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更新日:2017年09月14日

【国際学部】リレー・エッセイ(14)立松美也子「そうだ、図書館に行こう」

『そうだ、図書館に行こう』

立松美也子


 ディズニー映画で一番好きな作品は何かと問われれば、「美女と野獣」と答えるであろう。それは、作品のストーリーでも登場人物によるものでもなく、野獣の住む館にある図書室に魅了されたからだ。天井に届く本棚には本が整然と配架されている。読んだ本は、魔法で自動的に元の場所に戻るのだろうか?ろうそくが照明として使われていたが、火事の心配はないのだろうか。オックスフォード大学ボドリアン図書館、ここはハリー・ポッターの舞台になった図書館として有名であるが、ここでは図書館の利用を申請する者に対して、入館証を出すおりに宣誓をおこなわせていた。ラテン語の宣誓文の中に「図書館に火や炎を持ち込まない」という下りがある。この宣誓文を見た時、「薔薇の名前」という中世の修道院を舞台にした映画で修道院が焼け落ちるというシーンを思い出した。壮大なストーリーで色々な隠喩に満ちていると有名な映画である。しかし、私の感想は、「ああ、せっかく写本した本が、燃えてもったいない」であった。かくも、図書館とろうそくは似合わない。「美女と野獣」の図書室のシーンは、ポルトガルにあるコインブラ大学ジョアニナ図書館がモチーフになっていると聞いた。2013年、世界遺産に登録された大学である。図書館の天井は美しいフレスコ画が描かれている。余りに壮麗で落ち着いて本が読めないかもしれない。


 私が大学1年の時、大学図書館に資料を取りに探しに行った。館内を歩き回っていると偶然、アイザック・アシモフの作品が入っていることに気づいた。大学図書館にはサイエンス・フィクションまで入っているのか!と驚き、借り出さずに、勉強に飽きるとそれを読みに行った。先日、ゼミ生が共立女子大の図書館には絵本も入っていたと私に報告してきた。児童学科の学生には必要な資料なのだろう。


 このように図書館に足を運び、中を歩くと色々な発見や驚きがある。それが開架式の良さでもある。学部生の時、老教授がご自身の体験を話してくれたことを思い出す。若かりし頃、彼が大学図書館に資料を探しに行き、広い図書館の中を彷徨ったとき、ふと目にとまった画集を開くと自分が今まで見たこともない美しい絵画がそこにあったと。時を忘れてページをめくったという。しかし、その後、どんなに探しても二度とその画集には出会うことができなかったという話であった。


 現在の卒業研究の資料収集はネットで行うのが通常であろう。データベースで自分のテーマに関連する用語を入力すると資料が羅列される。何ページにもわたって読めないほどの資料が出てくる、玉石混交であることもある。ネット上でPDFになっているとクリックすれば、その場で印刷できる。あるいは、図書館の相互貸借で自分で相手の図書館まで出かけていかなくても入手できたりする。非常に便利で効率的になったのは確かだ。しかし、時として少し物足りなくも思う。開架式で目当ての本を手にしたとき、ふと目をやった書架に他の文献があったり、目的の論文を探して、ページをめくっていると興味深い論文に出会ったりは、ネット上ではあり得ない。その一方、先行研究の重要性や原稿の締切を考えると、効率的なネット検索や相互貸借やコピーサービスから、もはや離れることはできない。逆にネットを検索してPDFになっていないと、残念な気持ちになっている自分もいる。そして、ダウンロードするような速度で資料を読めないかとさえ思う自分もいる。


 さて、学部時代に通った大学図書館を3年前に訪ねた。お盆休みでどこの大学図書館も開いていなかったため、四半世紀ぶりに出かけていった。学部生当時とまったく変わっていない懐かしい入り口から中に入ると、前世紀と同じ図書館の匂いがした。いつでも、図書館は「驚き」に満ちあふれている。


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