大学入試のための 政治・経済
        価 格   TERUO MATSUBARA

 

   価格の種類と決まり方  

【価格の成り立ち ――― 基本形】

 生産者はどのようにして、商品の価格を決めるのか ?  例えば、1000円の商品はどのようにして、1000円
という値段がつけられたのか? 
 1000円の内訳は下図で、生産者はこのような項目を頭に入れて、価格を設定する。

 

  原材料費
      ( 300円 ) 
労働者への賃金
 ( 200円 ) 
減価償却費など
 ( 100円 ) 
  生産者の利益
         ( 400円 ) 

                           ※ ピンクの部分=合計600円を生産費 ( コスト )という。 

  ★減価償却費 ――― 機械や生産設備は、使用していくと年々その価値が減少 していく。 この減少額を
              減価償却費という。 したがって、機械や生産設備を購入した以上、この費用を考えて
              おかないと、再購入や修理の時に困る。
  ★他に、商品の価格をつける時には、地代、電気・ガス・水道代などの経費も考える必要がある。
 なお、商品が消費者の手に渡るまでには、価格はどんどん高くなる。 卸売価格は卸売業の利益が含まれ、
生産価格よりも高くなる。 小売価格になると、小売業の利益・広告代なども含まれ、卸売価格をさらに上回る。


  
  
  

【価格の種類@ ――― 市場価格】

 市場とは、売り手と買い手が出会う場所で、さまざまな市場が存在する。 
  @卸売市場( 魚や野菜、くだものなどが売買されている )、A株式市場( 株式の売買が行われている )、
  B労働市場( 働きたい人と雇いたい人が出会う )、など
 
 需要量( = 消費者がモノを買おうとする量 )と供給量( = 生産者がモノを売ろうとする量/小売店で販売し
ている量 )の関係で、市場で成立する価格を市場価格という。

 

< 基本法則 >
 需要と供給の関係
 供給<需要 ――― 消費者は競ってその商品を手に入れようとするため、市場
            価格は上がる。
 供給>需要 ――― 売れ残って市場価格は下がる。
       <例> 閉店前のスーパーのお惣菜価格を考えよ! スーパーは売れ
           残ると困るから、安くしても売ろうと値段のラベルを張り替える。

 

  たとえば、左グラフで野菜 ( きゅうり ) の価格を考
 えてみよう。 入荷量が多い季節 ( 7・8月 ) は、供
 給者は売れ残ると困るので低い価格で売る。 逆に
 入荷量が少ない季節 ( 1・2月 ) は、価格が高い。
  キャベツなどは豊作のとき、農家はわざとキャベツ
 をつぶしてしまう。 とれたキャベツをすべて市場に
 回すと値段がとても安くなってしまい、採算がとれな
 いから、つぶすことによって市場への出荷量を減ら
 しているのだ。

 

 旅行会社の代金も市場価格で
ある。 夏休みになると仕事や学
校が休みになるので、代金が多
少高くても旅行に行きたいという
人が増えるから(=需要が増える
から)、旅行代金は高くなる。
・       あるツアーの旅行代金 ⇒
       
 ホテルや旅館の宿泊代金は休日前が高い。 休日前は宿泊希望者が増える。 それに対して部屋の数が増え
るわけではない。 供給が一定なのに需要が増えるので、宿泊代金は高くなるのだ。

 

 市場経済の下では、価格の上下によって、消費者の需要量や企業の供給量は自然に調節される。 イギリス
の経済学者アダム・スミスは、これを価格の自動調節機能と呼んだ。 市場で行われるから、市場機構( 市場メ
カニズム )ともいう。
 需要と供給のバランスが崩れても、価格が変化して再び両者を一致させる。 アダム・スミスは、神の「見えざ
る手」が働いて、需要と供給が調整されるとし、自由主義経済を唱えた。 
   ( 注 ) ビルトインスタビライザー( 自動安定化装置 )は、財政に景気を調節するしくみがあることをさすの
       で、それと混同しないこと。

                          [ 価格の自動調節機能 ]

供給<需要 価格上昇
  消費者は、価格が上昇すると、買うのを控える。
                     ( =需要が減少 )
  企業は、価格が上昇すれば、より多くの利潤を得よう
 として供給を増やす。       ( =供給が増加 )
供給=需要

  

供給>需要 価格低下
  消費者は、価格が下がると買おうとする。
                     ( =需要が増加 )
  企業は、価格が下がれば、利潤が小さくなるので
 生産をひかえる。         ( =供給が減少 )
供給=需要

 

右上がりが供給曲線、右下がりが需要曲線!
 価格が高い場合も安い場合も、結果として価
格は均衡価格へと向かう。 
 均衡価格が成立した時、市場では需要と供給
が均衡し、必要なものが必要なだけ生産され、
原料や労働などの経済資源がムダなく効率的
に使われた、資源の最適配分が実現されてい
る。
 ★ 右図の b−c = 売れ残る量 を表す。
 
 

 

 

