度  
     TERUO MATSUBARA

   死刑制度のある国とない国     2001年3月31日現在 アムネスティ・インターナショナル調べ  

    

 ●現在も死刑を執行している国 (2012年)
   ( 58ヵ国 )  日本  アメリカ  中国  インド  北朝鮮  インドネシア  イラン  イラク、など。
      ※ 韓国は「死刑存続国」の色で塗りつぶされているが、死刑制度はあるが、1990年代後半から
        死刑を停止しているので、58ヵ国には含めない。
      ※ アメリカでは50州のうち17州で死刑を廃止している( 2012年 )
 
 ● 死刑を全面廃止した国 (2012年)  ※ 通常犯罪において死刑廃止国は140ヵ国
      EU加盟国( ラトビアを除く26ヵ国 )   カンボジア  カナダ  メキシコ 
           ニュージーランド  フィリピン、など
      ※ 2007年2月 ――― フランスは、憲法に死刑を禁止する条項を書き加えた。   
 
 ● 通常犯罪について死刑廃止した国 ( 戦争犯罪については死刑制度あり )  
        ブラジル   イスラエル   ペルーなど。

                         

  ドイツの場合、ナチス時代の反省が大きい。 当時、死刑が大量に行われたことから、国家に人を殺
 す権利を持たせることへの抵抗が強い。 1949年のボン基本法で死刑は廃止され、ナチス幹部らは、
 それに先立つニュルンベルク裁判で処刑された。
  イギリスでは、何度か死刑廃止法案が国会に出されたが否決されていた。 しかし、1950年に処刑
 された男性が実は無実だったことがのちに判明し、死刑廃止論が本格化、1969年に死刑が廃止した。
 誤判の恐ろしさが廃止に結びついた。

 

 日本では、死刑は絞首刑が採用されている。 1880年の太政官布告で「絞首」と定められた。 当時は「斬
首」での執行もあったが、残忍ではない方法ということで「絞首」が選ばれたという記録が残っている。

 

    死刑の方法   殺人以外の死刑となる犯罪
 アメリカ   銃殺・電気・ガス・注射・絞首   スパイ行為、ハイジャック致死
 ロシア  絞首・銃殺  強姦、ハイジャック、贈収賄、刑務所労働中の秩序破壊
 中国  銃殺・薬物
傷害、強姦、麻薬の密輸・販売、汚職、貨幣偽造、脱税
資金横領、売春斡旋、ワイセツ物制作配布、密輸入、
美術品の違法輸出、国家機密の漏洩( スパイ行為 )
アフガニスタン  銃殺・鞭打ち・投石・絞首  違法政治組織への所属、酒類取引、不義密通

 

  主な国の死刑執行数
      ( 2011年 ) 
       アムネスティ・インターナショナル調査
       実際の数はもっと多い可能性が大きい。
 中国          数壱千人 イラン     360人以上
 サウジアラビア     82人以上 北朝鮮      30人以上
 アメリカ           43人 イラク      68人以上
 ベトナム           5人以上 日本       0人 (19年ぶり)

                                                         ※ 日本の2012年の死刑執行数 5人

 

 中国は12億の人口を抱えており、人口比でいえば中国より多い国もある。 中国では、殺人以外に死刑に
なる可能性がある犯罪が多い。 アヘン戦争の歴史がある中国は麻薬犯罪には敏感で、麻薬を運ぶだけで
も死刑になる可能性があると刑法に明記されている。 中国の厳罰主義は麻薬だけではない。 けんかをして
相手に重傷を負わせただけで死刑になった例もある。    ※ 死刑になる可能性の罪は上表を参照。
 死刑の執行方法は、銃殺か薬物使用といわれている。 最近は、人道的な見地から薬物使用を増やすよう
にしているらしい。
 中国の場合、死刑判決から執行までの時間が極端に短い。 裁判所が死刑を確定したら翌日の午前中に
は銃殺される場合もある。 死刑囚は一つの部屋に集められ、翌日の執行を待つ。 死刑執行は一度に1人
だけということはない。 1人では怖いが、何人かいっしょなら、話をしたり、夜通し歌ったりして励まし合える。
そうしないと、ストレスから過激な行動に出る者がいるからだ。
 海外からの根強い人権批判に対して、中国政府は 「 死刑の適用は厳格におさえ、慎重に行う 」 という方針
を打ち出し、改革に踏み込み始めた。

 

