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更新日:2018年11月08日

【国際学部】学生広報委員による取材記事(11) 「学生必見! 外務省女性職員の方への独占インタビュー!~知られざる外務省の仕事~」

学生必見! 外務省女性職員の方への独占インタビュー!~知られざる外務省の仕事~


メンバー:国際学部3年
                           縄田晴子・遠藤理絵奈
                           高麗なつみ・太田真優


                                                             
 国際学部で日々学んでいる私たちにとって、聞きなれている外務省という官庁。しかし、勤めている人は具体的にどのような業務をされているかまではあまり知られていません。そこで私たちは、外務省にお勤めの松崎景子さんへインタビューをさせていただきました。


  松崎さんの外務省入省の動機、入省後の仕事、私たちへのアドバイスなど、最後まで見逃せない内容となっています。どうぞご一読下さい。


 <キャリア紹介>

 ―松崎さんの外務省入省までの経緯について

 愛知県出身の松崎さんは、「日本のシンドラー」とも呼ばれる杉原千畝さんの母校の高校へ進学し、彼の影響から外交の仕事に興味を持たれたそうです。

 その後、東京外国語大学に進学。将来はアフリカで仕事をしたいと考えていたため、多くの国で公用語となっているフランス語を専攻、大学3年の時に休学して1年間フランスに留学されました。

 留学の前から外務省への就職も意識されていたそうですが、まずは民間企業に就職され、約2年専門商社で財務、外国為替の業務を担当されました。

 2001年9月11日、松崎さんの人生を大きく変える出来事が起きました。世界同時多発テロ事件。松崎さんがこの事件知って最初に思い浮かんだことは「為替がどう変動するのかな」ということでした。仕事熱心ゆえのことではありますが、「最初にお金のことを考えるのはどうなのか」と自らの考えに疑問を抱き、やがて経済だけではなく、幅広い分野で力になる事はできないだろうかと考えるようになったそうです。そして、再び外務省で外交の仕事をしたいと強く思うようになり、商社を退職。勉強し直したうえで国家試験に挑戦し、見事合格。現在に至ります。

 ―外務省でこれまで担当された業務について

 外務省職員になり、松崎さんが研修後初めて派遣された海外は「在ケニア大使館」でした。普通、大使館というと立地する国との外交や領事の業務に当たるものと考えがちですが、ケニアの日本大使館は周辺国であるエリトリア、セーシェル、ソマリア(赴任当時はこれに加えてルワンダ及びブルンジ)との関係の業務も担当しているそうです(これを兼轄国といいます)。

 その後パリのフランス大使館に3年間勤務し、広報を担当されました。フランスでの勤務が終わると日本に帰国。日本が主に開発途上国を援助するODAの仕事を3年ほど担当された後、現在では国際法局社会条約官室に勤務されています。こちらでは、日本が条約に加盟するうえで必要な条文の翻訳や、日本国内でその条約を施行できるように法改正など準備支援作業など、私たちの生活にも関わる大変重要な仕事を担当されています。

 ―外務省職員として今後取り組みたい仕事について

 代表部などでのマルチ外交に関わる業務、また学生時代からの希望であった、アフリカと日本との橋渡しとなる仕事をしたいとのこと。

 ―外務省職員に向いている人とは

 外務省職員は松崎さんのキャリア形成を見ても分かる通り、約3年で世界を股にかけた異動があり、また勤務地が変わるたび、仕事内容もガラリと変わります。そのため、常に新しい環境に対応できる人、チャレンジ精神がある人、そして、その地で新しく勉強ができる積極的な人が向いているようです。


 <広報の仕事について>

 ―フランスで担当されていた広報の仕事について

 松崎さんが担当されたのは、広報のなかでも「政策広報」といわれる業務がメインだったそうです。政策広報とは、日本の政治情勢など日本政府の立場から正しいと考えられる情報をフランスに伝えたり、フランスで刊行された記事に認識の誤りがあると考えられる場合に、その誤解を解くよう促したりする仕事です。たとえば、安倍政権発足の際、極右政党を意味する「フロン・ナショナル(国民戦線)」の日本版が誕生したと報道されたことがあります。これに対して、言葉のニュアンスの違いを正すために、「安倍政権はフランスでいう中道右派です」という説明をされたとのこと。その他にも、持ち回りでG8やG20の準備の仕事もされたとのことです。(今はG8ではなくG7)

 また、フランスにも様々な新聞社があり、インテリ系の中道の新聞、右派系の新聞、さらに日本には見られない風刺を主とする新聞(3年前にイスラム原理主義のテロの標的となった『シャルリー・エブド』などが代表例)など、ジャンルは多彩であり、読者層も異なります。政策広報では、こうした新聞社の傾向を分析し、それに応じた情報提供を行うことで、日本に対する関心や興味をより効果的に高めることに努めているとのことです。もちろん、好意的な反応で、日本への関心が高まったとか、日本に行ってみたいといった声が寄せられると、うれしいし、やりがいも感じるが、批判的な反論が出てきても、関心自体が高まるという点で、それもまた悪いことではないとのことです。

 ―日本に対するフランス人の関心について

 フランス人は「個人主義追求型」で、日本のアニメ、ゲーム、食文化などに興味持っているそうです。興味があることについてはとことん追求するため、日本人よりもその分野について詳しく知っている方もいるとのことでした!

