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更新日:2017年12月25日

【国際学部】リレーエッセイ(27) 鰐淵秀一「ふたつのアメリカ研究」

ふたつのアメリカ研究

鰐淵秀一

 

 「留学を通じてあなたが学んだことは何ですか?」—— 面と向かってそんな質問をされる機会はあまりないのだが、もしもそう訊かれたら「ふたつのアメリカ研究を学びました」と答えようと常々思っている。しかし、おそらく今後も面と向かってそんな質問をされる機会もあまりないだろうから、一体自分が何を言いたいのか、この場を借りて説明しておきたいと思う。

 

 アメリカの大学院に留学して専攻したのはアメリカ史だった。寺地先生西村めぐみ先生もエッセイで書かれているように、アメリカの大学院というところはとにかく勉強させるところで、留学して最初の二年間はとにかく課題の本をたくさん読み、ペーパーを書くという勉強漬けの日々だった。文字どおり朝から晩まで、読んでも読んでも課題の本が読み終わらない、という日々の中で少しずつながら英語を読む力がついたと思うし、計100冊以上の本を読破することでアメリカ史の専門家として不可欠な(最低限の)知識を身につけることもできたと思う。このようにして得た本の読み方やアメリカ史に関する知識は、研究者としてだけではなく、国際学部でアメリカ史やアメリカ文化を教える際にも役立っている。これが留学で学んだ第一のアメリカ研究である。言ってみれば、学問や読書を通じて身につけたアメリカについての知識と言える。

 

 では、ふたつ目のアメリカ研究とは何か?それは実際にアメリカ社会で生活する中で得た「実体験としてのアメリカ」とでも言うべきものだ。留学先の大学院の友人たちからして、そもそも多人種社会アメリカを反映していた。東部の都市部で不自由無く育ち、申し分ない教育を受けたリベラルな白人学生が大多数を占めるアイヴィーリーグであっても、アメリカ史を専攻する院生の中には生まれ育ったコミュニティの中で自分の家族以外はみな共和党支持者だったという中西部出身の学生やLA出身のエクアドル系移民二世の学生、大学院に来る前はバーテンダーをしていたという学生もいたりと、まさにダイバーシティという言葉がぴったり当てはまるような顔ぶれであった。特に、言葉も辿々しい留学生の自分とも気兼ねなくつきあってくれた友人の一人は、アメリカ人の父親と英国籍だがロマ出身の母親を持ち、彼のパートナーはニューオーリンズ出身の黒人の父親と白人の母親との間に生まれた混血という、まさにアメリカという社会の縮図そのもののようなカップルだった。こういった友人たちと話をしたり飲みに行ったりすることで、本やインターネットのようなメディアを通じてではなく、あたかもフィールドワークのようにアメリカを学んでいるような気がした。

 

 また、友人たちに誘われて様々なデモに参加したことも、貴重な経験となった。自分が留学した2011年から2016年にかけては、オキュパイ・ウォール・ストリート運動からBlack Lives Matter運動、ドナルド・トランプ大統領就任反対デモまで、オバマ政権下で様々な社会運動が盛り上がった時期でもあった。研究のかたわら、折を見て友人たちが参加しているこうした集会やデモに自分も出かけていって、コール・アンド・レスポンスに合わせて声を出したり、周囲との一体感を感じることで、自分が歴史的瞬間に立ち会っているかのような錯覚を覚えると同時に、過去のアメリカの社会運動もこんな雰囲気だったのだろうかなどと想像したりした。

 

 こういったことは挙げていけばきりがない。いろんな土地への旅行はもちろん、子供の出産をアメリカで経験したこと、自家用車の後ろにコンテナ車をつけてボストンからワシントンDCまでドライブして引っ越ししたこと、絶対行ってはいけないと言われた貧困地区に迷い込んだこと、あらゆることが自分のアメリカ社会に対する理解を深めてくれた。そして、こうした「実体験としてのアメリカ」が、勉強や読書を通じて知るアメリカの過去や現在の社会と響き合って、自分のなかのアメリカの社会像をより深い、陰影のあるものにしてくれたように思う。おそらく、留学やフィールドワークを経験した外国研究者は、多かれ少なかれこうした体験をしているはずである。

 

 国際学部でアメリカの歴史や文化、社会について教える時、常にこの「ふたつのアメリカ研究」を意識して学生たちに伝えるよう心がけている。教科書や本に書いてある知識だけではなく、実体験に裏打ちされた生きたアメリカ理解を伝えていければと思っている。

 

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