 イランの死刑は、日本と同じ絞首刑が基本だが、既婚者の不貞行為の場合だけは、イスラム法で石打ちによ
る死刑と定めてある。 男性は腰まで、女性は胸まで土に埋めて、死ぬまで石を投げつける。 裁判所の命令で
民兵や警察官が実行する。 2006年にも、夫以外の男性と不倫関係にあったとして石打ち刑を言い渡された
女性がいた。 2006年〜2010年の4年間で少なくとも7件の石打ち刑が執行されている。 イランでは、強姦
や男性の同性愛、麻薬密輸なども死刑にあたる。 イランやサウジアラビアでは、子どもにも死刑を執行している。

 

 先進国・民主主義大国で、死刑を執行し続けているのは、アメリカの一部の州と日本くらいである( 2012年 )。

 

 刑法学には2つの考えがある。 

  1) 刑罰は社会が犯罪を犯した者に対して復讐(制裁)するという考え
  2) 刑罰は社会復帰させるための教育であるという考え
 刑罰とは何か、改めて考える必要があるだろう。

 


【日本の現状】

Q 日本では、どのような場合に死刑となる可能性があるのか? 

  刑法で定める死刑となる犯罪は、全部で16種類ある。
   (例) 殺人、強盗致死、人質殺害、爆破物破壊、水道物毒物混入致死、現住建造物等放火、内乱罪、など
 
  その中でも、どういう場合に死刑判決が出るか?無期懲役との境はどこなのか?
  1983年、連続ピストル射殺事件で4人を殺害した永山則夫元死刑囚への判決で最高裁は「永山基準」を示
 した。それによると、@犯行内容、A動機、B殺害方法の残虐さ、C結果の重大性( 特に殺害された人数 )、
 D遺族の被害感情、E社会的な影響、F犯人の年齢、G前科があるかどうか、H犯行後の情状 ――― など
 を総合的に考慮し、その罪が重大であり、犯罪予防の観点からも死刑がやむを得ない場合に限って死刑が選
 択される。

 

 死刑判決が下されても、法務大臣が死刑執行命令書に署名しないと死刑は執行されない。  これは、行政の
司法に対する抑制機能の一つで、他の刑罰にはみられないものである。 「 署名にあたってはそれなりの信念
と覚悟が必要」ということで、歴代の法務大臣は署名に積極的とはいえなかった。  法務大臣がサインすると、
5日以内に死刑は執行される。

        ( 資料 )  日本の死刑執行件数  法務省調べ

 

 

    確定死刑囚は 130人 ( 2013年末現在 ) 

  死刑確定数 死刑執行件数
2005年    11     1
2006年    21     4
2007年    23     9
2008年    10    15
2009年    12     7
2010年     9     2
2011年    21     0
2012年     7     7
2013年     8     8

 

 死刑の執行は、その当日に死刑囚に伝えられる。 アメリカでは死刑執行のプロセスが細かく公開され、死刑
囚が選ぶ最期の食事の内容も明らかにされる。 執行直前の死刑囚へのインタビューも認められ 、被害者が死
刑執行に立ち会う権利を認めている州も多い。 それに対して日本は、死刑囚がどのような最後を迎えたか、
その様子は非公開だ。
 死刑囚は直前に教誨師(キョウカイシ)と話す機会がある。 執行後は、法務省が@執行された人の名前、A罪の
内容、B執行場所の拘置署名、のみが公表される。 死刑囚の家族や事件被害者も終了後まで死刑執行は知ら
されない。

 

  死刑場はどんな場所? 死刑囚の生活は? 死刑囚の最後は?について
 は、 『 留置所、拘置所、刑務所 』 のサイトに解説があります。  

 

