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vol.24

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

人間力の基礎を育てる「幼児教育」の重要性を知ろう!

2019.06.03

女性であれば多くの人が経験することになる「子育て」。たとえ産まないという選択をしても、親戚や友人など、周囲の子どもと接する機会は少なからずあるものですよね。
 
一方で、女性が子育ての方法や知識を専門的に学ぶ機会は意外と少ないもの。しかし子供の成長過程において年齢や個性に応じた教育ができるかどうかで、その能力や考え方は大きく変わってくるといいます。
 
そこで、共立女子大学家政学部児童学科で将来、教育者を目指す学生たちに向け、教育心理学の講義を行う白川佳子教授に、なかでも重要となる「幼児教育」の重要性や必要となる知識について教えていただきました。

▲白川先生の著書「キンダー まなびきっず」「キンダーブック」(ともにフレーベル館)。言葉や数の学習とともに、思考や創造性も伸ばせる指導本


「小学校に入学するまでの乳幼児期(0〜6歳)は、自主性や主体性、頑張る力、粘り強さといった非認知能力が育つとても重要な時期です。この非認知能力は非常に重要なもので、幼児期の発育が一生を左右するといっても過言ではありません」
 
こうした非認知能力は、小学校以降で習う算数や国語、理科、社会など、知識や数字を習得していく認知能力の発達にも大きく関わってくるそう。
 
「たとえ勉強でわからない問題に直面しても、粘り強く取り組むことの楽しさを知っていれば、投げ出しづらくなります。これは社会人になって、仕事に取り組む際も同様ですね。幼児期に、幼稚園受験や小学校受験に備えた認知能力の育成ばかり行ってしまうと、非認知能力が充分に育たないリスクも生まれます」
 
幼児期でしっかり非認知能力を伸ばすためには、本人の好きなようにのびのびと遊ばせて好奇心を刺激してあげることが大切なのです。
 
「保育園や幼稚園の保育者は、こうした非認知能力を育てるための教育知識を大学時代にしっかり学びます。そして教育の現場では、子どもたちが自らの意志で、探究心を持ってのびのびと自分の好きな遊びに取り組むための環境づくりが行われています」
 
たとえば子どもが縄跳びに挑戦する場面などでは、『すごいね、よくできたね!』といった成果重視の褒め方をしがち。しかし大切なことは、大人が課した目標を達成できたかどうかではなく、本人が縄跳びに取り組んだことそのものです。
 
「『何回も取り組めたね』『さっきよりも飛べるようになったね』とスモールステップを評価してあげることで、子どもは自ら取り組むこと、粘り強く頑張ることが楽しく、大切なことであると感じるようになります」
 
こうした声がけは、非認知能力を育てるためにとても大切なものなのだとか。さらに子ども目線に立って本人の興味や思考を深めていくためにも声がけが役立つといいます。
 
「たとえば、深海魚に興味を持った子どもがいれば、『なんでお魚は下に沈むんだろうね?』『ほかにも水に沈むものってあるかな?』といった声がけを行ったりします。“なぜ、この子は深海魚に興味を持ったのか?”と、子どもの目線に立ち、思いを馳せていくことで、よりよい声がけを行うことができるようになります」
 
しかし、こうした非認知能力を育てるための環境づくりは、幼児教育の専門知識のない保護者に簡単にできることではありません。
 
「加えて、本人の個性や特性を理解して、子どもそれぞれに適した教育を行うことが大切になりますが、親の力だけで子どもの性質や思考を正しく理解することは難しいもの。子どもに対してはつい親の理想を投影してしまいがちです」
 
そのためにも幼稚園や保育園の先生たちとコミュニケーションをとりながら、子どもの発達を見守ってあげることが大切、と白川教授。
 
「お母さんたちが教育者を目指すのではなく、先生たちと連携しながら子どもの発達を見守っていくことができればいいのです。現在は幼稚園や保育園での幼児教育が必須とされ、2019年10月から3歳以上の子どもに対して『幼児教育・保育無償化』も実施されることが決定しています」
 
このような幼稚園や保育園での自主性や主体性を伸ばす教育は、平成元年に改定された「幼稚園教育要領」以降に重要視されるようになったのだとか。それまでの教育現場においては、自主性よりもマナーを守ることや先生の指導に従うことが重要だったのです。
 
「先生の言うことを聞く子がいい子、という感覚が日本の伝統的な常識としてありましたが、そうした受け身の能力だけでは国際社会に順応できません。AIやテクノロジーの進化によって、今後、働くことの意味や定義も変わっていくことが予想されるなか、自主性や創造性のある人間になっていくことがますます求められています」
 
こうした流れを受け、幼稚園だけでなく小学校や中学校、高校の教育要領も一斉に刷新。知識重視の教育から考える力を育てる教育へ変わりつつあるのだとか。
 
お母さんたちも次世代に向けた柔軟な子育てが求められているのかもしれませんね。

取材にご協力いただいた先生はこの方!

共立女子大学 家政学部 児童学科

白川佳子 教授

専門分野は臨床発達心理学、教育心理学、発達心理学、保育学。幼児のジェンダースキーマ、幼小連携、スクールカウンセリングについても研究を行う。

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