たのに、それを怠った。そのことが、やがて最悪の悲劇を生んだのである。同年9月30日に、宙組の生徒が亡くなった。それがヘアアイロンで火傷をさせられたとされる娘役であり、自ら命を絶ったものとされている。本来なら、歌劇団はただちに訃報を掲示し、哀悼の意を表すべきだったが、何らかの思惑によるものかその機会を逸し、未だにそれはなされていない。事の経緯がいかなるものであっても、現役生徒の死去にあたってこのような事態が生じたこと自体、組織としては考えられない不祥事と言わなければならないだろう。その後の歌劇団の対応も拙劣極まりないものだった。一方で『週刊文春』は、亡くなった生徒をはじめ多数の顔写真を含む記事を執拗に掲載し続け、他のマスコミもそれに追随したことは周知の通りであった。ここで改めて、宝塚歌劇団の組織について整理しておこう。まず、歌劇団員として舞台に立つためには、兵庫県認可の専修学校である宝塚音楽学校を卒業することが必須条件となる。入学資格は中学卒業から高校卒業の年齢まで、それ以降は受験することができない。入学定員は40人程度で、一連の事件の影響からか2022年の志願者は減少したとされるが、それでも12倍程度の倍率はあったそうだ。教育課程は2年間で、1年目は予科、2年目は本科と称される。卒業後ただちに宝塚歌劇団に入団して初舞台を踏むことになるが、ここで大切なのは、その1年めを研究科1年、略して研1と称し、以後研2・研3と進む。年によって異なるが、2年目からは全員が花月雪星宙の5組のいずれかに配属され、その後組替えにより他の組に移ることもある。歌劇団は学校であり、活動のすべてが教育とその成果発表であるという建前は、一切崩していない。トップスターとなっても、組長となっても、技芸に優れたベテランが属するとされる専科に移っても、劇団理事になったとしても、在団する限りは「生徒」であるということになる。従って、ここでも劇団員を「生徒」と呼ぶことにする。現在、演劇興行を行なう主体は様々なものがあり、東宝・松竹などの大手興行会社の他、種々の芸能プロダクションや劇団四季を始めとする大小の劇(27)文學藝術 第47号(2025)
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