ライブドア 対 フジテレビ
                                        TERUO MATSUBARA

↑ ライブドアの堀江貴文社長

 

【ニッポン放送とフジテレビの関係 ――― フジサンケイグループ】

 会社は、新しい仕事を始めるために、別の会社をつくることがある。 その会社をつくるために株を発行してお金
を集める時、もとの会社がたくさんのお金を出して新しい会社の株を多く持つようになると、この会社は親会社
なり、新しくつくられる会社が子会社になる。 
 今回問題になっているニッポン放送は、フジテレビの親会社である。 昔はテレビ局がなかったが、テレビの時
代である現代、フジテレビは親会社のニッポン放送より大きな会社になってしまった。 フジテレビは、産経新聞
社・扶桑社( 出版社 )・ポニーキャニオン( レコード会社 )・ヤクルトスワローズ( プロ野球チーム )などの株をたく
さん持っており、このグループをフジサンケイグループという。 このグループ全体の親会社がニッポン放送であ
る。

 

 しかし、フジテレビの人は 「 もし誰かがニッポン放送の株を買い集めて、ニッポン放送の大株主になったら、フ
ジテレビを含めてフジサンケイグループが支配されてしまうのでは・・・ 」 と考えた。 そこで、小さなニッポン放送
ではなく、大きなフジテレビを親会社にしようと考えたのだ。 フジテレビの方が発行株数・値段などが多いので、
そうすれば簡単に買い占められないからだ。
 そこで、フジテレビは 「 ニッポン放送株を売って下さい、フジテレビが買います 」 という 「TOB」(Take Over Bid  
=公開買い付け )を行った。 ところが、この最中に、ライブドアがニッポン放送の株を買い集め、最大の株主に
なってしまったのだ。 フジテレビが心配していたことが現実に起きてしまった。

 

【株を買う方法】

  ライブドアとフジテレビは、どちらもニッポン放送を子会社にしようと、ニッポン放送の株を集めた。
 しかし、両社の株の集め方はちがう。 フジテレビは、「TOB」(Take Over Bid  =公開買い付け )という方法で
株を集めた。 これに対してライブドアは、株式市場で大量に株を買い集めた。

 

 株の買い方

 1) 証券取引所で買う
      通常、一般人は時間内取引で株を購入する。 しかし、匿名の大口株主が買い手となる時間外取引
     もある。  
      時間外取引では、特定の投資家同士が大量の株式売買を効率よくできるようになっている。 相対
     取引に近い形で、少数の株主から効率的に株式を集められる。 ライブドアはこの方法を利用した。 
     市場内取引なので、2)で説明するTOBの義務はない。  
    
 2) 市場外取引    買い手=公表  価格決定⇒買い手が提示    
      証券取引所を通して株式を買い増すのは、集めるのに時間がかかったり、その間に価格が上がる
     可能性がある。 そこで、市場を通さずに、投資家が相対で売買することをいう。 他の投資家が知らな
    いうちに、少数の投資家による大量の株式売買が進むことは不透明で不公平なので、証券取引法には
    市場外取引には規制がある。 
     その規制とは、3分の1超の株式保有をめざして市場外で株を取得する場合に、買い取り株数や価
    格、期間などの条件を公表する株式公開買付( TOB )を義務づけていることだ。
     TOBは、買い手側が@買いたい株数、A価格、B買取期間などを公表し、申し込んだ株主から証券
    取引所を通さずに一度に株式を買い集める方法である。 申し込みが少なく、下限の目標に達しなけれ
    ば、買い付けはすべて取り消され、TOBはなかったことになる。

 

 株の基本から

  株は、会社がお金が必要な時に発行するもの。 お金をだしてもらった証明に株券を渡す。
  株を持っている人が株主で、株主の特権には次のものがある( = 人はなぜ株を買うのか? ) 。
   1) 株は売買できるので、安いときに買って、高くなった時に売れば差額が利益となる。
       この売買益を、キャピタルゲインという。 
   2) 株主の優待配当金を受け取ることができる。
   3) 株主総会に出席して経営に参加することができる。
       発行済み株式の1/2超を取得 ⇒ 株主総会で普通決議( 取締役選任など )を単独で可決できる。
       発行済み株式の2/3超を取得 ⇒ 株主総会で特別決議( 合併のことなど )を単独で可決できる。
        ※ 逆に言えば、1/3超を取得 ⇒ 株主総会で特別決議( 合併のことなど )を単独で否決でき、
         経営に対する大きな影響力を持てる。   
               ( 以上、すべて議決権ベースの割合で・・・議決権ベースについては後に説明あり )
       株主総会では会社の重要なことが決められるので、その会社の株を多く所有すれば、株主総会で
      の発言力が強まり、その会社を動かすことができる。

 

【ライブドアの狙い】

 ライブドアの狙いは、フジテレビへの経営権といわれている。 フジテレ
ビとその子会社の持っているビデオ映像や音楽の権利を手にできれば、
それをインターネットで配信するなど事業を広げられるというのだ。
 ニッポン放送はフジテレビの株の22.5%を所有している大株主であ
る。 だから、ニッポン放送の経営権を握れば、間接的にフジテレビの
経営に口出しできることになる。
 なぜ、直接フジテレビの株式を集めないのかというと、フジテレビの株を
集めるのには膨大なお金がかかる。 ニッポン放送は比較的小さな会社
だから株を買い占めやすいのだ。
                        ライブドアの堀江貴文社長 右写真 ⇒

