William Russell, 1867-1935)から、妖精物語や神話の意味について教えを受ける。「メアリー・ポピンズ」シリーズは、ファンタジーの一形式であるエブリディ・マジックに分類される12。エブリディ・マジックとは子どもたちの日常に魔法や不思議なことが入り込むファンタジーの一形式である。そして妖精物語やナースリー・ライム、またナースリー・ライムでお馴染みのノンセンスの要素が使われる。「メアリー・ポピンズ」シリーズにもこうした特徴が見られ、英語圏で広く知られたナースリー・ライムの要素がこの作品の世界を読者にとってより身近なものにしてくれる。2.ナースリー・ライムの住人たち子ども部屋(ナースリー)とナースリー・ライムの世界の境界線は曖昧で、子どもたちはメアリー・ポピンズといるといつの間にかその境界線を越えることができる。『風にのってきたメアリー・ポピンズ』第5章「踊る牝牛」(The Dancing Cow)では、おたふく風でベッドから起き上がられないジェーンのために、弟のマイケルは子ども部屋の窓から見えたものを説明する。隣人の変わり者ブーム提督(Admiral Boom)、やはり隣人のラークさん(Miss Lark)の家で働くメイドをバンクス家の怠惰な使用人ロバートソン・アイ(Robertson Ay)が庭の掃除もそこそこにチラチラとフェンス越しに見ている。「とても珍しいもの、さくら通りに牝牛がやってきた」とマイケルがジェーンに告げると13、メアリー・ポピンズは母の代から、そしてその牝牛が王様に会うずっと前からの友人だと子供たちに告げる。その赤い牝牛(The Red Cow)の毎日はメアリー・ポピンズのようなナニーのそれを思わせるものだった。彼女は上品(“respectable”)で完璧なレディ(“a perfect lady”)、分別があり、赤い子牛の世話と躾に忙しかった。赤い子牛は大きくなり、やがて別の子牛が彼女に託される。そんな風に同じような毎日が過ぎていくと思っていたある晩、いつも草原で食んでいるタンポポのように星はまたたき、月はデイジーのように煌々と照る。子牛が眠りにつくと、赤い牝牛は踊り出した。朝になってもダンスは止まらない、食事も寝る(4)特集テーマ「歌」・メアリー・ポピンズは歌わない?
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