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vol.2

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

人が心地よいと感じる空間の条件とは?

2016.11.14

夏休みなどの楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうものですが、きついアルバイトの時間というのはとても長く感じたりします。逆だったらどんなにいいだろう…、と誰もが思ったことのある感覚ですよね。この、なんとなく感じる不思議な感覚は、一般的に「感覚時間」と呼ばれています。
 
「感覚時間」は、物理的には同じ長さの時間が、心理作用によって長く感じたり、短く感じたりする感覚のことで、建物や空間の快適性を調べる評価尺度の一つとして取り入れられているもの。性別や年齢によっても差が出たり、環境やその時の心理状況なども含めて、五感がもたらす影響が大きいことがわかっています。最近、この「感覚時間」が実験によってデータ化され、証明されつつあるのだとか。
 
環境による感覚時間について研究を進めてきた共立女子大学の藤本麻紀子准教授によれば、そうした「感覚時間」には刺激量が大きく関わっているといいます。刺激の多い空間では、人は時間を長く感じるというのです。
 
「騒音の大きい大通りで、複数の被験者に時計を見せずに感覚時間を計測したところ、多くの人が実際より時間を長く感じていたことが判明しました」と藤本先生。
 
他の実験では、部屋の照明の色によっても感覚時間が変化しました。照明の色を青くした場合と赤くした場合で感覚時間を計測したところ、青い場合のほうが、部屋にいる時間を短く感じた人が若干多かったのです。
 
これは、青色は見ている人をクールダウンさせて心理的な刺激を減らしたため、感覚時間が短くなったと考えられます。
 
部屋のカーテンの色は、青系のほうが落ち着くというのは、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。こうした聴覚や視覚だけでなく、五感すべてに対して刺激が少ない環境こそ、人にとってリラックスできる空間であり、時間の流れ方も短く感じるということが言えるようです。
 
ただし、藤本先生によれば、個人によって居心地の良い空間はまったく変わってくるといいます。
 
「千代田区は、公園が多く存在しています。確かに実験でも、公園のような緑が多く静かな場所では、ほとんどの被験者がリラックスして時間を早く感じた、という結果がでています。しかし、千代田区の公園を調べてみると、オフィス街の中にある公園の多くが大人の喫煙スペースになっていました。喫煙者にとってはリラックススペースになりますが、一方で子供や母親などにとっては居心地が悪い場所になっていたのです。確かに緑が多い環境は人をリラックスさせるようですが、その他の要素も含めた居心地のよい空間というのは、性別や年齢、心理状況などによって大きく変化するということなんです」(藤本先生)

▲緑が多くのんびりできる公園

公園などの公共の場所では、すべての人にとって居心地のいい空間を実現することは難しいようですね。でも、自分にとって居心地の良い場所を作るには、五感全体にとって刺激の少ない部屋にすることもポイントだといえるようです。
 
自分のプライベートな場所を居心地のよい空間にしたいと思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。

取材にご協力いただいた先生はこの方!

共立女子大学 家政学部 建築・デザイン学科

藤本麻紀子 准教授

環境工学、環境心理をテーマに研究。環境における人間心理についてさまざまな実験を行っている。これまでに発表した学術論文は、「休息空間における人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的研究」(2016年)、「千代田区における公園の活動実態調査」(2016年)など、ほか多数。

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