この静けさは、妙なる音楽を聞くにふさわしい。おすわり、ジェシカ。どうだ、この夜空は!まるで床一面に黄金の小皿を散りばめたようだ。きみの目に映るどんな小さな星屑も、みんな天をめぐりながら、天使のように歌を歌っているのだ、あどけない瞳の天童たちに声を合わせてな。不滅の魂はつねにそのような音楽を奏でている、ただ、いずれは塵と朽ちはてる肉体がわれわれをくるんでいるあいだは、それが聞こえないのだ19。中世ヨーロッパでは「天上の音楽」は世界の調和と呼応しあい、奏でられると信じられていた20。トラヴァースは『さくら通りのメアリー・ポピンズ』(1982)でも再度、天から公園に降りてきた星座たちが人々と輪になって踊る場面を描いている。メアリー・ポピンズは、天上とこの世界を行き来し、人々と、特に彼女の魔法を信じる子どもたちと天上からの使者たちと巡り会わせる役割を果たす。ディズニーのミュージカル映画はメアリー・ポピンズの魅力を広く知らしめたことは確かであり、現代に至るまでその影響力の大きさを無視することはできない。トラヴァースがこの映画に落胆した理由の一つにメアリー・ポピンズが現世的な存在として描かれ、原作で意図されていた神秘性が失われている、という点があった21。シャーマン兄弟の楽曲とジュリー・アンドリュースの歌声はもちろん魅力的だが、トラヴァースが「メアリー・ポピンズ」シリーズで奏で続けた歌に耳を傾けるとき、一見、軽快なメアリー・ポピンズの魔法の深淵さに触れることができる。(7)文學藝術 第47号(2025)
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