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文芸学部取り組み・プロジェクト紹介

更新日:2016年04月10日

劇芸術専修

受験生へのメッセージ(土田 牧子)

1.担当授業

 こんにちは、土田牧子と申します。劇芸術コースで、能、歌舞伎、文楽など日本の古典芸能を担当しています。授業では、古代から近世までの「日本演劇史」や古典芸能を中心に扱う「劇芸術概論」などの講義と、いくつかの演習(ゼミ)を受け持ちます。

 演劇史や概論の講義では、敷居が高いと思われがちな古典芸能のおもしろさを伝え、もう少し気軽に古典芸能に親しめるよう導くことを、まずは大切にしたいと思っています。でもこれは第一段階。やはり古典芸能は、ある程度の難しさを伴うものです。そのため、知識を身につけてこそ楽しめる、古典芸能の奥深さも感じられるような授業をしたいと思っています。せっかく文芸学部で学ぶのですから、一般の演劇ファンとは違う「知」の領域に触れていただきたいと考えているからです。

 演習(ゼミ)は、少人数で受講生が自主的に学ぶ授業です。ゼミでは、講義で学んだことを踏まえて、受講生が自分自身で知識を深め、疑問を解決していく力をつけられるように心がけています。そのためには、受講生自身が好奇心を持って授業に臨むことが求められます。ゼミに参加することによって、自分の考えを相手に伝える伝達力や発信力、人が言おうとしていることに耳を傾ける理解力、どうやったら人に分かりやすく伝えられるかを考える想像力、これまでにない観点で研究を構築していく独創性、受講生どうし互いに助け合う協調性など、社会に出てからも役立つ力がきっと備わっていくと思います。演劇やそれを取り巻く文化に関心を持った仲間たちが集い、和気あいあいとした雰囲気の中で、活発に意見交換をしながら互いに高め合っていけるような、楽しい場を提供したいと思っています。

 

2.研究テーマ


◇近年の研究成果
『黒御簾音楽にみる歌舞伎の近代
―囃子付帳を読み解く』雄山閣(2014)

 私が専門としている研究テーマは、歌舞伎の音楽です。歌舞伎は音楽がたくさん使われる演劇ですが、一番興味を持っているのは「黒御簾(くろみす)音楽」と呼ばれる、歌舞伎の音楽演出です。「黒御簾音楽」は、他の演劇や映画における効果音楽(サウンドエフェクト)やBGMに似た働きをしますが、歌舞伎ならではの決まりを持つ特殊な「劇(げき)音楽」と言えると思います。「黒御簾音楽」は客席からは見えない場所で演奏されているのですが、大半の歌舞伎作品では、この「黒御簾音楽」が縁の下の力持ちとして機能しているのです。

 私が歌舞伎に興味を持ったのは、小学校六年生のときでした。それ以前から子供ミュージカルが好きで、ときどき劇場に連れていってもらっていましたが、歌舞伎と出会ってからは、熱心に歌舞伎座に通うちょっと変わった子供になりました。歌舞伎中心の観劇人生はそれからずっと変わらないのですが、中高時代にはミュージカル、タカラヅカ、オペラと次々にハマっていき、勉強や部活に加えて、観劇に忙しい学生生活を送りました。今振り返ってみれば、どれも音楽が活躍する演劇ばかりです。そのころから、演劇に付随して演技を支える音楽、つまり「劇音楽」に興味を持ち始めていたのだと思います。

 大学は音楽史や音楽理論を勉強する学科に進学し、西洋クラシックから日本の音楽までいろいろな音楽に触れました。でも印象に残っている授業は、オペラに関する授業、歌舞伎や文楽の音楽に関する授業、映画音楽の授業など、「劇音楽」に関するものばかりです。そこで、卒業論文のテーマとして、歌舞伎音楽、中でもお芝居と最も直結した「黒御簾音楽」を選びました。そのときには思いもよりませんでしたが、それ以来ずっとこの「黒御簾音楽」と付き合っていくことになったのです。

 歌舞伎音楽、それも黒御簾音楽の研究、などというととても狭く小さいテーマを研究しているように思えるものです。でも、演劇や音楽における小さな事象の研究は、そこからそれぞれの演劇ジャンルや音楽ジャンル全体の理解へと繋がり、さらにはそれを取り巻く文化全体の探求へと限りなく拡がっていきます(おそらく文学や造形芸術の研究も同じだと思います)。小さな鍵穴からとてつもなく大きな世界が見えてくるところに、研究の醍醐味があると感じています。

 

3.受験生の皆さんへ

 文芸学部は、文学・劇芸術・造形芸術・教養・メディアなどを学ぶ場です。これらは一見すると、社会では役に立たない学問のように思われるかもしれません。でも、いろいろな文化の形(文化の多様性)を知ることこそ、皆さんがこれからの人生を生き抜いていく力になると、私は考えています。何かひとつのことで失敗したり、つまずいたりしたときに、世界中や日本中の多種多様な文化や価値観を知っている方が、強くなれるような気がしませんか。文芸学部では、そんな文化との出会いをしてほしいと思っています。また、演習(ゼミ)形式の授業が多いことも文芸学部の特徴と言えるでしょう。ゼミは、教員の話を聞くという受け身の授業ではなく、学生が自主的に運営していく授業です。「担当授業」のところで述べたように、そこでは社会で役立つさまざまな力が身につくことでしょう。「社会で役立つ力」とは「就職に強い」ということと無関係ではないでしょうが、私はそれよりももっと本質的な力、言ってみれば「人間力」だと思っています。大学生活、とくにゼミは、人生を豊かに円滑に楽しく生きていくために必要な力を身につける場でもあるのです。

 文芸学部に興味を持ってくださった皆さん、実り多い豊かな人生を送ることができるように、文化について一緒に学んでみませんか。