国際学部

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更新日:2021年08月27日

学生の活動

【国際学部】学生広報委員による新任教員へのインタビュー(1)


※感染症対策を十分に行ったうえで実施し、撮影時のみマスクを外しています


 2021年度春、国際学部に新たに2名の教員が着任しました。今回は、アメリカ研究が専門の佐原彩子先生に、佐原先生のゼミ生でもある学生広報委員の戸門彩乃さん(国際学部3年)がインタビューを行いましたので、その模様をお届けします。


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Q. ご専門の研究についての大まかな説明をお願いします。


 地域で言うとアメリカを中心とした研究をしていて、特にアメリカの中でも60年代以降で70年代なかでも、75年以降のベトナム戦争後の移民や難民の人たちのことを中心に研究しています。ですから、アメリカ研究の分野の中でも特にアジア系アメリカ人研究が自分のフィールドだと思います。


―― ゼミの自己紹介文によると、最初はアメリカ研究が専門ではなかったということですが。
 元々は、グローバルな人の流れに興味がありました。また、日本のことを含めアジアのことにも興味があり、アジアのことをやるとなるとアメリカのことも知る必要があるということで始めたんです。移民を研究するためには、その人たちを取り巻く様々な状況を理解するべきなので。だからアメリカ研究が専門となっても、移民研究者同士の話は分かり合えたりします。移民という共通の関心が、アジア研究とアメリカ研究をインターディシプリナリー(学際的)に繋いでくれると思います。人も、ベトナム系アメリカ人となると、ベトナムとアメリカのこと両方分かっていないといけないのです。


Q. その研究のきっかけとなった、学生時代のエピソードはありますか。


 私は元々、付属の高校に通っていて文系だったので、大学進学するときに基本的にどの学部でも理系以外は行けることになっていました。文系の中で何をやりたいか考えたときに、国際関係学とか…そういう政治的なことよりも、文学とか歴史とかそういうことに興味があったので文学部に行こうと思ったんです。でも文学をたくさん読むってなると、うーん…ってなって。だから、もっと自分の知らない歴史を勉強しようと思って、西洋史に入ったんです。西洋史に入ると、当時は歴史をもっとグローバルに観ようという見方が多くて。それから本当の出会いは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)から帰ってきた中国史研究の唐澤靖彦先生がジェンダー史、グローバル史をやっていて、その先生の授業がすごく面白かったんです。それで歴史って面白いと思って、アジア史の概念的な歴史というか…ジェンダーであれば時代を超えてどういう様に変遷してきたかを考えることなどに興味が出たんです。そういうところで、すごく興味を刺激されてベトナムとかアジアの国々を見たくて旅行してみたらもっと歴史は面白いと強く感じるようになって。でも東洋史で漢籍をよむところまではいかないところで、どうやって東洋史と西洋史を結ぶテーマができるか考えたときに、アジアからの移民の話で卒論を書こうとなったのがきっかけです。


Q. 座右の銘に ”Where there is a will, there is a way” を選ばれた理由やエピソードはありますか。


 やっぱり、生きていくうえで意志ってとても重要だと思っています。特に自分の大学院の指導教官が、これを読みなさいとかこれがいいよとか与えられると、それは与えられたものであって自分で掴んだものではないという、自分で探さないといけないという考え方の先生だったんです。自分の意志で見つけたものが一番素晴らしいんだという考え方だったんです。意地悪だなと思っていたんですけど、でも今になってみると本当に自分が興味あることを今も持ち続けられていることや、ミッドライフクライシス(中年期の心理的危機)がないことってやっぱり意思の力があると思います。辛いけど自分で考えて自分で掴み取るほうが後悔がないよっていうことだったんだと思います。





