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更新日:2018年09月26日

【国際学部】リレー・エッセイ2018(16)高野麻衣子「初めての西部カナダ訪問と現地の病院体験」

初めての西部カナダ訪問と現地の病院体験

高野麻衣子


 私は研究資料を調査するため、ここ数年は毎年夏に1週間程度カナダを訪問しています。国際学部では、カナダの最大都市トロントへ留学する学生さんも多いですが、私がこれまでによく訪問したのは、トロントと同じくオンタリオ州に位置する首都オタワです。国会議事堂や国立図書館等、公的な機関が集中する地域であるため、政治を通したカナダ全体の動きを身近に感じることができます。また、カナダの二つの公用語である英語とフランス語を日常的に見聞きできるのもオタワの特徴です。


 学生時代には、オタワ以外にも留学や旅行で複数の都市を訪問しました。現在、人口の半数以上が外国生まれとなっており多民族社会での生活を実体験できるトロント、フランス語圏のケベック州にあり独自の食文化や芸術で人々を魅了するモントリオール、一日を通して空が真っ青やピンクに見えるほど空気が澄み、スコットランドの文化的特徴も残す東部ノヴァ・スコシア州のハリファックスと、いずれもその地域特有の魅力に触れ、自分の足で歩き、目で見た経験からありのままのカナダ社会を学ぶことができました。


 しかし自分には、こうした生のカナダ体験を欠いている地域がありました。それは、昨年ようやく訪問することのできた西部カナダです。留学する学生さんも多いウィニペグという都市は、まさに西部カナダのマニトバ州にありますが、私が訪問したのは、西に隣接するサスカチュワン州です。サスカチュワンは歴史的に農業を経済基盤としてきた州で、大都市トロントやモントリオール、バンクーバーのような賑やかさはありません。日中のダウンタウンであっても人通りが少なく、良くも悪くも地域の静かさに驚かされました。


市街地の様子


 


しかし、1週間弱の滞在ながら、到着後すぐさま感じられたこの地域の印象は、そこに住む人々がとても親切だということです。例えば、通りがかりの人に道を聞けばとても丁寧に対応してくれます。また、大学図書館での資料収集の際には、私が作業をしている間に、職員の方が近くに来て、問題はないか尋ねてくれたり、また帰国後も、別の職員の方が役立ちそうであればと関連した資料のデータを送ってくれることもありました。このような親切さの背景には、地域全体での精神的な余裕があるのかもしれません。


また、昨年の渡航で私が一番困ったのは、行きの飛行機で航空性中耳炎にかかったことでした。鼻風邪が治っていない状態で国内線の小型飛行機に乗った結果、着陸の際の気圧の変化で耳の中に激痛が走りました。着陸後、片方の耳に膜が張ったような感じになり、翌日もうまく聞こえない状態だったので、このまま過ごしてよいものか、さすがに危機感を覚えました。幸い、宿泊先の真向かいがサスカチュワン大学で、大学病院が併設されていました。海外で病院にかかるのは初めてでしたが、救急外来に行ってみました。


サスカチュワン大学


カナダでは、住民がかかりつけ医を持つファミリードクター制が採られているため、救急外来には新しく移民としてやってきたであろう人々や、私のような短期訪問者が集まり混雑していました。病院では、まず一般的な内診を受けた後、専門の科へ誘導され、より詳しい診察を受けることになりました。私が受診した耳鼻咽喉科には航空医師(flight physician)が勤務していたため、テキパキと診察が進み、薬も処方されました。カナダでは医療費は無料ですが、もちろん私は外国人としての受診になりますので、薬代と併せて10万円程度もかかってしまいました(とはいえ、日本で海外旅行保険に入っていたので、カバーされたのは救いでしたが)。

 カナダに到着早々問題が生じたのは初めてでしたが、そのような状態から始まった私のサスカチュワン滞在は、その後、人々の親切さや温かみにとても救われました。地域の魅力は、必ずしも経済規模や利便性等に限らず、そこに住む人々が培ってきた精神的な豊かさによっても規定されるのだと改めて認識できた渡航調査になりました。大学在学中に、皆さんも(体調管理には気をつけて!)ぜひ様々な国や地域を訪問してみてください。自身の興味関心の幅がぐっと広がると思いますよ。