 

 ニッポン放送やフジテレビは、「一緒にフジサンケイグループとして協力しあっているほうが会社のためになる。 」 
と、ライブドアの動きに反発している。
 2005年6月のニッポン放送の株主総会で、ニッポン放送の現取締役は全員任期が切れるからだ。 任期が切
れた場合、新しい取締役を選ぶのは、半分以上の賛成があればいい。 つまり、ライブドアは半分以上の株を集
められれば、ライブドアが選んだ人が、ニッポン放送の取締役になることができるのだ。


 

 

   ニッポン放送株争奪戦の経緯  

 

  2005年2月21日 ――― ライブドアのニッポン放送持ち株比率が40%を超える。
       2月23日 ――― ニッポン放送がフジテレビに発行済株式の1.44倍にあたる4720万株の新株予
                 約権を発行する対応策を発表する。
 フジテレビはニッポン放送の株を36.47%( 2005年2月末現在 )所有しているが、ニッポン放送の新しい株を
発行して、それをフジテレビに買ってもらうことにより、フジテレビの保有率を74%にまで上げようというのだ。 
ニッポン放送がフジサンケイグループに残るための奇策でもある。
       3月7日 ――― ニッポン放送のTOBが成立、フジテレビの持ち株比率は36.47%となる。
 新株予約権の発行に対して、ライブドアは裁判所に訴えた。 
       3月11日 ――― 東京地裁は、新株予約権の発行を差し止める仮処分を決定する。
 裁判所は 『 この計画は、ニッポン放送がライブドアの支配力を弱め、フジサンケイグループに残りたいための
ものであり、不公正である 』 として、新株予約権の発行を差し止める決定を出した。 新しい株を発行するのは、
新しく仕事を始めるのにお金が必要な時であって、自分たちのきらいな人が株主になるのを防ぐことを目的にす
るのは不公正な方法だ ――― というのが裁判所の判断だった。
 会社の最終的な方向を決めるのは株主である。 経営者は会社の運営を任されたにすぎず、個々の株主の自
由な判断を妨げることは認められない。 新株引受権の場合も、株数が増えれば一株当たりの価値は下がり、
それまでの株主の発言権は一気に小さくなるからだ。
       3月23日 ――― 東京高裁は、新株予約権の発行を差し止めをめぐってニッポン放送の訴えを棄却
                 する。 
 ニッポン放送は最高裁への不服申し立てはしないとしており、新株予約券の発行は中止となった。

 

 ライブドアの持つニッポン放送株は、3月15日までに発行済株
式数の46.24%に達した。
  「 外国企業や外国人株主が議決権ベースで株を20%以上持
てない 」 というメディアへの外資規制がある。 名義書換を拒否さ
れた外国人投資家の保有株は“失念株”となり、議決権がなくな
る。 その比率は、ニッポン放送の場合、約7%である。 ライブド
アが取得した株式には失念株があり、それを差し引いた議決権ベ
ースで計算すると、ライブドアはニッポン放送の株の50%超を取
得したことになる。   
   3月25日 ――― ライブドア保有のニッポン放送株の議決権ベース比率が、過半数の50.21%に達する。
                                       ( 発行済株式数で計算すると、46.64% )

 

【ソフトバンク・インベストメントの登場】

   2005年3月24日 ――― ニッポン放送が保有するフジテレビ株( 発行済み株式の13.88% )をすべて
                  SBI( ソフトバンク・インベストメント )に約5年間貸株することで合意する。 
 これにより、ニッポン放送のフジテレビに対する議決権は、SBIに移る。 ライブドアがニッポン放送の経営権を
握っても、SBIが返却に応じなければ戻ってこない。 ニッポン放送が所有するフジテレビ株の22.5%のうち
約9%は、大和證券SMBCに2年間貸株しているので、ニッポン放送のフジテレビへの議決権はなくなる。
 ニッポン放送を足がかりに、グループとの提携を狙ったライブドアにとって、城は攻め落とせても、肝心のフジテ
レビ株という姫君に逃げられた格好になった。

 

   SBI( ソフトバンク・インベストメント )は、ソフトバンクグループの会社で、金融事業の中核会社で1999年
  に設立された。 ベンチャー向け投資を手がける他、証券会社や商品先物会社を抱える。 北尾吉孝氏が
  最高経営責任者( CEO )をつとめる。

 

【和解】

   2005年4月18日 ――― フジテレビとライブドアは和解する。
 ( 和解内容 ) 
  @ ライブドア保有のニッポン放送株50%超すべてを1株=6300円
   でフジサンケイグループに譲渡する。 フジテレビは、すでに保有し
   ている36.47%と合わせてニッポン放送を完全子会社化し、ニッ
   ポン放送は上場廃止となる。 
     ※ フジテレビは、TOB価格( 1株あたり5950円 )での買い戻
      しを主張していたが、最終的にライブドアの取得価格・6280
      円以上に引き上げることに同意した。
  A フジテレビは、ライブドアの株12.75%を保有する。
  B 放送とインターネットの相乗効果を模索するため( = 融合をめざして )、フジテレビ、ライブドア、ニッポン
   放送による業務提携推進委員会を設置する。
 新興企業が、歴史も実力もある大会社の支配をめざした買収劇は、ひとまず幕をとじた。