Q. 映画鑑賞が趣味ということですが、国際学部生にオススメの映画はありますか。


 映画全般がオススメで、私はあんまり本の虫ではなかったんですけど、やっぱり映像の持つ力ってすごいと思っています。映画を観て、もうちょっとこれを調べてみようと思うことが結構あると思うので、歴史的なものを題材にしている映画は観てほしいと思います。『エリン・ブロコビッチ』や、最近の映画だったら『ハリエット』とか、『黒い司法 0%からの奇跡』、他にも『ミルク』など、他にも『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』『プラトゥーン』などベトナム戦争関連の映画は描き方も含めて、人が見て感動するだけじゃなくてどういう風に物語られていくかが社会を理解するうえですごい重要なので、ぜひ観てほしいです。
 でも、個人的にはコロナ禍で映画館がほとんどしまっていたから、残念に思っていたのですが、最近開いたんですよね。だから話題になっている『ノマドランド』を観たいです。まだ観てないのでオススメとは言えないですけれど。



Q. 大学時代の思い出、現役の大学生に大切にしてほしいこと、これは大学生のうちにやっておいた方がいいなということなどは、ご自身の体験から何かありますか。


 大学時代の思い出…無駄な時間を過ごしたなと思っています。友人とずっとボードゲームをしたり...。


―― 楽しそうですね。
 本当に楽しかったです、だからボードゲームをした友人とは今も繋がっているし、やっぱり友人がいることはすごい大事にしてほしいと思うんですよ。でも、教員になって思うのは、大学で友達を守る以上に大切な価値観や倫理観に触れる必要はあるけど、利益を抜きにして人に出会える学生時代の友達って一生の友達だと思います。社会人になってしまうと、どこの企業に勤めているとか、そういう目で人を見てしまうけど、学生時代の友人っていうのは純粋に趣味が合うとか、好みが合うとか価値観が合うとかそういうので一緒にいて、遊べるので。そういう友達は常にその時代に戻れる存在だから大事にした方がいいと思います。
 中学受験の時に出会った友人が、今も友達となると30年以上友達なんですよ。でも、気持ちは12歳のままなんです。だから、友達は出会った時に戻れてしまう存在だから、友人は大事にしてほしいなと思います。
 だからといって、出会いと別れがあるからみんなに執着しなくていいと思うけれど、価値観が合う友人がいるといいなって思います。
 それと、本を読んでほしい。


―― あまり読まなかったのですか?
 いや、大学生になって大量に読むようになったんです。唐澤先生が、日本の教育を忘れてて…アメリカの大学って一学期に一つの授業でたくさんの本を読ませるんですよ。一つの授業で大体週に1冊、15週やると15冊読むことになるんです。


―― すごいですね。私のとっていた授業は一学期間で一冊とか…
 日本の授業が単位を1年生から2年生の間で多くとらなければならないシステムなのと、日本は先生が授業をコンテンツ化して教えますよね。でもアメリカでは基本的にそこまで先生がコンテンツ化して教えるわけではなくて、むしろ学生が読んできたことをふまえて議論したり、授業の中身が違うということもあります。唐澤先生は、UCLAで教えていて帰ってきてすぐだったからか、本当に15冊でした。えっこんなに読むの、と思ったけど、全部面白そうだったのでお金は痛いけど読んでみたいと思って、全部買って、読んだら本当に面白くて。一つの授業で15冊、二つ取れば一学期間で30冊読む。それプラス別の本も読むから結構大学時代に本を読んだんです。しかも自分で選ぶのではなく、先生がセレクションしているから、一つのテーマに関してセレクションされた本を読むというスタイル、なんて素敵!って。本を読むって、小説ではなくて、何かを論じた専門書を読む機会があったことはすごく良かったですね。今は唐澤先生も1学期に一冊しか課題に出してないみたいですけどね。学生さんにやっぱり多いって怒られるし、そういうふうに続けると自分も大変だから。常にずっと同じ本を課すわけにはいかないから常にアップデートしなくてはいけないのがかなり大変で、結局いまはやめてしまったみたいです。


