学生とディスカッション
臨地で体験したことの意味を言語化

5.実践家や子どもの家族による特別講義を通して小児看護の役割を考える

授業の一部では、外部から3人の講師をお招きし、お話をうかがっています。

小児看護学概論では、地域で暮らす子どもたちの状況とそれに対する支援の実際について、子どもの居場所づくりを行っているNPO法人の活動を学びます。

小児看護学援助論では、災害急性期に現場で活動する小児救急看護認定看護師を講師に招き、非日常での子どもと家族への看護を学んでいます(参照)。さらに、お子さんが新生児集中治療室(NICU)で治療した経験をもつご家族を講師に、当時の様子や気持ちを、家族目線でお話いただいています(参照)。学生は家族への看護の大切さを考える貴重な機会を得ています。

このように、日常、非日常のなかで子どもと家族、そして、そこにかかわる人々の活動を知ることにより、小児看護の役割を考えることができています。

父親としての体験をお話くださいました
父親としての体験をうかがう貴重な機会です

6.学生のみなさんへのメッセージ

小児看護学の学習に対する学生の声は非常に幅広いです。「発達を理解して援助を考えるのが難しい」という声がある一方で、「発達をとらえ、かつ、発達を活かした看護を考える楽しさもある」とも言われます。どちらの意見も理解できます。小児看護学は子どもを対象としますが、子どもたちはやがて大人になります。そのことを意識して学ぶと、思いもよらなかった面白さが見つかると思います。