130th ANNIV. SPECIAL WEB MAGAZINE Advance! キャリア形成と自立志向を「ジブンゴト化」するウェブマガジン

vol.2

卒業生の社長にインタビュー!

共立社長のオキテとホンネ

「異性と張り合ってはダメ。大切なのは自分の役割に気付き、行動すること」/吉本桂子さん

2016.12.12

G7伊勢志摩サミット2016やJAL国際線ファーストクラスなどで愛飲されている、高級茶を製造・販売しているロイヤルブルーティージャパン。2007年から自社一貫開発製造販売している高級ボトリングティー(水出し高級茶飲料)という全く新しいアプローチで、日本のお茶産業のイノベーションに挑む吉本桂子社長に、仕事への情熱と女性が社会で輝く秘訣を教えてもらいました。

ロイヤルブルーティージャパン株式会社 代表取締役社長

吉本桂子さん

共立女子大学家政学部生活美術学科卒業後、フリーのグラフィックデザイナーとして活動。2006年、高級茶を開発・製造・販売する「ロイヤルブルーティージャパン株式会社」を佐藤節男氏と創業。07年「ROYAL BLUE TEA」を正式に発売し、同年から3年連続で、ベルギー・モンドセレクション金賞を受賞する。11年より、日本航空国際線ファーストクラス全便搭載。13 年、DBJ女性起業大賞(日本政策投資銀行主催)を受賞。16年12月23日より、ボトル1本60万円の「HOSHINO Super Premium」の受注生産(先着6本/販売エリア:日本、シンガポール、香港)を開始。

中国茶の美味しさに心を奪われ、転職を決意!

――共立女子大学の家政学部を卒業後、地元・藤沢でグラフィックデザインの仕事をしていた吉本社長。お茶の魅力に心のすべてを奪われたのは、佐藤節男さん(現:ロイヤルブルーティージャパン会長)が主宰していた、ティーサロン・茶聞香(ちゃもんこう)との出会いがきっかけでした。
 
「お店では、コースの料理に合わせて、味と香りの異なる中国茶が5種類ほど振る舞われたのですが、ペットボトル入りのお茶とは別物! その美味しさに心から感動しました。同時に、お茶が料理を引き立てているということに衝撃を受けました。“料理とお茶のマリアージュ”と言うのでしょうか。よくお酒を愉しまれる方は、『この料理には、このお酒が合うよね』などとおっしゃいますが、その感覚が初めてわかったのです。外食のゆったりとしたひと時を満喫できたのも、この時が初めて。レストランの“レスト(くつろぐ)”の意味を、身をもって知りました」
 
――お茶の素晴らしさに開眼した吉本社長は、その感動を佐藤さんに興奮気味(!)に伝えたそう。友人と何度か足を運ぶうちに、『私の仕事を手伝ってくれませんか?』と声をかけられて、二つ返事で引き受けたといいます。
 
「それから茶聞香をはじめ、映画館、住宅展示場などに出向いて、1年かけて1万人にお茶を淹れました。お客様と接するなかで感じたのは、お茶の素晴らしさが浸透しないのは、本物が伝わっておらず、スタイルが今様になっていないからではないか、ということ。具体的には、急須で淹れるという過程がスピードを求める今の時代に合っていないと感じていました。お茶の感動を伝えると同時に、仕組み(様式)そのものをデザインしていけば、お茶の文化を次世代に繋げられるのではないか。デザイナーとして、ずっと探していたデザインモチーフを見つけた瞬間でもありました」

“高級茶市場は必ず開ける”
そう信じ、ワインボトル入り高級茶で勝負

――そうして日本のお茶業界へのイノベーションを掲げ、2006年にロイヤルブルーティージャパンを創業。「手摘み茶葉から水出ししたお茶をワインボトルに詰めて販売する」というこれまでの業界の常識では考えられない方法を採用して話題となりました。
 
「水出しにこだわったのは、いつでも、どこでも、安定した風味のお茶をお届けできるから。また、急須も(お茶を淹れる)技術も必要ないですし、現代のスタイルに合っているのではないかという狙いもありました」
 
――ロイヤルブルーティージャパンのお茶は、ボトル一本2800円から、最も高額なもので60万円のものまで! 高級茶にこだわったのは、なぜですか?
 
