文學藝術
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◇口絵・扉絵解説◇口絵:シルヴェストロ・レーガ《ストルネッロ》 1868 フィレンツェ 近代美術館   SilvestroLega,Stornello,1868,Firenze,Galleriad’artemoderna   Photo:CristianCeccanti https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Silvestro_Lega_-_Il_canto_di_uno_stornello_-_1868.jpg扉絵:ルカ・デッラ・ロッビア《フィレンツェ大聖堂カントリーア浮彫》(部分)1431-38 フィレンツェ 大聖堂博物館 LucadellaRobbia,Cantoria(particolare),1431-38,   Firenze,Museodell’OperadelDuomo   Photo:Sailkohttps://commons.wikimedia.org/wiki/File:Luca_della_robbia,_formelle,_1431-38,_09.JPGピアノを弾く女性と伴奏に合わせて歌を歌う女性が二人、服装や室内の様子、何よりもピアノから、彼女らが貴族階級もしくは上流ブルジョアに属することが明らかである。開け放たれた窓の外にはトスカーナの田園風景が見える。夏、町中から田舎に避暑に来ているのであろうか。18世紀に発明されたピアノは改良が重ねられて19世紀にはブルジョア階級にも普及していた。ルノワールの有名な《ピアノの前の二人の少女》(オルセー美術館)がその証である。レーガの絵のタイトルとなっているストルネッロは歌謡の一形式で、3つの詩行からなり、最初は5音節、11音節の2行が続く。恋愛や風刺を主題とし、19世紀中頃のイタリア中部、南部で流行した。一部の作曲家が自身の作品に取り入れた例もあり、マスカーニのオペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》に含まれているものが知られている。しかし本作で歌われている曲は不明である。作者シルヴェストロ・レーガ(1826-95)は19世紀イタリアの画家、マッキアイオーリ(Macchiaioli)の一員としてトスカーナでは著名である。マッキアイオーリ(マッキア派 マッキアとは斑点、染みの意)とはフィレンツェを中心に活動した一群の画家を指す呼び名で、彼らがアカデミックな画家たちと異なり、画面を平滑に仕上げることをせず、筆のタッチを残したことに由来する。レーガのほか、ジョヴァンニ・ファットーリ、テレーマコ・シニョリーニらがよく知られている。もっともファットーリ等に比べてレーガはアカデミックな様式に近い。彼らは時にイタリアの印象派などと呼ばれることがあるが、活動時期は重なるものの、様式はむしろクールベやバルビゾン派に近く、色彩には印象派のような鮮やかさがなく、伝統的な絵画と大きく変わるところがない。技法においても、印象派の技法の裏付けとなっていたシュヴルールの「色彩の同時対比の法則」とは関わりがない。ゆえにマッキアイオーリをイタリアの印象派と呼ぶことは不適切であろう。19世紀のイタリアにおける美術活動はルネサンスやバロックの時代に比べると低調で、当時に匹敵するような巨匠がいない。その中でレーガらマッキアイオーリの作品は、19世紀イタリアの美術を代表するものとなっている。また、かつてフィレンツェに留学した筆者にとっては、ある種のノスタルジアを感じさせる作品でもある。ルカ・デッラ・ロッビアの作品は、フィレンツェ大聖堂内陣両脇の壁面上部にあったパイプオルガンの前にバルコニーのように設置されており、カントリーアと呼ばれていた。「唱歌壇」と訳されているのを見たことがあるが、聖歌隊がそこに入るわけではないので、不正確である。現在では取り外されて博物館に展示されている。ルカのカントリーアは合計10面の浮彫を持ち、いずれにおいても少年少女、あるいは童子が歌を歌い、あるいは踊り、楽器を奏でている。その様は愛らしく、活発で騒々しいものもあり、ルカ・デッラ・ロッビアという彫刻家の力量を遺憾なく示している。彼ら彼女らは、しかし、楽しみで歌っているのではない。ルカの浮彫の主題は、実は詩編150番の詩句の視覚化である。扉に掲げた浮彫は「琴と竪琴を奏でて神を賛美せよ」という詩句を表したものと考えられる。その他の場面も詩編の詩句に忠実である。アウグスティヌスによれば、詩編150番はキリストの復活を意味しており、これらの浮彫はキリストの復活を賛美するものと言える。池上公平

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