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Vol.29 木村恵子 8回生

Vol.29 木村恵子 8回生

1.自己紹介・職業紹介

高校卒業後、地元の百貨店に勤めた後、料亭に勤めました。昔から和のものに対する興味・憧れがあり、大きな庭園のあるに日本家屋の料亭での仕事は日本情緒にあふれていました。料亭に呼ばれる芸者衆の一流の着物の着こなし、洗練された立ち振る舞いや話しぶり、その場を別世界に変えてしまう三味線や鳴り物の芸は素晴らしいものでした。そこでの八王子芸妓組合長との出会いが花柳界(芸者の世界)に入るきっかけとなりました。
八王子は織物業で栄えた町であり、それと同時に八王子の花柳界も栄えましたが、織物業の衰退と共に、花柳界も下火となりました。昔ながらの芸、身なりや立ち振る舞い、伝統の文化を何とか存続させたいという思いで、芸者の募集から、八王子祭り、様々なイベントなどで幅広く活動をする中で八王子の花柳界は皆さまに注目されるようになったのは嬉しいことです。2001年(平成13年)には独立して置屋「ゆき乃恵」を開業しました。自分の経験を生かして、お弟子さんを募り育てることで、芸を継承しています。
今はインターネットが普及していて何でもネットですぐに検索でき、コミュニケーションがとれるスピード感のある時代。この職業はその時代の流れの逆をいく仕事。日本古来のもの(伝統)を継承しつつ、新しいものを吹き込んでいくことが必要です。古い伝統を自分でどのように咀嚼して、栄養にして発信していくか。そこには工夫・ひらめき・ご縁が大切です。常にアンテナをはっていないと見逃してしまいます。
芸者の仕事は芸を披露することです。日本舞踊の他に三味線、唄、鳴り物(太鼓や鼓)などの他にお茶、着付けなどのお稽古が欠かせず、芸を磨くことが日々の日課になっています。私は22歳で花柳界に入るまではお稽古事の経験がなく、ゼロからのスタートでしたので、今でも日々精進しています。教えて下さる先生方へのご挨拶、感謝の気持ちを持ち、身だしなみや時間を守るということに気を付けています。それは心の修行でもあり、気持ちが前向きに吸収できる状態になるように日々努めています。
芸者の仕事の面白さは、会う人が毎日違う仕事だからマニュアルはありません。人と出会えることに感謝しています。お客様から叱って頂けることにも感謝しています。常に謙虚に初心を忘れずに人とのご縁を大切にしていきたいと思います。

  • 黒塀が有名な通り:八王子中町

2.共立女子第二高等学校の2018年2月14日の高校1年生のロングホームルームにて、芸者という職業について、人生を振り返って女性のキャリアという視点から講演して頂きました。

今回は一緒に、半玉(一人前の芸者さんになるための見習いさん)のくるみさん、まだ入って4か月のてる葉さんの二人の若いお弟子さんもお招きし、教員が司会役となりインタビュー形式で進められました。
芸者さんたちの具体的な仕事内容やこの世界に進むことになったきっかけなど、興味深いお話を聞くことができました。また、めぐみさんの三味線に合わせてくるみさんの日本舞踊“梅にも春”も披露し、解説していただきました。日本舞踊ではお稽古の初めに扇を自分の前に横向きに置いて、手をついて礼をします。これは扇を相手と自分の間の結界ととらえて、自分はその後ろに控えていることで相手に対する敬意を表しています。普段の挨拶の中では扇は使いませんが、心の中に扇があるとして礼をするとよいとのアドバイスを頂きました。礼儀・礼節では形の美しさが大事であり、相手に対する心の中でのけじめを意識することも大切だそうです。

キャリア教育の一環として、好きなことをすることや人との出会いの大切さなど、生徒たちにも分かりやすく心に入ってくるお話でした。礼儀や所作、言葉の美しさがとても重要であることも改めて認識する機会となりました。凛として美しい中にも強さを秘めた姿勢に真の日本女性の姿を見た気がします。生徒たちも日本文化を自然な形で身近に感じられるとても貴重な時間を過ごすことができました。

3.在校生・受験生へのメッセージ

学生時代を目標なく過ごしていても、一つ一つの出会いが重なれば開けてくる時が必ずきます。日本の女性としてのたしなみや仕草、立ち振る舞い、言葉遣い、所作などを「かっこいい」と思って、日々実践して欲しいと思います。共立女子第二高等学校では、茶道・華道・装道の日本の伝統文化を習う「和躾(なごみ)」の日」という行事がありますが、是非実践して、真の美しい女性に育って下さい。

4.プロフィール

八王子生まれ
共立女子第二高等学校8期卒業
22歳で八王子芸妓となる
平成2年に置き屋「ゆき乃恵」を立ち上げる。
小唄 春日流師範
端唄 藤本流師範
舞踊 藤間流名取り
長唄 杵屋名取り
囃子 福原流名取り
茶道 裏千家
現在八王子芸妓組合組合長をつとめる