死刑が執行されていない死刑囚  

 全国の拘置所に収監されている確定死刑囚は 128名いる( 2015年2月 )。
 刑事訴訟法では「 死刑執行命令は死刑確定後6ヵ月以内 」 「執行命令から5日以内に執行する」と定め られているが、このような執行はあまりない。 その理由は、@再審
を求める権利があるから …1980年代に死刑囚の再審無罪が相次いだため、法務省内には再審請求中の死刑囚は死刑を執行しないという暗黙のルールがある。 先延ば
しのための再審請求もいて批判もある。 2014年末現在で再審請求中の死刑囚は93名である。  A複数の犯人による事件では、共犯者の裁判が終わるまでは執行されな
い実態もある。 オウム真理教の事件では、松本智津夫死刑囚ら13名の死刑が確定しているが、まだ執行されていない( 2015年2月現在 )。 死刑囚の証言が共犯者の裁
判に影響を与える可能性があるからだ。
   ※ 死刑確定から執行までの期間は平均7年8ヵ月( 2007年現在 )。中には30年以上、死刑が執行されていない人もいる。
   ※ 2004年に死刑執行された大阪・池田小児童殺害事件の宅間死刑囚の場合は、第一審の地裁で死刑が確定した( 本人が控訴しなかったため )。 死刑執行までは
     1年に満たず( 11ヵ月19日 )、事件発生から3年3ヵ月しかたっていない異例の早さだった。

 

   1989年 ――― 国連総会で、死刑廃止条約が採択される。

 日本・アメリカなど26ヵ国は反対した。 59ヵ国が賛成し、46ヵ国がこの条約に批准している ( 2002年1月
現在 )。 批准国は死刑廃止を義務づけられている。 日本は条約を採択しておらず、今後も予定はない。

   1998年 ――― 国連人権委員会で「死刑廃止を求める決議」が採択される。

 日米中韓は、これに反発して反対票を投じた。  日本・シンガポールは 「 各国の犯罪状況や国民感情もある 」
としている。

 


死刑賛成の意見

  人間は本能的に死を恐れる。 死刑の存在は、凶悪犯罪の発生を抑制するのに有効である。
  殺された人の家族や友人の無念の思いは、犯人が死刑になることで,決着をつけられる。 犯人が過ちに
  気づき、謝罪するのが本当のつぐないだと言うのは、第三者の無責任な認識である。
  死刑に限らず、誤判は他の刑罰でもあってはならないことで、誤判の問題と死刑存廃は議論する次元が異
  なる。
  死刑を報復とみれば、無期などの懲役刑も報復となり、刑法そのものの否定となる。
  生命を奪った者が生命を奪われるのは当然の報いである。

死刑反対の意見

  犯行時に死刑の存在はほとんど意識されていない。 凶悪犯罪の防止にはそれほど役立たない。  自暴
  自棄の犯行に抑止効果はなく、自殺願望者の犯罪を誘発する。
  凶悪犯罪の原因も、貧困などの物理的問題から心の問題へとシフトしている。 心に問題を抱える人間は
  最後の自己主張( スポットライトを浴びる場所 )として死刑を求める傾向が強く、犯罪抑止にならない。
  犯人が処刑されても被害者は生きかえらない。 生きて罪をつぐなっていってほしい、という被害者の遺族
  の意見もある。
  罪をつぐなうことなく死をもって抹消するのは、解決にはならない。 犯人が自らの過ちに気づき、悔い改
  め、心から謝罪することがつぐないであり、自分の行いを悔いていない人間を処刑したところで真のつぐない
  にはならない。 また、罪を反省し、立ち直ろうとしている人を死刑にするのは残酷である。
  生命の尊厳を犯す制度である。 ・・・ もし、無実の罪で死刑になった場合、取り返しがつかない。  裁判
  には誤判もあるから、その可能性も考えるべきだ、どんな重罪を犯した者も生きる権利を奪われない。
  日本の法律では個人の報復は認められていない。 にもかかわらず、死刑という制度を使って国家が報復
  に加担するのは矛盾している。 死刑は国家による殺人であり、いかなる理由があろうと国が尊い命を奪うこ
  とは許されない。
  死に値する罪を犯したとしても、なぜその償いを死をもって行うのか? 地獄のような生を通じて罪と向き合
  わせることが本当の罰である。
  被害者遺族が求めるのは報復ではなくて、苦悩の贈与である。 死刑より終身刑を科すべきだ。

 

その他の意見

  罪の意識のある者には、生きながら償いをさせるべきだ。 罪の意識のない者には罰を与えても意味がな
  い。 死刑をもって社会的制裁とするしかないだろう。 問題はその判断だ。

 

 欧米の主流の考え方は 「 刑罰の目的は犯人を更正させて社会復帰させること」だ。 それが無理な場合は、
「(終身刑などで)社会から隔離すればよい」というものだ。
 欧米の考えに対しては、「人を殺してはいけないといっても、正当防衛などは認められるのではないか」 「ヨーロ
ッパは戦争を放棄していない。他国の人なら、戦争で人を殺してもいいのか」という疑問がわく。