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vol.1

共立のあの先生が解説!

キャリコ通信

雑誌などで紹介されている「流行色」って どうやって決められているの?

2016.11.14

毎年、季節の変わり目になると街中には流行色に彩られた洋服がたくさん売られ、流行に敏感な若者や大人たちがこぞってその色を身に纏います。みんなが何気なく取り入れている、この流行色。いったい、どのように決められているか知っていますか? 
 
現代ファッションや社会学に詳しい共立女子短期大学生活科学科の渡辺明日香教授に、そもそも流行色とはいつどのように誕生し、どうやって選定されているのか、詳しいお話を伺いました。
 
「流行色が誕生したのは、合成染料が発見された19世紀なかば。それまでは、天然染料で染められていたため、希少価値の高い染料の色は身分の高い人しか身につけられませんでした。金に匹敵する価値があるといわれた紅色(紅花染料)や、皇帝をはじめとする特権階級だけが着用できた紫色(アクキ貝の分泌液)などがその例です」(渡辺先生)
 
逆に、染料が手に入りやすかった藍色などは、庶民の色として多くの人に親しまれてたのだそう。庶民は、こうした身近な色に工夫を加え、濃淡などでお洒落を楽しんでいたのです。
 
「しかし合成染料が発明されてすべての色が等価になると、みなが自由に色を享受できるようになります。加えて安価に大量生産できる既製服が主流になったことで、消費者が迷わず選ぶための指針となり、購買意欲にもつながる“トレンドづくり”が必要と考えられるようになったのです。また、ブランド側も色の目安があることで、自社の強みやブランドイメージをより打ち出しやすくなるというメリットもあったようです」(渡辺先生)
 
こうして1963年に誕生したのが、パリに本部を構える国際流行色委員会、通称インターカラーです。設立から現在まで、国際間で流行色を選定する世界で唯一の委員会であり、2016年は日本を含めた16カ国が加盟しています。
 
ちなみに日本流行色協会が誕生したのは、これより早い1953年。第二次世界大戦でアメリカに敗戦し、工業立国になるべくものづくりに邁進していた日本は、流行色におけるパイオニア的存在だったのだとか。
 
「インターカラーでは、まず実シーズンの2年前に加盟国がそれぞれの提案色を持ち寄ってプレゼンテーションを行います。経済状況や人々のライフスタイル、話題になった映画、人々の心に影を落とした事件や自然災害など、自国のバックグラウンドを集め、2年後への推測も含めて色という形に表現し、提案します。そして加盟国の提案した色の中から、さまざま要素を検討して流行色を選定します。この時点での流行色は、多い年で30色以上になることもあります。ここからさらにプロモスティル、PANTONEやトレンド・ユニオンなど、各国のトレンド情報機関が素材やシルエットなどを含めた総合的なトレンドを予測して流行色を絞り込み、有料のブックで発表します。1年前には、この色の中からブランドデザイナーやアパレル企業がコレクションや展示会のアイテムに取り込んで、ようやく街中の既製服へと落とし込まれていくのです」(渡辺先生)
 
しかし、近年は流行のスピードが加速し、瞬時に流行色が生まれることもあるといいます。
 
「UNIQLOやZARAに代表されるファストファッションやSNSによる拡散によって、トレンドや流行色も速いスピードで変化するようになりました。服作りも2年かかっていたものが、数週間で企画・製造・販売する方式に変わっています。流行色やファッションをめぐる環境は、時代とともに移り変わりますが、色が人々の心を豊かにすることは不変です。ぜひ、ファッションや色彩の楽しさを体感してください」(渡辺先生)

▲PANTONEが発表した2017年春夏の流行色
▲インターカラーで決定した2017-2018秋冬の流行色

非常に多くの時間や労力をかけて、熟考された末に決められていた流行色。日々の生活や経済状況に左右される私たちの心理を考慮した色だからこそ、みなが自然と流行色を受け入れ、好んで身に纏うことができるのですね。
 
今年の秋冬からは、流行色の背景を知った上で着こなしを楽しんでみてはいかがでしょうか?

取材にご協力いただいた先生はこの方!

共立女子短期大学 生活科学科

渡辺明日香 教授

専門は現代ファッションで、1994年から20年以上にわたり、原宿や渋谷などで若者のファッションの定点観測を実施。アイテムや着こなし、ヘアメイクなどの変化の変遷を観察して、社会学と絡めた時代の流れとトレンドの関係についての研究を行っている。最新書著に、定点観測による研究成果をまとめた「東京ファッションクロニクル」(青幻舎)がある。

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