文學藝術
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やグリムが伝承をもとにして書いた「青髭」の物語にも似ている。実際、呉青秀が、予想よりも早い妻の屍体の腐敗に狼狽したことについて、呉一郎に説明を試みる正木博士の台詞に、青髭は登場している。 袖を引かれた女はみんな仰天して逃げ散つてしまふ。之これを繰り返す事累るゐ月げつ。足そく跡せき遠近に及んだので、評判が次第に高くなつて、どの村でも此この村でも見付け次第に追い散らしたが、(中略)然しかれ共呉青秀の忠志は遂つひに退しりぞかず、至難に触れて益ます々ます凝こる。遂に淫いん仙せんの名を得たりとある。淫仙といふのはつまり西洋の青ブルーべヤード髭という意味らしいね(三五四―三五五頁((()「青髭」とは、次々に若妻をめとっては殺害を繰り返し、開かずの間にコレクションしていた男の物語である。新しく妻となった女がこれに気付いてしまい、危機一髪となるが、駆けつけた兄たちに助けられてハッピー・エンドとなる。先行研究が指摘するように、若林=「馬鹿囃し」、正木=「正気」、面黒楼=「面喰らう」、戸倉=「ドグラ」など、『ドグラ・マグラ』作中の固有名詞には、駄洒落に基づく可能性の高いものが少なくない。久作は、キャラクターのネーミングに関する随筆をものしており、また、「名は体を表す」式の、「名詮自性」的ネーミング術にこだわっていた曲亭馬琴『南総里見八犬伝』の愛読者でもあったようだ(((。こうした点を加味した場合、呉青秀の「青秀」が、「せいしゅう」の音読みのみならず「あおひで」の訓読み――あまりに駄洒落じみていて指摘するのも憚られるが、あおひで/あおひげ、という極めて江戸の戯作的な連想――を意識していた可能性も否定できない。一方で、音読み「せいしゅう」の方は、「青髭」のように作中で直接明示はされていないものの、より蓋然性の高いルーツを見出すことが可能である。(0文學藝術 第47号(2025)

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