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vol.13

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

皆さんは情報を“見極める力”、持っていますか?

2017.11.17

様々な情報が飛び交う現代において、目にする情報が本当に信頼できるものかを“見極める力”は非常に重要になっています。
 
授業で英字新聞を使ってリアルタイムな政治経済ニュースを取り上げ、卒業後に社会で活躍する学生に“情報を見極める力”を伝える、共立女子短期大学の文科 鶴田達成准教授に情報との付き合い方に関する心構えを伺いました。
 
「2016年、イギリスのオックスフォード英語辞典が“今年の言葉に、『post-truth』(ポスト・トゥルース)を選んだことをご存知でしょうか。アメリカ大統領選挙の時の偽ニュースやトランプ氏のツイッター発言などの影響で、『“客観的な事実”よりも“感情や個人的な信念への訴えかけ”の方が世論形成に大きく影響する状況の』という意味で使われるようになった英単語です」
 
この単語は、自分が好む情報は真偽を問わずに鵜呑みにし、好まない情報には背をそむけ、共感できるかどうかが優先されるという状況を表すときに使うのだそう。インターネットが台頭し、誰でも簡単に情報を発信できるSNSなどのメディアが多くの人に使われるようになったために生まれた言葉と考えられています。
 
「世界主要国 価値観データブック」(電通総研、日本リサーチセンター 編/同友館)によれば、新聞・テレビに対する信頼度の統計で、アメリカ人の多くが「あまり信用しない」「ほとんど信用しない」と回答しているのに対し、日本では7割以上の人が「非常に信頼している」「やや信頼している」と答えています。
 
「『post-truth』の流行は、既存メディアの報道に対する懐疑的な態度の反動で、新しいネットメディアの特定の情報を感情的に受け入れるようになってしまった状況を表しているのだと思います。一方、日本では新聞やテレビの情報を信頼している人が多いのですが、日本のメディアでも真実が報道されているとは限りませんし、偽ニュースも話題になっています」
 
いまや情報の真偽を疑う姿勢は、社会人として必要なことといえるようです。いったい、どうすれば見極める力をつけることができるのでしょうか。
 
「まず初級レベルとしては、客観的な事実と主観的な意見を区別することが重要です。たとえ発言者が断言しても客観的な事実に基づかない情報は疑うべき。また、根拠を確かめることも重要。なかでもインターネットは情報源が不確かなものも多く、発信者が匿名の場合は特に注意が必要です。同じニュースでも、テレビや新聞などの他のメディアでどのように報道されているのか、内容を比べるのもひとつの方法でしょう」
 
新聞やテレビでは、校閲・チェック機能がある程度働いているため、間違った報道をした場合は後で訂正されることも。そのため、すぐに情報が掲載されるネットメディアよりも信頼度は高いのだそう。しかし新聞やテレビにも誤報はあると思っておいたほうがよいのだとか。
 
「新聞やテレビの誤報をチェックするために、私は日本報道検証機構が運営している『GoHoo』というウェブサイトをよく見ています。また、日本の大手メディアの問題点として、記者クラブの存在があります。記者クラブは日本独特の閉鎖的な制度で、加盟する報道機関が特権的な扱いを受け、政府や省庁から情報を得る機会を独占しています。情報を得やすい反面、取材対象との距離が近く、政府や省庁が記者クラブメディアを使って情報をコントロールしやすいという側面があるのです」
 
こうした仕組みにより、日本では独自に取材をして真実に迫るジャーナリズムの姿勢があまり成熟していないのだとか。また、無難な事実だけが報道され、取り上げられない事実があったり、テレビや新聞で専門家が利害関係の立場に沿って発言し、真実を語らないこともあるそう。
 
「福島原発事故の直後、原子力の専門家が事故を過小評価する発言をしていたことが記憶に残っている人も多いはず。こうした情報に疑問を持ったら、利害関係がないかを確認してみるべきです」
 
しかし、公的機関の情報を疑って真実を突き止めるのは至難の技。いったい、どうすればいいのでしょうか。
 
「多様な情報源を確認して、報道されていない事実にも注意を向けてみましょう。たとえば数紙の新聞を読み比べてみると、ある新聞に書かれていないことが他紙には書かれていたりします。そうしたことがあると、書き手の主張や受け手の印象も大きく異なることがあるのです。新聞社のウェブサイトなら、大きなニュースは閲覧できますので見比べてみてください。また、記者クラブに所属していない独立系メディアやフリージャーナリスト、海外メディアの報道などから、新たな客観的事実や異なる視点を得るのも方法のひとつです」
 
海外の新聞やテレビで、国内メディアでは報道されないような日本の事実や社説が掲載されることも。英字新聞を読めるようにしておくことは、情報を見極める際に役立つ能力といえるでしょう。
 
「ただ、若い世代は新聞やテレビを見る機会が減り、情報自体を知らない人や時事問題に関心がない人も増えています。授業では、視点が異なる多様な報道を比較検討する必要性だけでなく、少子高齢化社会の日本で若者の人口が減っている上に若者の投票率も低いため、政治に若者の意見を取り入れられにくくなっていることや政治経済に関心を持つ必要性なども伝えています」
 
皆さんは、日々どのように情報と向き合っていますか? この記事をきっかけに、ぜひ様々な情報に触れ、“見極める力”を身につけていってくださいね。

取材にご協力いただいた先生はこの方!

共立女子短期大学 文科

鶴田達成 准教授

研究分野は英語学。日米関係やジャーナリズムについても研究中。

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