    ただし、例外もある。 ブランド品はどうだろう? ブランド品には「 高いから買う 」という面があり、安く
   なるとブランドの価値が落ちてしまうため買わなくなる。 したがって、ブランド品の需要曲線は右上がりと
   なる。
    また、労働を商品と考えると、価格(賃金)が安い時は、たくさん働かないと生活できない。 したがっ
   て、労働者(供給者)は労働時間(供給量)を増やす。 したがって、労働の供給曲線は右下がりとなる。

 

 <需要曲線・供給曲線のシフト…価格以外の要因によるシフト>

 

 ・ 涼しくなると夏物衣料が売れなくなる( 需要量の減少により、需要曲線が左にシフトし、価格が低下 )。 
 ・ 天候不順で、農作物が不作、価格が上昇する( 供給量の減少により、供給曲線が左にシフトしたため )。
 ・ 所得の増加は、可処分所得が増えるので、需要の増加につながり、需要曲線が右にシフトし、価格が上
 昇する。 
 ・ 商品の流行は、はやっているものを手にしたいという心理を刺激して、需要の増加につながり、需要曲線
 が右にシフトし、価格が上昇する。
 ・ 原材料費の値下がりや技術革新は、同じ費用で製品をたくさん作れるようになるので、供給量が増大し、
 供給曲線が右にシフトし、価格が下がる。

 

 

 

 

【価格の種類A ――― 独占価格】

 アダム・スミスが言った「見えざる手」による調節は、互いに自由競争が行われている場合に働く。
 ある商品の生産が少数の企業によって独占されると、その商品の価格は利益が最も大きくなるように高い水準
に固定されることがある。 これが、独占価格で、市場を独占している企業が、市場での需要と供給の関係にも
とづいてではなく、自分たちの判断で価格を決める。 

 独占価格には次の種類がある。

 1) 企業どおしの話し合いや約束( カルテル )によって決まる価格。  ――― 日本では禁止されている
 2) 管理価格 ――― 支配力の大きい企業 ( プライス・リーダー/価格先導者 ) の提唱する価格に、他の
   企業が追随することによって成立する。
      <例> ビール、ペットボトル飲料、など
    例えば、 ビールの価格は、トップの市場占有率を誇るキリンやアサヒが価格を引き上げると、他の企業
   も価格を上げ、価格競争を避けている。 管理価格が形成されると、価格の下方硬直性といって、需要が減
   少したり、技術革新や生産の合理性によって生産費が低下しても、価格は下がりにくい現象が起きる。

 

    ビールの小売価格は参考表示で、小売店が自由に価格を設定できることを1990年、ビール大手4社
   は告知した。 これまで「カルテルではないが、同調的値上げにあたる」と公取委から調査を受けたこと
   もあった。 日米構造協議もふまえ、公取委からの価格設定の明確さを求めたのに答えたものだ。

 

 Q 価格での競争ができなくなった企業は、ライバル企業との競争に勝つためにどうするか?

   1) 製品の差別化を図る 
        ――― 付属機能、色・デザインや包装に凝る、キャラクター商品、ネーミングの工夫、など
   2) より品質のよいものを作る( =品質向上につとめる )。
   3) サービスを充実させる ――― 商品の無料配送、電気製品の無料修理などアフターサービスの充実。
   4) 広告・宣伝で消費者の購買意欲をかきたてる
        ――― 映像に凝る、CMソングでのタイアップ、有名人や話題人の登用、など
   5) ポイントカード制にする ――― 商品を買えばポイントがたまり、次回、割り引いてもらえる。 
   6) おまけ、懸賞付きにして販売する。
 
   7) 卸売店や小売店を系列化して、流通網を組織化する。
                                     こうした価格以外の競争を、非価格競争という。

   TVが作るヒット曲 

   CDの売上げをみても、タイアップソングの売上げが好調だ。 タイアップソングとは、商品の販売促進
  テレビの主題歌として、特定の企業や商品と契約を結んで提携を行う歌のことである。 タイアップの
  相乗効果として、商品が売れたり、テレビの視聴率が上がると同時に、その曲の売上げ増も期待でき
  る。

    

   ガルブレイスは 『 ゆたかな社会 』の中で、現代の消費者の行動が企業の宣伝・広告活動によって操作され
  ていると指摘し、これを依存効果と呼んだ。  また、他の消費者の行動に影響を受けるようになる( デモンスト
  レーション効果 )ことが知られている。 

 

 

【価格の種類B ――― 公共料金】

 国会や政府が決めたり、許可したりして決まる価格で、公共料金がこの中に入る。
 
 Q 公共料金にはどのようなものがあるか ?  ⇒ 国民生活と深く結びついているモノ・サービスの料金 
 
 ライフラインと呼ばれる水道・電気・ガスなどは、これらがないと生活できないわけで、市場原理で価格が決め   
られたら、たいへんである。 「電気料金は1か月5万円です。高い?それなら払わなくていいです。来月から電
気なしで暮らしてください」 「水道料金の基本料は10万円です。払えないって、水なしでは生きていけませんよ。
命に代えたら安いでしょ?」 などとなったら消費者は困るので、公共料金がある。

 

 政府の決定によるもの   国立学校の授業料   診察料   米の政府買入価格と消費者価格 
 政府が許可するもの
  電気料金   私鉄の運賃   タクシー運賃   航空運賃  
  たばこの小売価格   都市ガス料金
 政府の届け出が必要なもの   手紙やはがきなどの郵便料金   固定電話料金   国内航空運賃
  地方公共団体が決定するもの      公営水道料金   公立学校の授業料   銭湯の入浴料金

  

 Q なぜ、国や地方公共団体が価格の決定に関っているのか?
    価格を企業の自由な決定にまかせると、価格は高い水準に固定され、消費者が不利益をこうむるから。

 

 

   価格 

 ディスカウント=ショップは、なぜ安くできるのか?

