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更新日:2026年01月27日

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【学長ブログ】第6回 記号接地問題?

 

【学長ブログ】第6回 記号接地問題?

 12月11日に実験動物慰霊祭が行われました。開会の挨拶では、私たちの教育や研究が多くの動物の尊い命によって支えられていることや、倫理的責任を常に自覚しながら動物福祉の向上に努めていかなければならないことなどを話しました。実験動物慰霊祭での挨拶は初めてだったので、これまでの挨拶の内容を参考にしながら準備したのですが、献花の前に述べられた学生たちのことばのほうがはるかにしっかりとした内容でした。
 2週間大切に育てたラットを泣きながら解剖するという経験から得たものは非常に尊いもので、私が挨拶で述べたような内容は学生たちのほうが濃密に実感し、理解していたものだったと思います。

 学長としてこの1年間いろいろな挨拶を経験してみて、苦手な挨拶とそうでない挨拶があると感じています(総じてどの挨拶もあまり好きではありませんが)。事前に原稿を準備して、何度も読み返し練習しても、どうもしっくり行かない挨拶がある一方で、なんの準備もなしに何とかなってしまう挨拶もあります。もちろん、聴衆の数などの状況にも大きく左右されますが。
 実験動物慰霊祭の挨拶は、聴衆も多くなく(ほとんどが学生)であったにもかかわらず、私にとっては前者のタイプでした。それは、AI(人工知能)が抱える記号接地問題(記号(言葉)が、それに対応する実世界の実体(身体感覚や体験)と結びついていない状態)と似ているのかもしれません。私の挨拶は、言語化はできているけれども記号接地ができていなかったのだと思います。それに対して、学生たちのことばは、自らの体験や学びにしっかりと接地しているものだったので、その違いは歴然としていたのだと思います。

 

 近年は「言語化」ブームとも呼べる状況になっているようです。「言語化」をタイトルに含む新刊書籍の出版は2020年には2点だったものが、25年は10月時点で19点に急増しており、その背景には多くの人がテキスト型SNSに投稿するようになったことも影響しているのではないかという分析があります(『朝日新聞』1月5日付朝刊)。
 言語化の重要性はますます高まっていくと思います。単に言語化すればいいだけならAIがいくらでも代わりを務めてくれると思いますが、だからこそ、しっかりと記号接地した言語化がより一層重要になってくるのだと思います。