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vol.18

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

安全で快適な家や街って、どんなもの?

2018.07.13

私たちの暮らしに欠かすことのできない、家。
 
時とともにその姿は進化を遂げ、いまや100m越えの高層タワーマンションにも多くの人が暮らす時代になりました。また住宅地だけなく、街や商業地も変化を続け、日本の都市景観は大きく様変わりしています。
 
こうした建築の進歩とともに、利用者が快適で安全に過ごすためのさまざまな“きまり”や“くふう”が多く作られてきました。皆さんは自分の家や街のキホンとなっているこれらの知識ついてどれだけ知っているでしょうか。
 
知っておくべき建築のキホンについて、共立女子大学家政学部建築・デザイン学科で、建築を教える堀 啓二教授にお話を伺いました。
 
「家づくりの詳しいことは専門家に任せるべきだと思う人も多いかもしれません。もちろん専門家がいなければ家をつくることはできませんが、実際に利用する皆さんも家や街がどんなルールに基づいて作られ、周囲の環境にどのような影響を及ぼしているか意識することはとても重要なことです」
 
建築のキホンを知ることは、自分の家をよいものにするだけなく、住む街や都市、ひいては日本を快適で魅力的な環境にしていく第一歩になるといいます。
 
「日本の法律では、安全な建物をつくるためのさまざまなきまりが存在しています。もっとも基本的な法律が『建築基準法』です。地震大国であり、風の影響も受けやすい島国・日本は、木造住宅も多く、火事による延焼のリスクも高いのが特徴です。建築基準法では、地震や火事に対する耐久性や安全な避難経路に関するきまりに加え、快適に生活する上で理想とされる採光基準や換気基準などについても定められています」
 
また街を守るため、エリア分けや建物の種類、大きさ、高さ、街自体の防災機能のきまりも決められているそう。
 
「建物を建ててよい市街化区域と建物を建てるのを抑え自然を多く残す市街化調整区域をきめた『都市計画法』や、住居エリア、商業エリア、工業エリアに分けて街を整理する『用途地域』など、街づくりにはさまざまな経済活動を円滑に行うためのくふうが凝らされています」
 
当たり前のように街に存在する多くの建物は、こうしたさまざまなきまりのもとに作られています。もし、大きさや場所も無秩序に建物を建ててしまったら、街の環境は乱れ、住みにくい場所になってしまいます。
 
「住宅においては、周囲に住む人々の生活環境を守るための形態規制というきまりがあります。北側にある家の日当たりを守るため、北側に傾斜をつけるきまりの『北側斜線』や、敷地のなかで建物の比率を制限する『建ぺい率』などは、知っている人も多いかもしれません」

▲堀教授の著作である子ども向けの絵本『家づくりのきまりとくふう』(著・堀啓二/インデックスコミュニケーションズ)で紹介している住まいづくりのきまり


実際に建築のデザインを行う堀教授は、住宅建築において施主も一緒になって家づくりを行ってほしいと思っているそう。自分の心地よい生活空間を作っていくと同時に、自分の住まいが街にどのような影響を与えるのか気を配っていくことができれば、住みやすい街になっていくといいます。
 
「住まいとコミュニティの関わりも住み心地に大きく関係しています。江戸時代から大正、昭和と戦前までは、街や商店街全体が一つのコミュニティとして、みんなの生活の場として強く機能していました」
 
ところが戦後の高度経済成長以降、とくに都心では核家族化が進み、地域のつながりは希薄に。
 
「地域コミュニティの衰退は長らく問題になってきましたが、昨今はITの発達も手伝って、家で仕事や趣味をする人も増え、自宅に仲間を呼んだり、地域とつながりを持ちたいと思う人も増えつつあります。家の開口部をオープンスペースにして作業場所にするなど、街や地域とつながりを持てるデザインを望む人が現れています」
 
いずれは皆さんも一軒家を建てたり、マンションを購入する日が来るかもしれません。そうしたときに、安全性の確認に加え、地域とどれだけつながりを持てる家にできるのかもぜひ、考えてみてください。
 
堀教授が著した子供向けの絵本『家づくりのきまりとくふう』は、家づくりや街づくりで知っておくべき知識をわかりやすく解説しています。ぜひ、読んでみてくださいね。

取材にご協力いただいた先生はこの方!

共立女子大学 家政学部 建築・デザイン学科

堀 啓二 教授

建築家として住宅建築を行う一方、共立女子大学では、家政学部 建築・デザイン学科で教鞭をとる。従来は別々に扱われてきた「建築」と「デザイン」を一貫したものと考え、授業では学生の両方を学んでもらう試みを行っている。神保町活性化のために授業で学生と考案したゆるキャラ「じんぼうチョウ」も好評。

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