  1) 流通ルートを省略しているから ――― メーカーから直接仕入れたりする。 
  2) 大量買いをしているから ――― 「メーカー→現金買い問屋( バッタ屋 )→ディスカウントショップ」のルート
    を使用。  メーカーは、より多く買った業者にリベー トを支払う。
  3) 旧型を安くしている ――― 最近は、商品のライフサイクルが非常に短い。 その分、旧型は高級品で
    も、すぐに安くなる。
  4) 倒産したメーカーの商品だから    
  5) 包装箱を新しくしたので処分する旧型品だから

 

Q サービスエリアのレストランはなぜ高いのか?

 高速道路の場合、食事をもっと安く提供してくれる業者が他にいない。 次のサービスエリアの方がもっと安くて
おいしいものが食べられるかもしれないが、消費者はそれを容易に知ることができない。 他に競争相手がい
ないということが、レストラン業者が価格支配力をもち、相場より高い価格をつけられるのである。

 

 

【希望小売価格とオープン価格】

 テレビやパソコンの価格をカタログで調べても、オープン価格としか書いていないケースが増えている。 家電
製品の80%以上はオープン価格になっている( 2003年数字 )。  
 これまで、メーカーは小売店にいくらで売ってほしいという目安を示してきた。 これが、希望小売価格である。
メーカーが流通も支配する構造で、価格決定権が消費者ではなく、生産者にあった日本ならではのシステムであ
る。 標準価格をメーカーが決めているのは、日本と韓国くらいだという。 しかし、小売店は希望小売価格で売
る必要はない。 1990年代、価格破壊が進むと、価格決定権は小売店に移り、「 2割、3割引はあたりまえ!」 
となると、希望小売価格と実売価格の差が大きくなった。 消費者も価格が2つあって戸惑うようになり、 「 希望
小売価格は何の根拠もない架空の価格か? 」 「 希望小売価格って意味があるの? 」 という受け止め方が強く
なった。
 小売店は、もうけを度外視して商品仕入れ価格とあまり変らない価格で販売することもあった。 それは、メー
カーからリベートという報奨金を受取るので経営は成り立つのだ。 リベートとは、商品を大量に売った小売店に
メーカーがお礼として払うものである。

 

 オープン価格とは、小売店での販売価格をメーカーが設定していない( 希望小売価格を示さない )という意味
で、販売店で自由に決めてくださいということである。 小売店はメーカーからの仕入れ価格にコストやもうけを上
乗せして価格を決めるわけだが、サービスをよくして高い価格で売る店や、お客への説明やアフターサービスを
しない代わりに安い価格で売る店など、いろんな販売方法が考えられる。
 オープン価格には、発売時から設定しないケースと、販売途中でメーカーが標準価格を撤廃するケースがあ
る。 家電製品では、1970年代末から登場した。 消費者は、新製品をカタログで見ても実際に売られている価
格がわからず不便で、比較検討がむずかしい面もある。 
 
 オープン価格の登場で、リベート制度は大幅な見直しとなり、流通過程が透明になり、メーカーの負担も減っ
た。 しかし、メーカーは他社と同じような製品を作っていると、小売店に他社への乗り換えをちらつかされ、形を
変えたリベートの要求に応じざるをえなくなる場合もある。

 

 

【並行輸入】

 小売業者が有名ブランド商品を日本の代理店を通さずに、メーカーから直接輸入するなど、別のルートで輸入
することを並行輸入という。 1996年3月に、化粧品の並行輸入を事実上、解禁している。

 

 

【再販売価格維持制度】

 卸売や小売の段階での安売りや乱売などを避けるために、あらかじめメーカーが卸売価格や小売価格を指定
し、全国一律の価格で販売することを再販売価格維持行為という。 これは、価格競争を阻害し、全国一律の
価格に拘束するおそれがあるので、独占禁止法では原則として禁止されている。 
  ( 例外的に再販売価格維持が認められているもの )  
      新聞、本、雑誌、音楽CD、音楽テープ、レコードの6品目 ( 2007年現在 ) 
        ――― 同じ著作物でも、映像ソフト(ビデオ、DVD)、コンピュータソフト、ゲームソフトは含まれない。
     値引きが自由になれば、新聞の配達制度が維持できなくなる、小規模の書店がつぶれる、地域の文化
    水準が低下する、などの理由から認められている。 それ以外は、独占禁止法によって、再販売価格維
    持行為は禁じられている。