「この業界に入った時、ペットボトルのお茶が普及しているのだから、お茶農家は潤っていると思っていました。しかしその逆で、安価で効率のいい機械摘みに押され、コストがかかる手摘みのお茶がほとんど売れなくなっている。多くの人に本物の日本茶の価値を知ってもらいたいと思い、高級茶をプロデュースすることにしたのです」
 
――創業時、「10年間は仕事にすべてを注ごう」と覚悟を決めていたものの、経常黒字にこぎつけるまでに7年間要したそう。その間、販路を増やすために行った営業先で、お茶を灰皿に流されるなど、悔しい思いをしたことも多々。
 
「初めから理解を得られるとは思っていなかったので、思い詰めたりはしませんでした。本当の試練は、東日本大震災のとき。風評被害や贅沢品の買い控えにより、売り上げが前年の2分の1程度に落ち込んでしまい、倒産寸前に追い込まれてしまったのです」
 
――そんな苦しい時代を支えていたのは、経営者としてのある想いでした。
 
「これまでお酒を飲めない人が料理とともに楽しめる、格調高いノンアルコールドリンクはなかった。だからこそ、選び抜いた特別なお茶を提供すれば、お酒を飲まない人の需要に応えられる。“高級茶市場は必ず開ける”と確信していたので、辛くても諦めることは考えませんでした。その後もブランドイメージを守るために、クオリティや値段を下げずに売り続けたことで、なんとか危機を乗り越えました」

▲ワインボトルに入れたのは、品質管理とお茶こそ天地人であることを伝えるため。「高級感を出したくて、入れているわけではないんですよ(笑)」(吉本社長)

協調性、多様性に優れた
女性だからこそできる“役割”がある

――現在では吉本さんのお茶は、日本航空の国際線ファーストクラスをはじめ、有名ホテルや旅館、ミシュランの星を持つレストランなどで提供されています。成功した一番の理由は何だと思いますか?と聞くと、「品質管理を徹底したことですね」とにっこり。
 

「皆さまに信用していただくため、品質管理はすべての基本。そのため、自社工場では“凡事徹底”(ぼんじてってい)を理念に掲げています。爪ブラシで入念に洗い、トイレに行くときは白衣を脱ぐなど、当たり前のことを手を抜かずに一貫して行います。この“凡事徹底”は、弊社の採用基準のひとつ。一見華やかな世界に見えますが、地味な作業のほうが多いですから(苦笑)。どのような仕事でも、コツコツと真面目に取り組んでもらえる方と働きたいなと思っています」
 
――未開拓の市場に挑み、自らの手で人生を切り開いた吉本社長。そんな吉本さんが考える“自立した女性”とは?
 
「“世の中における自分の役割”に気付いて、行動している人。役割とは、使命、ミッションとも言うのかな。私の場合、多くの人に本物のお茶の価値を伝え、新しいお茶文化のスタイルを根付かせていくことだと思っています。役割は仕事だけではなく、家庭でもそう。子育てに奔走することだって、社会全体でいえば、次世代を担う人材を育むという大切な役割を担っているのですから」
 
――“自分の役割”に気付くためには、大学在学中の過ごし方も大切だと言います。
 
「“感度”を高めるためには、まずは興味のあることにトライして、本物を見る目を養うべきです。同時に質の高い友人に出会えるよう、交友関係を広げていくのも大切。人生の同志となる友人は、刺激を与えてくれますし、時に人生の道しるべになることも。そういう私も、共立時代の同級生が早くに起業していたので、彼女の存在に背中を押されて、会社を設立したというのもありまして(笑)」

▲創業時より、SGS-HACCPという国際食品安全システムの国際認証を取得。また、最高品質を保つために、手摘み茶葉しか使用しない


――インタビュー終了後、「すみません。もうひとつだけ、お話してもいいですか?」と吉本社長。最後に、女性が社会で輝ける秘訣を教えていただきました。
 
「すべての人に当てはまるわけではありませんが、女性が集中して働くことができる期間は、20代から30代の10年間程度です。加えて女性は男性に比べて、結婚、妊娠・出産、夫の転勤、親の介護など、環境要因に人生を左右されやすいといえます。このように抱える条件が違うのだから、男性と張り合ったり、同じ役割を果たそうとするのではなく、協調性、多様性に優れた女性だからこそできる役割を見つけてほしいですね。そしてどこでも通用するスキルを身につけて。そうすれば、どんな環境でも輝けるはずです!」
 
――多忙にも関わらず、ひとつひとつの質問に真摯に向き合ってくれた吉本社長。会社の方針でもある、凡事徹底の精神が根付いている方だと思いました。今回は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

おすすめ連載

一覧を見る