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更新日:2017年11月09日

【国際学部】リレー・エッセイ(21) 平石妙子「もう一つのハワイ」

もう1つのハワイ

平石妙子


 今年の5月にハワイのホノルル国際空港が「ダニエル・K・イノウエ国際空港」という名称に変更されたというニュースがありました。ダニエル・K・イノウエは日系アメリカ人として初めて上院議員となり、長年にわたって活躍したハワイ出身の日系二世です。2012年に88才でなくなった時、ワシントンの大聖堂で行われた告別式では、当時、大統領だったバラク・オバマが感動的な弔辞をささげました。少年時代をハワイで過ごしていたオバマが11才の時に初めて本土に家族旅行に出かけた時に、テレビで見たウォーターゲイト事件の公聴会で次々と鋭い質問をするイノウエのパワフルな姿に強い感銘を受け、それが後に政治家を目指すきっかけとなったと述べていました。


 今回のホノルル国際航空の名称の変更は、イノウエに対するハワイの人々の敬愛の念を象徴するものとして捉えることができます。イノウエが広く名前を知られるようになったのは、第二次大戦中に編制された日系人部隊の第442連隊に志願して激戦区に送りこまれた時代にさかのぼります。多くの日系人兵士が戦死したなかで、彼もイタリアで負傷して右腕を失いながらもハワイに帰還し、その勲功が評価されました。この時の体験から、イノウエは医者になる夢を断念して、アメリカが「一つのオハナ(家族)」となることを願って政界に進出し、その活躍はアメリカ社会における日系人に対する見方を変えるきっかけとなりました。


 ハワイといえば青い空や海といった観光地としてのイメージが強く、日本人にとっては最も身近な外国です。夏が近づくと決まって雑誌でもハワイの特集号が組まれ、ハワイ旅行が様々な形でアピールされます。しかし、ホノルル国際空港の名称変更の例が示すように、ハワイの歴史を辿ると、私たちが抱くイメージとは異なった複雑な歴史がここにもあることを知らされることになります。


 今学期の国際入門演習ではハワイについて書かれた新書(矢口祐人『ハワイの歴史と文化』中公新書)を読んでハワイの歴史を学んでいます。先日はちょうど、1941年12月7日の真珠湾攻撃についてのグループ報告がありました。この出来事について調べた学生からは、ハワイには太平洋におけるアメリカ最大の基地があることを知って驚いたという感想がありました。ハワイの観光地としての楽園イメージとはあまりにも異なった事実を知らされたからです。このように、これまでとは少し異なった観点からハワイについて学ぶことで、もう一つのハワイに触れることができればと願っています。



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