衆議院の解散
         TERUO MATSUBARA

 ↑ 解散すると、なぜかバンザイ( 2003年10月10日の解散 )

 

 3年ごとに半数ずつ選挙する参議院とちがい、衆議院議員の選挙は一回の選挙で全員を選ぶため、総選挙
という。 衆議院議員の任期は4年だが、任期満了に伴う選挙は三木内閣時代に1回あっただけだ。

 

 解散があるのは衆議院だけである。 この場合の「解散」とは、「集まっている人たちが散り散りになる」という
意味ではなくて、「衆議院議員が全員、任期満了前に議員でなくなる」 という意味だ。  
 上写真のように、首相が解散を決めると、天皇が国会で解散を宣言する。 この時、議員は 「 バンザイ 」 を
唱える習慣がある。 もともと 「 バンザイ 」 は天皇を迎える時のかけ声で、中国語で 「 萬歳 」 と書き、皇帝
へのお祝いのかけ声だった。 日本でも明治時代から天皇を議場に迎える時にバンザイをするようになった
が、なぜ解散が決まった時までバンザイするのかはっきりしない。 最近は拍手ですませる人も多い。

 

 

【衆議院が解散する3つの場合】

 どんな時に
 衆議院は解散するのか?
 1) 任期満了 ( 任期の4年間を終えた時 )
 2) 内閣不信任決議案が可決された時 ( = 「 69条解散 」  )
     ( または、内閣信任案が否決された時  )
 3) 内閣が必要だと思った時 ( = 「 7条解散 」  )   

 
 憲法第69条では、衆議院が内閣不信任決議案を可決した時、内閣は総辞職するか、衆議院の解散を選ぶ
が、それに基づく解散が 「 69条解散 」 である。   「 あなたの内閣ではだめです 」 と言われて 「 はい、わかりま
した。 やめます。 」 というのが内閣総辞職で、 「 何だと! 私たちは正しい、文句があるなら選挙で決着をつけ
よう 」 というのが衆議院の解散である。 
 また、内閣信任案が否決された場合もそうだが、これは政治的な小細工で使われることがある。 国民の内閣
への不満が大きい時、国民の口を封じるためにあえて、国会で内閣信任案を提出し、可決させる。 あらかじめ
国会が与党優位の状態で、可決されることがわかった上で、である。 こうすることで、「ちゃんと国会で信任され
ているではないか」と言えるわけだ。 また、野党に時間かせぎの内閣不信任案を出させないために、先に与党
が内閣信任案を提出して可決することもある。 1度採決した案について、同じ国会では審議しないので、大事な
場面での内閣不信任案提出をさせないようにできるのだ。
 戦後、衆議院は20回解散されているが、69条解散の例は4回ある( 2009年現在 )。 

 

 憲法第7条では、天皇の国事行為の一つに衆議院の解散を上げている。 「 7条解散 」 は、国の重要な問題
に関して国民の意見を聞きたい時に首相が決断するもので、ほとんどの総選挙はこの7条解散で行われる。 総
理がやっていること、これからやろうとしていることについて、国民の意見を聞くために解散するのだ。 新しい選
挙で、自分の考え方を支持する人が大勢当選してきたら、自分の考えが国民に認められた、ということになり、逆
に、自分の考えに賛成する議員が減ってしまったら、国民は総理を支持していない、ということになる。 自分たち
がやっている政治を国民が支持してくれるかどうかを選挙をして確かめよう ―― というものだ。

 

    吉田茂首相は、憲法第7条( 天皇の国事行為が書かれてある条文 )を根拠に、内閣に一方的な衆議
   院解散権があると言った。 「 内閣の助言と承認により、国事に関する行為を行う 」…その中の1つに
   「衆議院を解散する」があるからだ。 内閣が自分たちの都合のいい時期に解散、すなわち選挙ができ
   るというのはおかしい。 世論に注意を払って、内閣支持率が高い時を見計らって解散すれば、政権維
   持ができてしまう。
    過去に、7条解散は違憲ではないかと最高裁まで争われたことがあった。 最高裁は違憲合憲の判断
   を放棄した。いわゆる統治行為論である。

 

 

 

  例えば、総選挙の結果次第で政局はこう動く!

 

  ――  解散前の状況  ―― 
  与党の人数が60人  野党の人数が40人  ―― だとする。
  国会で 「 消費税引上げ 」 の政策に、野党と与党の一部が反対し、内閣不信任案が可決された。
    ↓
  内閣は衆議院解散を選び、総選挙を行うことになった。
  
 3通りの総選挙の結果を考え、その後の政局がどうなるかを予測すると・・・
@ 与党70人 野党30人当選 の場合 ( 与党の議席が増えた場合 )
   → 国民は現内閣を支持していると考えてよい。 
     与党は自信を持って政策( 消費税引上げ )を進行していく。
A 与党55人 野党45人当選の場合 ( 与党の議席がやや減少した場合 )
   → 国民は政策( 消費税引上げ )を支持していないと考えた方がいい。 政策の見直しを迫られる。
B 与党40人 野党60人当選の場合 ( 与党が過半数を割り、野党が過半数を超えた場合 )
   → 政策どころか与党は政権維持に黄信号。 首相交代もありうる。

 

 内閣が総辞職する
 3つのケース
 1) 内閣総理大臣が欠けた時  ( 死亡、国会議員の資格を失う、単独で 
                     辞表を出した時など ) 
 2) 内閣不信任決議案が可決後、10日以内に衆議院が解散しない時
 3) 衆議院総選挙後初めての国会が召集された時  

 ※ 内閣総辞職から新内閣誕生までは、総辞職した内閣が引き続きその職務を行う。

 

 

【衆議院解散後のスケジュール】

 衆議院解散後
  のスケジュール 
 衆議院が解散
  ↓ ( 40日以内 )
 衆議院議員の総選挙
   ( 30日以内 )
 国会( 特別会 )を召集する  →  内閣総辞職   内閣総理大臣の指名

 
 特別国会が召集されると、内閣総理大臣の指名選挙の前に内閣総辞職を行う。 それなら、最初から衆議院
を解散しないで( 総選挙をしないで )、総辞職すれば?と思うかもしれない。
 しかし、特別国会召集後の内閣総辞職は、総選挙によって民意が反映した新しく選ばれた議員による国会での
総理大臣選び直しのためのもので、最初から内閣総辞職を選ぶのとは意味がちがう。

 

 このように、衆議院は任期が4年と短いうえに、途中で解散することがあるので、まるまる4年間議員をつとめら
れることはほとんどない。 衆議院議員は参議院議員よりもしょっちゅう選挙で選び直されることになる。 だか
ら、衆議院はその時々の国民の意見(世論)を反映していると考えられるので参議院より強い力を持っている
だ。

 

 衆議院が解散されれば、参議院は閉会となる。  また、緊急の場合、内閣は参議院の緊急集会を求めること
ができる。