文學藝術
151/158

チーフである。トラヴァースはオーストラリア、クイーンズランド州アローラでは星に夢中になっていた。その後、星は、トラヴァースが信奉する「対峙するものが和解し、全体の調和に結びつく考え方」、「霊魂の不滅や輪廻」、「天体の運行など悠久の円環の動きを崇拝する古代人の心」を表現する重要なモチーフになる15。『メアリー・ポピンズ』10章「満月」(Full Moon)では、夜の動物園が描かれる。ジェーンとマイケルはそこで動物の代わりに人間が檻に入れられるという「あべこべ」(topsy-turvy)を目にする16。動物たちは集い、大きな輪(“Grand Chain”)になりメアリー・ポピンズを讃える。“Oh, Mary, Mary,She’s my Dearie,She’s my Dear-i-o!”17『帰ってきたメアリー・ポピンズ』7章 「夜の外出日」(The Evening Out)では、流れ星が降る夜に星々に導かれて子どもたちが自分たちの愛するナニーがどのように貴重な自由時間を過ごしているか垣間みる18。星座は動物として登場し、メアリー・ポピンズを楽しませる歌や踊りを披露する。星たちのショーは子どもたちが大好きなサーカスのイメージで展開する。そして最後には星たちの最高位にある太陽が現れ、メアリー・ポピンズと踊る。星たちが輪になって歌う様子は、ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)が『ヴェニスの商人』(The Merchant of Venice)の5幕1場で描いた月夜の場面を思わせる。そこではロレンゾー(Lorenzo)が彼と駆け落ちしたジェシカ(Jessica)に天上の星々が奏でる音楽について語る。この堤に眠る月の光のなんと美しいことか!われわれもここに腰をおろし、忍びよる楽の音に耳を傾けるとしよう。やわらかく夜を包む(6)特集テーマ「歌」・メアリー・ポピンズは歌わない?

元のページ  ../index.html#151

このブックを見る