130th ANNIV. SPECIAL WEB MAGAZINE Advance! キャリア形成と自立志向を「ジブンゴト化」するウェブマガジン

vol.7

卒業生の社長にインタビュー!

共立社長のオキテとホンネ

「現状を見つめるだけでなく、解決策を考えることが大切」/小方真弓さん

2017.04.25

“カカオハンター”という、珍しい肩書きで活動する小方真弓さん。コロンビアを拠点に、希少なカカオを求めて山の奥地までハンティングに出たり、チョコレートプラントで夜を徹してチョコレートを作ったり、その実情は、謎だらけです。そこで小方さんに、コロンビアに移住するまでの話や、現地での仕事ぶりなどをお聞きしました。

カカオハンター

小方真弓さん

共立女子大学家政学部食物学科(現・食物栄養学科)卒業後、チョコレート原料メーカーに入社。仕事の傍ら、カカオ・チョコレートの勉強をするため世界を旅するように。28歳の時、フリーランスとして独立。2010年よりコロンビアの企業 Cacao de Colombia S.A.S の共同経営者兼研究開発ディレクターとして経営参画、2011年からは本格的に活動拠点を移し、現在は大半を南米で過ごす。2013年12月にコロンビアにチョコレート工房を設立、2016年に工場(プラント)へと新設。また、2016年12月に立ち上げた「Cacao Hunters Japan 株式会社」の代表も務める。カカオの栽培からチョコレートの開発、製造までを一貫して行う。

カカオを探求するために、退社
フリーで活動しながら、世界中を旅する

――6年間、チョコレート原料メーカーに勤務していた小方さん。カカオへの強い思いに突き動かされ、会社員をしながら独自にカカオやチョコレートについて学んでいたそうです。
 
「入社して3年が経った頃、セールスエンジニアとしてお客様へさまざまな説明するポジションになりました。でも、わたしはチョコレートの説明はできても、原料のカカオのことは何も知らなかったんです。それに気付いてからは、カカオについて独自に学びました。書籍や文献、ネットでカカオのことを知れば知るほど、自分の目で確かめたい、触れたいという欲求が高まり、結局、会社を辞めてしまいました」
 
――退社後、小方さんはフリーランスでチョコレートのコンサルティング業を営みます。人伝いに小方さんの活動が話題となり、世界で仕事をする機会に恵まれたそうです。
 
「日本国内では、大手製菓メーカーさんで新規事業の立ち上げや、チョコレート輸入会社で販売指導業務などをさせていただきました。これらのチョコレート関連の仕事で得た収入は、すべて、カカオを学ぶための費用に充てました。世界14カ国を旅して、多くの出会いがありました。偶然にも日本のNGOの依頼で、アジア開発銀行が支援していたインドネシアのチョコレート生産者へ製造指導のために行ったり…。些細な縁から、国内から世界へ、徐々に活動範囲が広がっていきましたね」

▲コロンビアにて、カカオの品種を説明する小方さん


――独立当時は、英語もほとんど話せなかったという小方さん。現地の人とコミュニケーションをする時、言語の代わりになったのは“技術力”だったと話します。
 
「カカオからチョコレートまでを開発・製造する技術、テイスティングの能力、そして、それらを数字で説明できるスキル、これが私の武器になりました。例えば、現地の生産者に改良点を説明する時、現状分析と目標設定を数字で示すと話が早いんです。数字は万国共通ですから。カカオ生産国に足繁く通い、生産者に会って、少しずつ築いたコミュケーション方法ですね」

コロンビアで求めていたカカオを発見!
日本での仕事を辞め、移住を決意

▲小方さんがさらりと語る話は、どれも世界につながるストーリーばかり


――カカオを探求し生産者へ指導を続ける中で、小方さんは偶然、コロンビアに渡ります。後に移住を決意しますが、そのきっかけは、あるカカオとの出会いでした。
 
「2009年9月にコロンビアのカカオ産地を訪ねたのですが、帰国してから世界のカカオの分布図のようなものを見ていて、ずっと求めていたカカオブランコ(ホワイトカカオ)が訪れた地域の近くにあるのではないか、と思い始めました。その後4ヶ月間日本からコロンビアへ連絡を取り続け、そのカカオを山の奥へ探しに行く準備をして、2010年1月に再びコロンビアへ戻ると…案の定、カカオブランコがあったんです! その他にも、非常に興味深いカカオが沢山。当時、希少なカカオがあることが国内であまり知られていないくらい、コロンビアのカカオ&チョコレート産業は開発の余地がありました。『てこ入れをしたら、面白いだろうな』と直感。スペイン語はカタコトでしたが(笑)、日本での仕事をシフトしながら、拠点をコロンビアに移しました」
 
――2012年には、年間のうち10カ月もコロンビアで過ごすようになっていた小方さん。具体的に、コロンビアでどんな仕事をしているのでしょうか?
 
