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更新日:2025年12月20日

展示・講演会

【文芸学部】「誌面・Web・イベントへ広がる雑誌編集の仕事」 ──『non-no』編集部 特別講義レポート(メディア文化論A)

 2025年11月、文芸学部「メディア文化論A」(担当教員:橋本嘉代)では集英社『non-no』編集部から、non-noブランド統括/編集長の中川友紀さんとnon-no Web編集長の中込直子さんをゲストにお迎えし、特別講義「誌面、Web、イベント……ますます広がる雑誌編集者の仕事について」を開講しました。

 

 講義の前半では、中川編集長から『non-no』という雑誌の成り立ちと現在のポジションが紹介されました。『non-no』は2026年に創刊55周年を迎える集英社のファッション誌で、現在の主な読者は大学生を中心とするZ世代です。紙の雑誌、Webサイト、SNSを横断する「ひとつのnon-noブランド」として情報発信を行っている点が強調されました。

 

 続いて、最新号の「着回し特集」がどのようなプロセスを経て作られているのか、企画立案から発売までの具体的なスケジュールが紹介されました。企画案の提出、プラン会議、コンテ作成、スタイリスト・カメラマンとの打ち合わせ、数千枚にもおよぶ撮影、写真選び、デザイナーとのやり取り、入稿・校了に至るまで、編集部内外の多くの人々と協働しながら誌面を形にしていくプロセスは、学生にとって新鮮な驚きに満ちたものでした。

 

 中盤では、non-noの記事につけるタイトルを受講生が考え、各自がクリッカーに記入し、その場で中川編集長からコメントをいただくワークも行いました。読者の目線と編集者の目線の違いを体感できる機会となりました。

 

 後半は、中込編集長から「雑誌」「Web」「SNS」それぞれのメディア特性の強みと弱みを補い合いながら、ひとつのブランドとして読者にアプローチしていく現在の編集のあり方が語られました。また、現役大学生約150名が参加する「non-no大学生エディターズ」の存在も紹介され、大学生のリアルな声が誌面やWeb記事づくりの重要なヒントになっていることが強調されました。

 

 質疑応答では、「業界に入る前後のイメージの変化」や「学生のうちに身につけておくとよい力・経験」といった学生からの質問にお答えいただきました。「編集者には何より“しなやかさ”が必要」というメッセージが特に印象的でした。

 

 今回の特別講義は、授業内で扱ってきたメディア文化・ジェンダー・ロールモデルの問題を、ファッション誌という具体的な現場の実践と結びつけて考える貴重な機会となりました。橋本教員からは、「異なる媒体を相互補完的に用いるという考え方はメディア論的にも興味深い。今日は“プロはここまでやるんだ”という仕事への姿勢を知る貴重な機会となったはず」とのメッセージが添えられ、講義は締めくくられました。

 

 受講後のリアクションシートでは、次のような感想が寄せられました。

 

「講義を受ける前は、雑誌編集は楽しそうな仕事というイメージしかなかったが、企画を決めるのに大変な時間がかかることや、読者を引き込むワンフレーズのタイトルを考えることの難しさを実感した」

「雑誌とWebでどう差別化しているかという話が特に印象的でした。Webは“ちょっと読める記事”だと思っていたけれど、むしろマニアックで長い記事も載せられると聞き、新しい視点を得ました」

「1・2月号を前の年の8月ごろから動き出すなど、こんなに早い段階から複数の号を同時並行で進めていると知って驚きました」

「質疑応答では私も質問した『この業界に入る前と入った後の印象の違い』について答えていただき、「仕事の8割は準備と確認」という言葉が特に印象に残った。お二方とも、思ったより地道とおっしゃっていて、雑誌の仕事は華やかな部分が目立ちがちだが、実際はコツコツとした作業の積み重ねが大部分であり、心配性だったり考えすぎてしまう性格も、細かいところまで気を配れる強みになると聞き、とても納得した」

「学生のうちに身につけた方がいいことはなんですかという質問の答えの『しなやかさ』というワードがとても自分自身に刺さりました。マルチタスクに対応できるしなやかさ、新しいことに挑戦するしなやかさなど今の自分には何が足りなくて何が必要なのかというのが分かった気がしました。

今回の講義を受けることができて本当に良かったです」

「小学生の頃から雑誌編集の仕事に憧れていたので、実際に編集長のお話を聞くことができて夢のような時間だった。簡単な仕事ではないけれど、“今”を理解して読者に広めていく役割に惹かれ、将来、雑誌を通して夢や憧れを提供したいと思った」

 

 こうした声からも、学生たちが雑誌編集の具体的なプロセスや、紙・Web・SNSそれぞれの役割、そして編集という仕事のやりがいと大変さについて、多面的に考えるきっかけとなったことがうかがえます。

 

 

 

 

 

 



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