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更新日:2018年11月29日

【国際学部】リレー・エッセイ2018(22)平石妙子「四万田犬彦:『「かわいい」論』を読みながら・・・」

四万田犬彦『かわいい論』を読みながら・・・

平石妙子


 今学期の二年生を対象とした「国際基礎演習II」では、四方田犬彦氏による『「かわいい」論』(ちくま新書、2006)を読んでいます。本書は日本のアニメやキャラクター・グッズなどで多用されてきた「かわいい」という言葉をキーワードとしてこの言葉が持つ意味を歴史的、社会的、文化的に読み解くことを目的として書かれたものです。関心のある地域や領域が多岐にわたる受講生が興味をもって読めるテキストとして本書を選びました。出版されてからすでに10年以上も経過していますが、著者の分析や指摘は現在でも示唆に富むものであり、比較文化研究の入門書としても貴重なヒントが随所にみられます。新書ですから一般の読者に向けて分かりやすく書かれながらも、博学の著者だけあってところどころで難解な説明もあるため、時間をかけながら読み進めているところです。


 授業はゼミ形式でグループ発表にもとづいて進めていますが、それぞれのグループの発表は毎回、独自の調査も加えて興味深いものとなっています。例えば、本書の第2章「「かわいい」の来歴」では、「かわいい」という言葉が、日本でどのような起源をもち、やがてそれがどのように変容したかその歴史が辿られています。発表者の一人は以前、読んだ太宰治や谷崎潤一郎を読み返して両作家の作品において「かわいい」がどのように使用されているか例証しました。また、「かわいい」に相当する英語の“cute”や”pretty”との相違を詳しく調べた人もいました。第3章「大学生のかわいい」では著者が大学生へのアンケートをもとに、「かわいい」という言葉が「政治性」を内包した複雑な言葉であることが指摘されています。この章を担当したグループはみなで手分けして200名もの大学生にアンケートを取り、著者のアンケート結果とほぼ同じ結果であることを示すとともに、「かわいい」ということばが著者の説明通り実は両義的な言葉であることを示しました。


 以上のように本書を通して受講生はそれぞれの関心に沿って本書から今後の専門の勉強に繋がるヒントを得ているようです。学期末には「かわいい」という言葉をそれぞれ興味のある観点から考察するレポートを書く予定になっています。毎回、授業の最後に書いてもらうコメントでは本書からヒントを得て自分なりの考察を進めている受講生もいることがわかって、今からその成果を楽しみにしているところです。本書が示すように私たちが日常的に何気なく使用したり、出会った出来事から疑問や問題を見つけて今後の専門の学びや卒論作成につなげていけたらと願っています。