「メディアでご紹介頂くようなカカオ探しも重要ですが、それ以外にも色々なことを行っています。一番大事な仕事は、カカオ農家が栽培しているカカオを識別(生産者が品種の価値を理解していないことが多いため)すると同時に、その栽培指導し、品質と同時に生産者のモチベーションと生活向上を計ることですね。また、現地にチョコレートプラント(工場)を持っているので、カカオからチョコレートまでの一貫した開発・生産を行うことです。併せて『カカオの学校」を立ち上げたので、そこではカカオの品種や発酵研究もしています。まだいろいろありますが、“コロンビアのカカオはポテンシャルが高い”という付加価値を付けるために、カカオ&チョコレートに関するすべてのことに関わっています」
 
――寝る間を惜しむほど、コロンビアのカカオ&チョコレート産業を良くしようと尽力している小方さんですが、その原動力とは?
 
「カカオの世界を初めて見た時、大きな衝撃を受けました。チョコレートを作る側のわたしは世界を見てまわれるのに、原料を作っているカカオ農家はそうすることもできなければ、市場の情報すら入らず、そのカカオの価値を自分たちで決めることも殆ど出来ません。南北経済の格差ですよね。ですから、彼らが良質なカカオを作り、それを私たちがチョコレートとして道を作ることで、彼らをその先の世界まで連れ出したかったのです。昨年、先日とその夢の一部を実現し、生産者のリーダーたちを日本に招待することができました。自分が生産したカカオが認められていると知りとても喜んでいましたが、彼ら以上にわたしは、もっとうれしかった! それが、原動力かもしれません」

▲コロンビア南部トゥマコのカカオ農家の皆さんと小方さん

不平不満を抱いたら、
現状を変えることが、目標への近道

――文化も習慣も全く違う海外で、目標を持ち力強く生きる小方さんから、社会を生き抜くためのアドバイスをいただきました。
 
「“やりたいこと・やりたくないこと”と“できること・できないこと”を認識することが大事だと思います。目標を持って進んでいても、現状に満足できずに不平不満を持つこともありますよね。そういう時は、“知識”“人との出会い”そして“継続するためのエネルギー”を力に、現状を変えることが必要です。継続するためのエネルギーは、“自分がやりたいこと”であれば、自然と沸いてくるもの。“やりたいこと・やりたくないこと” “できること・できないこと”を認識していれば、くじけずに目標まで歩んでいけると思いますよ」
 
――また、 “女性”に対するネガティブなイメージに捉われないことも大事だと話します。
 
「海外に住んでいると特に思いますが、日本の女性は自分のことを“女性”と思いすぎているかもしれないですね。男性だから、女性だから、といった観念に固執する必要はないと思います。それぞれの個性として得手不得手はもちろんありますが、働く上で女性・男性のボーダーラインはないはずです!」
 
――最後に、学生の皆さんへメッセージをいただきました。
 
「日本に帰国したとき、各地でセミナーをさせていただきますが、『どうしたいか分からないから、教えてほしい』という相談を受けることがあります。日本の女性は、現状を見つめることはできても、その先に行けない人が多いのかなと感じています。そんな時は“考えて”ください。わたしは考えることの楽しさを大学で学びました。そして、考えるとその先に、必ず、解決策がありました。皆さんも時にはじっくりと考えながら、自分らしい人生を歩んでほしいですね!」
 
――豊富な経験が自信となり、自分の考えを明瞭に表現できる小方さん。そんな彼女の言葉ひとつひとつが、力強いエールになりました。貴重なお話、ありがとうございました!

▲久しぶりの母校訪問に「こんなキレイな校舎ができたんですね。びっくり!」と小方さん

小方さんの1日スケジュール

小方さんがチョコレートプラントに勤務する日とカカオハンティングの日、それぞれどんな風に過ごしているかを聞いてみました!

「プラント勤務の日もカカオハンティングの日もスケジュールは、いつもまちまちです」と語る小方さん。カカオハンティングの日の食事を聞くと「生産者が栽培しているバナナやオレンジ、ユカ芋を食べたり…。山や畑ですから、何かしら食べられるものはありますよ!」とたくましい返答が…。そんな小方さんの平均睡眠時間は、なんと、3~5時間とのこと! 「病気は、ほとんどしません」と言い切る彼女ならではの、超人的なスケジュールなのかもしれません。

おすすめ連載

一覧を見る