―― なんだかもったいないですね。
 そう、でもそのタイミングでその先生に出会えたことがいまだによかったなと思います。それで、本を読む癖がついたのと、元々本嫌いではなかったんですけれども、そういう人文社会科学の分野の本を読むことができたことで、大学の図書館がすごいということに気づいたんです。大学の図書館は市民図書館とか区民図書館とは違う知識の提供をする場なんですよ。それで、大学図書館を利用しすぎて、カウンターの人とかにこれはないんですか、と聞きまくったりしていました。当時は書誌情報が紙からインターネットに切り替わる時代で、そういう時に本をネットベースで探したりデータベースの使い方を知ったりしたことは留学でも役立ったし、いまだに役立っています。アメリカでは本が電子化されているから、そういった意味でもなるべく知識をいかに社会全体で作っていくかというところは日本も本腰を入れてやっていかないと、あまりにビジネス的な視点に立つ民間企業などに市の図書館が運営されていくと、売れる本ばかりになる。そうすると1年から2年でいらなくなるんですね、だからそういうことも含めて、読む価値のある本に出会うということを大学時代のうちに経験してほしいですね。働きだすときっと、これをもっと売らなきゃいけないとか、人付き合いのやり方といったノウハウ本ばかり読むよう促されるので、大学時代は純粋になぜ生きるのかとか、社会とはどうあるべきかといったすごい大きな哲学的な問いで、必ずしも自分の利益にはならないけれど、社会とか地球の利益になるようなことを考えられる素晴らしい時間空間だと思います。


―― 授業などでないと、普段手を出しにくいですね。
 そうなんですよね。テレビとか、娯楽とか、楽しいことをもっとしたいと思うかもしれないし、それも重々わかるんだけど、意外と十年後とか二十年後とかにあぁこういうことか、ということがあるんですよ。ナショナリズムとは何かとか国際政治とはとか、堅い本を読んでおくと。そういうことって堅くてつまらないと思っているかもしれないけど、まわりまわって自分の家族の在り方とか会社の在り方とか、社会的に自分も責任を持つときに絶対昔は堅くつまらないと思ったことがとても重要だったりすることがある気がします。





Q. 国際的なご自身の仰天体験はありますか。


 話し出すといっぱいあるので絞って考えてみたら、一番の仰天体験は、アメリカで車が高速道路上で止まり、事故をしたんですよ。エンストしてしまって…アメリカのハイウェイで、4車線とか6車線とかあって、一番早く行く車線を走ってたら止まりそうになって路肩に寄ろうとしたんだけど辿り着かず…。あれは私の人生の中で一番長い数分間でしたね。あわてているときに後ろから2台衝突されて、炎上して死んじゃったらどうしよう的な状況になったんですけど、そこまでの大ごとになることもなく。早く通報してくれて様子を見に来てくれる人がいて、救急車も来て大きなけがにならずに済んだんですけど。後日談があって…。アメリカって救急車が有料なんですね。


―― そうなんですよね、すごい高いんですよね。
 そう。保険に入っていたからよかったんだけど、普通の請求書が三千ドルくらいで…だから呼ばないでくれ、タクシーを呼びたいって人が多いという話はやっぱり本当なんだろうなって思います。保険入っていたから、自己負担は1万円から3万円くらいで、自分が払う分はそれで済んだんですが、事故車を引き取ってくれたところに、高額請求をされて大変でした。身体がむち打ちになって痛いときに、交渉しなくてはいけなくて、アメリカって大変な社会なんだなぁって…。でもその時はラッキーなことに知り合いの弁護士さんがいて、全部交渉してもらったら半分から三分の一が弁護士さんの報酬になるとなると躍起になってやってくれるから、アメリカにおける弁護士の大事さを実感しましたね。