 こうしたことから、日本独特の団体行動に対しては否定的に見られることが多いそうです。日本人の特徴であるといわれる「空気を読む」行為は、日本では控えめで気が利くとしてポジティブに考えられがちですが、フランスなど海外では逆効果とのこと。黙っていて自分の意見を言わないと、何も考えていないと思われてしまうそうです。


 松崎さん自身もそのことで留学時代に悔しい想いをされたそうです。

 ―日本からフランスに伝える際、難しかった事柄

 1つ目は、「フランス人が聞く耳を持とうとしない話題について説明すること」だそうです。聞きたくない話題とは、倫理的な価値判断から、たんに文化の違いとして事実関係を知っても理解してもらえない問題のことです。たとえば、死刑の是非をめぐる問題や、従軍慰安婦問題、さらに捕鯨やイルカ漁問題など。これらは全て、何らかの感情や自らの価値観が先にくる問題ばかり。特に慰安婦問題は、マイナスの側面をすでに持っているためとても難しかったそうです。

 そして2つ目は、フランスが直接関わらない日本の二国間外交の問題。たとえば、日中間の尖閣諸島問題やそれにつながる中国の東シナ海や南シナ海における積極的な進出政策について。日韓関係でも同様に竹島の領土問題や、「日本海」呼称問題(韓国では「東海」と呼ばれています)など。これらは全て一見フランスには関係のないように見えるため、フランス人はあまり興味を持とうとはしません。

 しかし、実はこれらの問題にはフランスと接点があるとのこと。まずフランスに輸入される物品の約1/3は南シナ海を経由しているため、中国の海洋進出によって国際関係が不安定化すると、深刻な影響が出てくる危険があるそうです。

 また、日本海呼称問題では日本海という呼称はすでに国際機関が承認している名称のため、フランスのみならず多くの国で使われています。それがいきなり変わり、同じ地名に異なる呼称が使われたりすると、航海などで混乱が生じ、フランスの企業、ひいてはフランス人の生活にも支障をきたす恐れがあるといいます。

 それぞれマイナスの影響を指摘し、日本政府の立場を伝えていくことを心掛けて業務に当たってこられたそうです。


 ―今の日本の若者は内向的だといわれますが、国内外で活躍される松崎さんから見て今の若者をどのように感じますか?

 「今の若者が内向的と言われるのは、昔と比べて随分環境が変わったからです。加えて、昔は現地に行かないと状況がわからないことが多かったです。今は国内にいてもネットで調べたりできますし、外国に行くとテロのリスクもあるので、社会全体であまりリスクを取らない傾向になっていることもあり、いくつかの理由が重なって国内重視型が増えたと思います。
 また、今の若者は器用だと思います。先ほども言ったように、彼らは情報が多い社会の中に生まれてきましたから、どんどん世の中が変化していって、そこに適応するように柔軟な対応をしていると思います。私の世代は、1クラス40人で1学年10クラスある年代だったため、集団主義の中での競争でした。ですが、今は少子化のため、子ども一人ひとりに向けられる時間、そして注目が大きい分、期待もまた大きくなってしまい、打たれ弱い、と今の若者が言われるのはそういうことかもしれません。今は個性が求められている時代のため、自分を持って自分のやりたいことを追求していってほしいと思います。」

 ―最後に外務省職員としての今後の展望をお聞かせください

 「外務省は、2019年と2020年をひとまとまりと捉えています。来年は、新天皇の御即位、大阪でG20サミット、横浜で第7回アフリカ開発会議(TICAD7)、ラグビーW杯、そして再来年にはオリンピック・パラリンピックと各国から多くの方がきます。そのため、専門の事務局もでき、これからの行事に備えています。
 また、政治面では、日本は多国間外交がこれから求められています。日本は二国間外交では存在感を示すことができています。一方、多国間外交になると、他国に押されてしまい、自国の利益と他国との妥協をバランスよく両立することが得意ではありません。その点、フランスは多国間外交でも二国間外交でも上手に立ち回っているので、そうした点は見習って、日本も他の他国との連携を上手く保ちつつ自国に利益をもたらすことができるように改善していきたいです。」

 本日はありがとうございました!

 <感想>

 今回取材に応じてくれた松崎さん。とても気さくでいろんなことをお話ししていただきました。高校の時に思っていた夢を実現し、着実にキャリア形成をし、充実した生活を送っていらっしゃっていて、私たちの憧れのロールモデルですね!!

 外務省職員の方は転職して入省される方多いということや、広報活動で日本に好意的な外国人を増やしていることなど、あまり知られていない外務省の具体的な活動を丁寧に教えてくださいました。またフランスにも日本人より日本の文化を詳しく知っている人が多くいるとのこと、嬉しさとともに国際学部で学ぶ自分たちも日本のことをより深く知り、それを伝えられる人間になりたい、との思いを新たにしました。

 様々な国に派遣され、異なる業務を担当する分、多くの知識や語学力、そして対応力が必要ですが、それが異動後にも役立つため、やりがいと成長を実感できる魅力的な仕事であるとと感じました!


 最後になりますが、大変お忙しい中今回取材に応じて下さった松崎景子さん、取材交渉と仲介をして下さった毎日新聞社の宮川裕章さん、国際学部の西山暁義先生、そして助手の加瀬さん、西村さん、本当にありがとうございました!!


外務省(©Rs1421,wikipedia commons,2012)