文學藝術
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明らかにした、大人と子どもが未分化だった時代に生まれた詩である。やがて18世紀頃、識字率が向上し、労働者としての「小さな大人」から教育の対象へと変化していった子どもたちに向けて、本が出版されるようになる。かつては年齢に関係なく親しまれていた「チャップブック」と呼ばれる絵入りの素朴な本に、伝説や昔話と並んで掲載されていたのが伝承のバラッド(ballads)のような民謡であり、その一部がナースリー・ライム、伝承童謡として子どもの本に継続的に取り上げられるようになる7。近代に入り、子どもの本にも宗教性や教育性が重んじられるようになるが、それ以前からあるナースリー・ライムは死やグロテスクな要素を含んでおり、意味よりもリズムや言葉のおもしろさが先行するノンセンス(Nonsense)も多く見られる。『ホビットの冒険』(The Hobbit, or There and Back Again, 1937)や『指輪物語』(The Lord of the Rings, 1954-55)の作者J. R. R. トールキン(John Ronald Reuel Tolkien, 1892-1973)は、妖精物語は、大人にとって不要になったので、子ども部屋に払い下げられた家具のように、子どものものと思われているが、もともとはそうではなかったと述べている8。トラヴァースもまた子ども部屋に置かれた本に残された口承文芸や妖精物語の中にある神秘性に気づいた人の一人であった9。トラヴァースにとって妖精物語は、単なる楽しみではなく、世界の深淵に触れる、最終的には信仰にも近いものであった10。アイルランド系の父親トラヴァース・ロバート・ゴフ(Travers Robert Goff)の影響で、幼い時よりアイルランドの伝統、神話や伝説に親しむ。『ウォルト・ディズニーの約束』では、父が病に倒れ、窮地に陥った家族の前にエリーおばと呼ばれる人物が颯爽と現れ、子どもたちに厳しくも温かい手を差し伸べる。のちに『サスおばさん』(Aunt Suss 1941)のモデルとなるトラヴァースの母方の大叔母は、マザー・グースなどのナースリー・ライムの歌詞をもじるのが得意だったらしい11。8歳の時に父親を亡くし、大学に進学せず働き始め、やがて舞台女優、パメラ・トラヴァース(本名はHelen Lyndon Goff)として活躍する。また雑誌に詩の投稿を始め、『アイリッシュ・ステイツマン』(Irish Statesman)の編集長であり、アイルランド文芸復興運動の指導者、詩人のAE(George (3)文學藝術 第47号(2025)

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