―― すぐ裁判を起こすと聞きますね。
 でも本当にやっぱり、身近にプロフェッショナルな人がいることによって社会が守られていることっていっぱいあるんだなって思いました。だからやっぱり、色んな事はプロに任せた方がいいって思いますね。
 これが一つの仰天体験で、もうひとつは空港トラブル系です。結構アメリカって乗継便がなくなることが普通にあるんですよ。日本ではあんまり考えられないですよね。アメリカはやっぱり広いので、国土が広いと空港もいっぱいあるから乗り継ぎが上手くいかないとか、機内整備で遅れるとか…そういうトラブルだらけだと思うんです。サンディエゴに留学した時に、日本・サンディエゴ間って直行便はJALしか飛んでなくて、高いから買えなくて大抵はロサンゼルスかサンフランシスコ経由なんですよ。それで、日本からロサンゼルスとかサンフランシスコに着いたときに、自分が予定していたはずの乗継便がないってことが結構ありました。だから基本的に直行便をとった方がいいっていうのはアメリカ生活で学んだことです。乗継便がないこともあるっていうことと、日本みたいにグランドスタッフの人が案内してくれるようなサービスは基本的にないということの想定は必要ですね。そういう場面でも自分で主張しなければいけないということがありましたね。
もう一個、空港関連でいうと、別室に連れていかれたことがあって…。


―― 危ない感じですか。
 いや全然問題なくて、私の書類には何の不備もないのに、ランダムに連れていかれたんです。乗継便もあるのに、連れていかれて従うしかなくて、荷物とかどうなるの?という状態で、行ったら行ったで明らかに査証(ビザ)忘れました的な人たちと一緒の部屋にいて。どうしようって思いました。そうなってくると、自分の書類に不備があったんじゃないかと不安になってきたのですが、結局2時間ぐらいそこで待たされた挙句、結局「もう行っていいよ、何も問題ないから」と言われてあっさり帰されたということがあったんです。こういうのはどうなんだろうとあんまりにモヤモヤしたから、その時フルブライトプログラムで奨学金ももらってアメリカの国務省のビザで入れないってどういうことなんだと担当の人に言ってみたら、「ランダムにチェックするんだ、国境警備隊の人たちの権限としてランダムにチェックすることで、犯罪を防いでるっていうのがある」って言われました。でも国務省としては、例えば大事な客人にそんなことをされては、アメリカの印象が悪くなるから国境警備を管轄している国土安全保障省へやめてくれということは言っているという話を聞いて、アメリカは立場によっても方針が各々あって、その中で動いていているというのがあると思いました。だから、空港で嫌な目に遭いたくないってなると、国境警備隊などの中に知り合いがいるといいのかもしれないですね。そんなことがありました。
 でも知り合いの人は更にひどい目に遭っていて、同姓同名の永住権詐取で捕まったことがある人がいるみたいで。でも名前だから変えようもなく、毎回とめられるって言う話があります。いまはグローバルエントリーとか1万円払えば5年間有効で、よく渡航している人なら入国審査が楽になるシステムがアメリカにはあって…そこもお金にするのかって感じだけれど、そういうふうに登録すると入国時などの問題からは逃れられるようなシステムなんだけど、やっぱりお金という感じで、資本主義って怖いなと…。でもそういったシステムが出入国にまで影響を与えていっているところをつぶさに見たなって思います。あと、一回別室行ったから思うけれど、入国審査にまつわることは怖いしそういう体験はあまりしたくないなって、思いますね。



Q. 新任の先生としての意気込みをお願いします。


 今まで短期大学で教えていたので、4年間学生さんの学びを助けたり、あるいは学生さんからも学ぶ、3年生から4年生ってすごく成長する時期だと思うので、その時期の学生さんとも交流が持てる環境にあるというのは有難いことだなというふうに思っていて、すごく楽しみです。留学経験もあり、アメリカだけではなくベトナムにもいたことがあるので、国を問わず海外に行く気持ちを応援したいと思っています。



Q. 神保町は古本屋さんやご飯屋さんやミニシアターなどたくさんありますが、何かやりたいことはありますか?


 映画好きなので、岩波ホールとか…コロナ禍が落ち着いたらゼミなどみんなで美術館に行ったりとかしたいですよね。



インタビュー: 戸門 彩乃(国際学部3年)



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