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vol.4

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

流行りの“糖質制限ダイエット”って、ほんとは体にいい?悪い?

2017.01.17

いま、巷で一世を風靡している「糖質制限ダイエット」。白米やパンなどの炭水化物や根菜類、お菓子といった“糖質”を制限する減量法のことです。糖質を一切摂らず、脂質とたんぱく質のみの食事を推奨する極端な糖質制限も話題になりました。
 
でも、三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)のひとつをまったく摂取しないなんて、体に害はないのでしょうか? 共立女子大学家政学部食物栄養学科で栄養の研究を行う、吉浦健太教授にお話を伺いました。
 
「そもそも、20代の日本人女性で健康面からダイエットによる減量が必要な方は、とても少ないといえます。2015年の国民健康栄養調査(厚生労働省調べ)によれば、肥満度を表すBMI値が25以上(肥満)の20代女性は、たった10%程度。一方、BMI値が18.5を下回る痩せ型の20代女性はおよそ22%にのぼります。それでも外見を気にして痩せたいと願い、ダイエットを行うのであれば、健康を害さない正しいカロリーの減らし方を知っておくべきでしょう」(吉浦先生)
 
そこで、ダイエットをする上で知っておきたいのが、「摂取カロリー < 消費カロリー ⇒減量」という原理。人間は普段、食事で摂取した糖質をすぐにエネルギーに変換して使用していますが、不足すると体に蓄積された脂肪を燃焼してエネルギー源にします。
 
糖質制限ダイエットは、この原理を基本に、食事から摂る糖質を減らすことで体の余分な脂肪を燃焼させる減量法なのです。ゆえに糖質をゼロにして、早く痩せたいと思う人が多いようですが、じつはこのやり方が体に大きな負担をかけてしまうのだとか…。
 
「20代女性に必要な1日の摂取カロリーは2000kcalで、三大栄養素の理想の配分は、糖質50〜65%、脂質20〜30%、たんぱく質13〜20%と言われています。日本人は、間食の甘い物や甘い飲料などによる糖質摂取過多の傾向があるので、糖質を適正量までカットしてカロリーを減らすことは問題ありません。しかし減らしすぎれば、糖質だけをエネルギー源にする脳が働かなくなって、ひどい場合はめまいを引き起こしたり、脂質やたんぱく質を必要以上に摂取してしまい、健康に害が及ぶ可能性があります」
 
糖質ゼロは、やはり問題があるようですね。また、糖質をゼロにしてたんぱく質や脂質を増やすダイエット法もありますが、これも健康被害の原因に。では、脂質やたんぱく質を減らした場合はどうなるのでしょうか。
 
「筋肉や骨など、体の組織を構成するたんぱく質や、保存に適したエネルギー源(利用するのに時間を要する)であるばかりでなく、細胞膜やホルモンをつくる材料でもある脂質が不足すると、貧血、免疫力の低下、脳や各臓器の機能が低下して、疲れやすく、風邪をひきやすい体になります。
 
また、女性ホルモンの分泌低下や筋肉量の減少で新陳代謝が低下して、より痩せにくい体になってしまうんです。加えて、若いうちに骨、筋肉を発達させておかないと、高齢になった時の衰えが早まり、骨粗鬆症、ロコモティブ症候群になるおそれが大きくなると考えられます」

栄養バランスの輪

▲人間の体に必要な栄養バランスを表したグラフ。円の中心には、欠くことのできないビタミン、ミネラル、外殻には主要エネルギー源の糖質、脂質、その内側に体を造るたんぱく質が配置されている。食物繊維は糖質と合わせて炭水化物に分類されるが、低カロリーで整腸作用があるためダイエットの時は積極的に摂りたい


三大栄養素はどれも体に必要なもの。もしゼロにしたり、減らし過ぎれば、目の前の健康を害するだけでなく、将来の健康までも失うことになりかねません。
 
糖質制限ダイエットに限らず、食事制限をする場合は三大栄養素やビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることを心がけ、積極的に運動をし、十分な睡眠をとり正しく健康的に痩せるという意識を大切にしましょう!

取材にご協力いただいた先生はこの方!

家政学部 食物栄養学科

吉浦健太 教授

長年にわたり、栄養学、分子病理学、腫瘍免疫学、健康管理学を研究。現代病となりつつある生活習慣病の研究や食事療法に関する研究も行っている。

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